第38話:ガンと脳、心臓ドック検診と友情

 検査は、少し待つが、今年の10月11日から12日と指定されたようだった。最近は、中国やアジア各国、ロシア、南米、アフリカ、東欧の国から泊まり込みで医療ツアーも評判らしく、混んでいる様子がよくわかった。

特に春、夏、冬休みに団体で検査ツアーに来るらしい。


 やがて、梅雨が始まり、明けて2016年7月に入り夏が始まった。今年は特に、日本列島の熱波はひどく、35度を超える猛暑日が大分県日田で38日、久留米で35日、熊本県菊池で29日、大分県犬飼で28日と1ヶ月間、サウナ風呂状態の日々を過ごし、京都、多治見でも27日間の猛暑日。


 その後、10月11日、下村の1泊2日のがん検診が始まった。その前日、下村からの宮入への電話で、検診後、結果が届いたら、会って欲しいと言われた了解した。翌週の10月18日結果が届いと連絡が入り、橋本のいつものカフェに出かけた。


 その結果で、脳と心臓に問題ないが、ガンのマーカの一部が高いと書いてあり、有明の、がん研有明病院を受診した方が良いと書いてあった。どうなのかなと聞くので、乗りかかった船だ、言われたとおりに、やった方が良いと奨めた。


 その後、状況を下村が有明病院に電話すると、10月24,25日、1泊入院で精密検査をすると連絡が入った。今回は、不安だから、着いて来てくれないかと言われ、了解した。10月24日の10時に有明病院に来るように書いてあった。


しかし、ラッシュの最中の時間帯なので、有明病院の近くに泊まることを奨めた。そこで、ヒルトンお台場を予約することにした。前日10月23日、ツインの部屋を予約した。23日10時半に橋本で会い京王線で新宿で埼京線快速に乗り換え国際展示場で降りてタクシーで5分でホテル到着。


 できたばかりのヒルトンお台場に着くと、ちょうど昼、チェックインして、レストランで昼食を食べると、そこから東京湾の景色が一望でき、本当に素晴らしいと感激していた。こんな所へ泉堂さんと2人きりで泊まれたら最高だなと言うと下村が、うなづいた。


 昼食を食べて、部屋に戻り、下村が、俺一人で本でも読んでるから、宮入君は、近くを散策して来いよと言うと、了解と言い、ちょっと行って来ると言い部屋を出た。その後、国際展示場を見て海辺の散歩道を歩いて、そこにあるベンチに座り文庫本を読み始めて17時過ぎ少し寒くなった頃、部屋に戻った。


 部屋に戻ると、下村が、知らないうちに昼寝していたと笑いながら語った。外は、広いだろと聞くので、本当に広く、東京という感じではなかったと話した。未来都市みたいな感じさえすると答えた。何しろ、ここらは、東京湾を埋め立てた広大な土地だからなと話した。


 その後18時半頃、夕食を取りに行き、また、展望レストランに行くと、明かりのともった、幻想的で、未来都市のような湾岸の景色と、東京湾を行く大型タンカーが、見えた。食事を終え、下村が、今年になって、何回も手伝ってくれてありがとうと述べた。


 何だ、急にと言うと、おかげに、清々した気分になったと答えた。人事を尽くして、天命を待つの気分だね。今回の結果がどうであろうと、受け入れる気分になった。覚悟を決めたとつぶやくように伝えるのを聞くと、宮入は、急にいじらしくなり涙がこみ上げていた。


 我慢したが、涙が勝手に流れ、ハンカチでぬぐった。本当の友は、ありがたいものだ。神に感謝だなと言うと、下村も顔をしゃぐしゃにして、涙を流した。そんなになくと、2人で、ここから飛び降り自殺でも、しそうに見られるから、やめてくれよと笑った。


 そうだな、往生際が悪すぎるよなと下村が言った。その後、部屋に帰って、下村は、テレビを小さくして聞いていたが切った。すると、その脇で、宮入の無邪気な寝顔をみて、お前も、老けたが、昔とちっとも変わってないぞと、ここの中で、つぶやくと自然に涙がこみ上げて声を殺して泣いた。

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