第36話:下村の検診へ付き添い2

 人生ってシナリオのないドラマのようなものね。でも、それぞれの人生で、苦しみ、傷つき、たくましくなっていったのよねと静かに語った。ところで下村君はと聞くと、彼は、良い所の息子で、親の期待を背負って、一生懸命勉強していた。


 もちろん、信州の田舎では、身分という鎧があってね、下村君と結婚できるなんて誰も思っていなかったわよ言うと告げた。そう言うものなのか、全く、わからなかったと言うと、宮入君は、都会の子だから、こんな気持ちわからないはずよと、吐き捨てるように言った。


 そんなところが、クラスの女子に人気あったのよと、薄笑いを浮かべ話した。もしかしたら、白馬の王子様に変身して、素敵なお城に連れて行ってくれるかもしれないと言う、はかない、希望を胸に秘めていたのかもしれないわと、つぶやいた。

 そんな事を話して、新宿御苑を散歩していると、昼近くなり、混む前に、昼食を食べようと、せっかくだから、昼食おごるよと言い、御苑を出て、小田急新宿店の屋上のレストラン街に行き、何、食べたいと聞くと、久しぶりに寿司でも食べたいというので寿司店に入った。


 ランチセットを2つ頼んで、景色の良い席に座り、新宿って以外に広いのねと言い、向こうの、高層ビルが都庁かしらと聞くと、多分、そうじゃないかと、宮入が返事した。その話を聞いていた、店員さんが、その通りですと、教えてくれた。


 ゆっくり昼食を終え13時近くなると、行列の店が多くなっていた。その後、泉堂さんが、買い物つき合って下さるときので、もちろんと答えると6階の婦人服売り場に行き、洋服を見始めると、宮入が、気を遣わせたら悪いから10階の本屋で待ってると言って去って行った。


 その後、1時間位して、泉堂さんが、買い物袋をもって本屋にやってきた。買い物は、すんだわよと言うので、どうすると聞くと、お茶して、下村さんからの電話を待ちましょうかと言うと、了解と言い、12階のカフェに、向かい、奥のすいてる場所へ行った。


 ここから新宿の景色が一望できて素晴らしいねと言った。最近まで、新宿の地下街に、段ボールで作った浮浪者の小屋が、たくさんあり、通りを歩くと異様な臭いがしたものだと宮入が言うと、信じられないと泉堂が、目を見開いて言った。


 その顔をじっくりと見た宮入は、やっぱり、泉堂さんて、間違いなく美人だと、妙に再確認した。すると、中学時代、仲良くなっていれば良かったな、などと、一瞬、夢想にふけり、ぼやーっとした一瞬、どうしたのと泉堂さんの声に、現実に戻った。


 その後、そのまま、思ったことを口に出し、泉堂さんて、間近で、じっくり見る機会がなかったけれど、よく見ると、すごい美人だねと、平然というと、顔を赤らめ、急に、何、言い出すのよと、大きな声になった。でも、うれしい、本当に、うれしいわと色っぽく笑った。


 16時頃に、宮入に電話が入り、検診を終えたというので、小田急デパートの入り口でタクシーを拾い、検診センターへ向かい、数分で到着すると着替え終わった下村さんが、早かったなと驚いた。それを聞き、宮入が、小田急デパートのカフェから双眼鏡で見張っていたと言うと大笑いした。


 宮入が、このまますぐ帰るかと、下村に聞くと、新宿より家から近い橋本のカフェで、少し話して変えるよと言うので、カフェでつき合うというと、本当に、申し訳ないと言った。何、水くさいこと言ってるんだ。幼なじみだろと答え得ると、下村が目頭を熱くしていた。


 京王線特急で、17時に橋本のカフェに入ると、席について、下村が、封筒を1つずつ、宮入と泉堂に渡した。何これと、泉堂が聞くと、今日のお礼だよと言った。宮入が、そんなに気を遣うなよと言った。今後も、多分、世話になる気がするんだよと告げた。

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