第4話:智和と悦子の誕生とプラザ合意

 1976年は、智和の祖母の静恵さんが、毎日、宮入智和の世話で、アパートに来てくれた。奥さんも都立大学での事務の仕事が終わると、すぐに家に帰って来た。また、父の晋平も子供が生まれたばかりという事で早めに帰って来て、食事の支度、智和を風呂に入れたりした。


 そうして暖かくなり、4月には、乳母車に載せて、満開の桜を見に祖母も含め4人で出かけた。その後、梅雨が来て、あけると夏になり、家の近くの北側の空き地で、たらいに、ぬるま湯をいれて、智和を遊ばせると、大喜びして、はしゃいでいた。


 少しして冷たい水を入れると気持ちよさそうにしている表情が可愛くと、何枚もの写真を撮った。行水が終わると、祖母と母が、タオルを用意して智和の体をふいてやった。疲れると、眠りについた。その顔も可愛いので眺めたり写真を撮ったりした。


 本格的に寒くなると智和の部屋を暖かくして風邪をひかない様に注意した。そして徐々に暖かくなり1977年も3月となり乳母車にのせて散歩するようになった。犬の散歩を見ると喜んで、はしゃいでいた。その後4月から沙織さんは、仕事に復帰し都立大学へ出勤する様になった。


 この頃になると、智和は、ハイハイから立ち上がる素振りを見せ始めた。やがて5月になると立ち上がり物につかまりながら歩き始めた。こうなると、大人が見ていないと怖いので、気を付けるようになった。やがて夏になり行水をすると喜んで水をひっかけることを覚えて、上機嫌だった。


 そして疲れると良く昼寝をしてくれた。秋になると上手に水を飲むようになったが、甘えん坊で、母のおっぱいを嬉しそうに飲んでいた。宮入圭子は、1977年9月、イトーヨーカ堂を受験して内定をもらった。そして1978年を迎えた。


 宮入晋平の妹の圭子は、イトーヨーカ堂本社に勤務することとなった。3月11日、沙織さんが、再び体調を崩して産婦人科に行くと妊娠がわかり出産予定日が9月20日と告げられた。9月20日、以前の産婦人科病院に入院して、女の赤ちゃんを産んで、宮入悦子と名付けた。


 この年の4月、東京都豊島区東池袋に60階建の超高層ビル「サンシャイン60」が開館し、多くの入場客で混雑し、池袋の名所となった。そして1980年となり日本は対米輸出の急増により世界最大の貿易黒字国となった。経営の合理化や産業構造の転換を終えた日本は国際競争力を強めた。


 そして欧米諸国に集中豪雨的と呼ばれる激しい輸出をして貿易摩擦が深刻化した。銀行では、預金獲得競争が激しくなり若い宮入もノルマを課せらた。そのため自分の肉親、親類や友人などに頭を下げ預金を獲得。1981年にアメリカのレーガン大統領は、アメリカの経済力と軍事力の強化を図ろうとした。


 以前と変わり 「小さな政府」 を主張したレーガンは、政府支出の抑制、大幅な減税、規制緩和などのレーガノミックスと呼ばれる政策を実行。ところが、軍事支出の激増によって財政赤字は拡大。アメリカは高金利政策をとったのでドル高になりアメリカの輸出競争力を弱めた。


 1980年代のアメリカは財政赤字と経常収支の赤字が同時に進行する 「双子の赤字」 に悩まされ保護主義が台頭。保護主義傾向に危機を感じた先進諸国は、会議を開いた。1985年、ニューヨークのセントラルパークの近所のプラザホテルでG5が開かれた。


 その内容は、ドル高を是正のため日本・アメリカ・ドイツの通貨当局がドル売りの協調介入し円高ドル安にした。アメリカの強硬な意見で合意、いわゆるプラザ合意である。プラザ合意に出席したのは竹下登・蔵相。竹下は記者たちに渡米がばれないように成田にゴルフをしに行くといって出かけた。 


 ゴルフプレー中に記者があきらめて帰ったので、急いで成田空港へ行った。プラザ合意は、秘密裏に行われた。急激な円高ドル安が進行。1ドル240円台だった為替レートは、1年後には 1ドル120円台まで円高となった。円高を利用した海外直接投資が増大した。


 その結果、資本収支は大幅な赤字となった。急激な円高は日本企業を直撃し円高によって日本製品の国際競争力は低下し輸出主導型で成長してきた日本経済は1986年円高不況に陥った。

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