第7話パリバショックからリーマンショックへ


 2007年5月にスイスの大銀行UBSが、ディロン・リード・キャピタルマネジメントを閉鎖。8月はドイツのNRWバンクによる支払い停止。その他、フランスのBNPパリバによる3つのファンド凍結が相次いだ。BNPパリバが、アメリカ証券市場の一部で流動性が消滅した。


 そのため一部の資産評価が不可能になったという声明を出すと危機の認識が広まり年10月にはイギリスで住宅価格が急落。資産担保証券も価格を下げて国際流動性を失い、これを担保とする資産担保コマーシャルペーパーの借換発行も出来難くなった。


 預金債務が膨張し、銀行とFRB「米連邦準備制度理事会」は事後的な信用創造にはげみ生まれた預金通貨は機関投資家によりMMFやレポ債権に転換された。ヨーロッパ系銀行は危機発生に先立つ数年間、100以上のSPV[特別目的会社」のため直接、または間接のスポンサーになっていた。


 これらの資産担保CPは数千億ドル規模のABS「資産担保証券」をアメリカ市場で販売。その流動性が2007年8月に失われると償還するためにヨーロッパ系銀行は、在米支店からドル資金を調達。そのためアメリカを中心として会計基準に、時価評価主義が採用され、サブプライム危機が短期間で拡大する一因となった。


 時価評価では、金融資産の減価は自己資本減少と機関投資家が発行する株式の減価に直結するので、その株式を保有する企業が発行する株式も減価となる。こうして負の連鎖が拡大した。2008年3月にベアー・スターンズの経営危機が明らかになると、金融危機が世界的に報道され始めた。


 9月に入って、GSE[政府支援機関」のフレディマックとファニーメイが実質的破綻に陥り、9月15日にはリーマン・ブラザーズが破産を申請。負債総額6390億ドル「約64兆円」というアメリカ史上最高額の経営破綻を起こした。


 さらにバンク・オブ・アメリカによるメリルリンチの買収、保険会社AIG[アメリカン・インターナショナル・グループ」の国有化など、金融機関の再編が進んだ。リーマン・ショックの決済銀行であるJPモルガン、シティG、バンク・オブ・アメリカは、レポ債権の追加担保を要求した。


 しかし、貸付が打ち切られ倒産。リーマン・ショックはリーマン債を保有していたMMFを元本割れさせた。9月19日、MMF保険創設のため連邦政府が為替安定基金から最大で500億ドルを取り崩す方針が公表された。


 リーマン以外の清算ケースでもCDS「クレジット・デフォルト・スワップ『企業の債務不履行にともなうリスクを対象にした金融派生商品』」は同様の状態であり、CDSの売り手となっていた金融持株会社、投資銀行、保険会社、ヘッジファンドなどは、短期金融市場からの資金調達を金利の急騰に阻まれた。


 ヨーロッパ系銀行もドル建て流動性資金について同じ境遇であり、新興国経済から資金を引き揚げた。この資金引き揚げによって、中欧・東欧・南欧にも金融危機が波及。2008年第2四半期から2009年、第1四半期には、世界の資本移動の90%が消滅。


 富裕国の資本移動は17兆ドルから1.5兆ドルへと減少。2009年第2四半期は、IMF「国際通貨基金」にGDP「国民総生産」統計を提出している60カ国のうち52カ国でGDPが縮小。サプライチェーンが同期しているためにアメリカやヨーロッパの需要減少は各国に波及。


 世界貿易機関「WTO」が統計を取る104カ国の全てで輸出入が減少。世界の原油価格は76%下がり、産油国で財政赤字が続出。金融の勉強をしセゾン投信に勤めていた宮入智和が、宮入晋平に電話し世界経済で天変地異が世界中で起こり米国MMFが元本割れしたと電話して来た。

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