第14話ハードモード
「
貢物を探して森を歩いていた僕は小さなため息を吐いた。
敵の偵察部隊を見つけてから三日ほど経っている。そうそう長い時間を取ることはできない。
それに、敵の首ったってそもそも僕が勝たなければ問題外な訳で。
地道に果実を取るしかないか。見つけた背中に背負ったウサギ製のバックにポイポイ放り込んでいく。
どうでもいいけど、これもしかしてエコバッグの一種なんじゃないか。••••••違うか。
「あ」
邪神が僕に味方したのかそいつに不幸な神が憑いているのか、ふと目に止まったワームに駆け寄り剣を振り下ろす。
確実に一部を削った斬撃を受けながらもワームはまだ生きていた。
その黒い体を懸命に動かして少しでも距離を取ろうとしている。が、その背に……背なのか分からないけど、とどめの一撃を下ろした。
にしても、変な方向に這って行こうとしたな。……ん?
このヌメヌネした跡もこっちから来ているな。
着けてみるか。
出来るだけ音を立てないように細心の注意を払ってヌメヌネした跡を辿る。
ビンゴだな。明らかにワームの姿が増えている。あっちを見てもこっちを見てもてな感じだ。
木陰の間を縫うように移動していると少し
開けた場所にポツンと岩山があることに気がついた。
あれが敵の巣だろう。
そして、その辺りには犠牲者だろう大量のゴブリンの所持品、剣に鎧にそして、
「装飾品か」
どうやら見つけてしまったようだ。
ワームがガラクタとして捨てたのか、無造作に散らばっているそれらは献上品として合格ラインに達しているだろう。
今隠れている木陰から一番近い装飾品まで10メートルと少し。
だが、僕より近い場所にワームが居る。
行くしかないコボルトはたまたま勝てたが次は怪しいだろう。ワームは鈍足だ。足ないけど。とにかく、コバルトとセメントするよりワームと競走した方が勝算はある。
じっとりと汗をかいた手を握りしめる。
さあ、覚悟を決めるときだぜチキン野郎。
呼吸を整えて、走り出した。
一歩、二歩、気づかれた!
一匹のワームが蛇のように顔を向け、飛びかかーらずに発泡スチロールを擦り合わせたような耳を覆いたくなる奇声を発した。
「キキキィィーーー!」
どうやら、[仲間を呼ぶ]を使われたらしい。そんなのありかよっ。
「あぁぁぁぁ」
負けじと声を出し、耳飾りを引っ掴み駆け出す。
全方位から飛びかかってくるワームたちを躱しながら剣を抜いた。
「くそっ、邪魔だなこれ」
邪魔になった耳飾りを口に咥え、前方のワームを切る。
倒したかなんて確認するよりも先に穴が空いた包囲網をくぐり抜けた。
「多すぎだろうがっ!」
ワームを真っ二つにしながら僕は魂の声を叫ぶ。
ヌチョリとしたイヤーな液を気にする暇もなく次が襲いかかって来た。
足を狙う噛みつきを蹴って防ぐ。
この靴を履いていたゴブリン以外に靴を履いている者を見たことがないけど、やっぱり靴は便利だ。
「何匹、居るんだ、よっ」
言葉の間に剣を振り下ろしては居るもののかなり素早いワームたちはほとんどの場合一撃では死なない。
ヌチョリという音を聞いて上を見上げれば、ワームが異様なホームで落ちて来ている。
「ふざけん、な!」
地面をゴロゴロと転がって躱し、立ち上がって再び駆け出す。
イヤーな体液がベッタベダに付いた剣にもはや斬る機能を期待することは出来ない。
木の根を飛び越え、茂みに突っ込み、茂みの中にいた蛇にワームの群れを擦りつけようとしたが、
「くそっどんだけ僕のこと好きなんだよ」
息が切れるのも構わずに悪態を吐く。
一匹か二匹は蛇に向いただろうが、焼石に水だ。
あーもう鬱陶しい。
木の上から襲いくるワームが落下するより早く前を通り過ぎる。
まずい、まずい、まずい、まずい。
息が切れて来た。三分ほど文字通り死力を尽くして全速力で走っているが振り切れる気配は一切ない。
むしろ、後ろを振り返って後悔した。どう見ても、追手が増えている。
ん?少し先にの生き物が見えた。
邪神が僕に味方したのかそいつらに死神が憑いていたのか、見つけた
ポカンと僕を見ているゴブリンたちにグッとサムズアップした。
「ガキグキャ(後は頼んだ)」
ポカンとしていたゴブリンの顔が僕の後ろにいるモノたちを見て驚愕と恐怖に歪む。
ゴブリンたちが走り出す前に僕が追い抜いた。
後ろの戦闘音を耳にしながらも僕は走るスピードを緩めなかった。まだ完全に巻けていない。
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