第10話:辰野で旧友と再会とホタル祭り

 宮入の兄弟達に会ったのは6年前の母の葬式の時。その頃、宮入晋平は、既に退職していた。自分の兄弟たちは、お線香を上げ関係者に挨拶し日帰りで、その日のうちに大都会へ帰った。その時の情景が脳裏に浮かび、中学時代を過ごした辰野に帰って、これからの人生の過ごし方、身の振り方を考えようと考えた。


 2013年6月20日の朝、八王子、7時半初の特急あずさ1号にのって、9時過ぎに上諏訪に着き、10分待ちで飯田線に乗り換え辰野に10時に到着した。辰野降りると、東京に比べ、空気が冷たい感じがし、草のにおいがした。それがなんとも懐かしい。


 辰野駅で降りて、徒歩10分で、両親の眠るお寺に着いて、お線香を上げて、挨拶してきた。懐かしさのあまり、思わず天竜川河畔を散策した。すると、おなかがすいてきて、食堂に入った。その晩、昔の旧友の実家の料理屋に顔を出すと旧友の佐藤友重が、忙しそーに動き回り、店員に指示していた。


「佐藤が、宮入を見て驚いたように、急にどうしたと聞いた」

「それに対し、久しぶりに、故郷が恋しくなったと伝えた」

「いつまでいるんどと聞くので、数日間、ゆっくりしたいと答えた」

「一度、地元に残ってる連中と一杯やらないかと聞ので俺は大歓迎と話した」


「ホテルは、と聞かれ、辰野パークホテルに泊まっていると伝えた」

「今週末から1週間、辰野ホタル祭りで、少し賑わうかもしれないと話した」

「実は、うちの店でも観光客に期待しているのだと、本音を打ち明けた」

「しかし、本当に久しぶりだなと言った」

「同期の連中にも連絡して良いかと聞くので、かまわないよと告げた」


 近くで店をやっているのが4人いるぞといい、その店を教えてくれた。その晩、ホテルに帰ると以前中学時代、級長をしていた下村敏広が19時過ぎに訪ねてきた。下村が、最初に現れ、食事を終えてロビーでテレビを見ている所へ来て、久しぶりと挨拶した。


 下村が、自分は、数年前、地元に戻り七十銀行の支店長をしてると自己紹介した。下村が、俺も大手都市銀行を早期退職し、最近、2つ下の女房に先立たれ、傷心旅行だと話した。10分後、副級長をしていた佐島聡子が、久しぶり、本当に懐かしいわねと言った。


 東京へ行って一流の都市銀行に入って結婚したと言う所までは聞いていたが、あなたが、忙しいのか、ほとんど、辰野へ帰ってこないので心配していたと語った。今回は、どうしたのと聞かれ、下村が、宮入に気を遣って奥さんが亡くなって傷心旅行だと伝えてくれた。


「寂しくなるね、男の人って奥さん亡くすと、急にふけると言うから」

「まー、お茶でも飲んで言けと言い宮入がフロントで珈琲と紅茶を注文」

「佐島が、下村は、出世し長野の大銀行の支店長になったのよと持ち上げた」

「それを聞いて、そんなに持ち上げても何も出ないよと笑いながら言った」

「中学時代のクラスメート40人のうち8人も亡くなったと告げた」

「今、地元に残っているのは12人位かなと語った」

「宮入が、下村は、クラストップの成績で優秀だったからなと話した」


「すると佐島が、下村君と宮入君は、ライバルだったじゃないと昔話を始めた」

「成績でトップを争ったものねと笑みを浮かべて話した」

「そー懐かしいなー、そんなこともあったねと、宮入が宙を見ながら、しみじみと言った」


「でも、宮入君が東京へ出て行くと下村君は、信州大学に入学し、卒業した」

「その後、信州の名門銀行に就職し県内の支店を転勤し同じ銀行の女性と結婚」

「恥ずかしいから、もー、その話はやめてくれと告げた」

「下村が、宮入に、東京は、物価が高いから、年金だけでは、厳しいのではないかと聞くと、そーなんだよと答えた」


「宮入が、小さな2LDKの八王子の賃貸マンション長く住んでいたが、株で儲け、最近、中古のマンションを現金で購入したと語った」

「下村が、しかし、以前、長いローンを組んでマンションを購入し、経済的にも困っている中高年が多いと聞くと語った」

「宮入が、急速な高齢化で、当番制で高齢者世帯を巡回してると打ち明けた」

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