第45話「ピー子とパー子」・膀胱炎。
こうやって股関をなでるんだ。
座っていると股関はうっ血しやすいからな、丁寧にやさしくなでるんだ。
膀胱炎や頻尿に効くぞ。
「祖父、仁蔵は、そう言ってました」
❃
「なにこれ、整体だって、マジウケる!」
パー子が
「ピー子、整体受けたことある?」
「無いよ。裸になってオイルとか塗るやつ?」
「それは、エステじゃない?」
パー子は19歳。居酒屋でバイトをしている。
ピー子もパー子と同じ居酒屋でバイトをしている。二人は居酒屋で知り合い、歳も同じだったのですぐに仲良くなった。
パー子は髪がパーマをかけてライオンのようになっているので居酒屋の店長にパー子と呼ばれて、店の中では皆んなにパー子と呼ばれていた。親は両親共に教師らしいが、本人は勉強が嫌いだったようだ。
明るい子でよく喋る。
喋り過ぎて、しょっちゅう店長に怒られている。
ピー子は、店長に怒られるとピーピー泣くので店長にピー子と言われ、店の皆んなもピー子と呼んでいる。
ピー子とパー子の働く居酒屋はチェーン店で繁盛していた。
週末になると一晩の売り上げが百万円を越えることも珍しいことではなく、百万円を越えると従業員は“大入り袋”をもらえる。
ピー子もパー子も昨夜、大入り袋(千円)をもらって持っている。
『初回限定、体験版、施術。20分1,000円!』
「ピー子、千円だって! これで施術受けれるよ!」
パー子が大入り袋を持って、冬子の店のポスターを見ている。
「あたし、やってみようかな? 初整体。ピー子もやろうよ!」
「う〜ん、そうだね……やってみようか……」
ピー子は乗り気ではないようだがパー子に押されて冬子の店の中に入っていく。
「いらっしゃいませ」
冬子が出迎える。
「初整体! 二人! これで!」
パー子が冬子に大入り袋を渡す。
ピー子も大入り袋を出した。
「大入り袋?」
お年玉のポチ袋に大入りと書かれた袋を渡され、冬子が中を見ると千円入っていた。
「あたしら居酒屋で働いていてね、昨日の売り上げが百万円を越えたから皆んなに大入り袋をくれたんだ。店長気前がいいでしょ!」
パー子が得意気に話す。
「一晩で百万円ですか、凄いですね」
冬子はうらやましそうに言う。冬子の店では一ヶ月働いても、到底百万円には届かない。
パー子が先に施術を受けて終わり、次にピー子が施術を受けていると、うつ伏せで背中を揉まれているとシクシクと泣いている。
「ピー子、どうした? 痛いのか?」
パー子があわててピー子にたずねると、ピー子は、オシッコが……と言っている。
「オシッコ? 漏らしたのか?」
パー子がピー子の股関を見るが、別に濡れてはいない。
「どこか気になる所があるんですか?」
冬子がたずねるとピー子は話出した。
「最近、オシッコをすると痛いんです……」
「オシッコをすると痛い」
冬子が考えているとパー子が、
「性病か!? 男とやったのか!?」
「やってないよ……私は処女だよ……」
ピー子は泣きながら言う。
「処女でオシッコをすると痛い……膀胱炎かな?」
「ぼうこう……膀胱炎ってなんです?」
ピー子は膀胱炎を知らなかった。
「膀胱炎は膀胱の炎症で膀胱に菌が入ったり、オシッコを我慢し過ぎたらなる病気です。うちの店は整体なので診断はできませんけどね」
「私、オシッコ、凄く我慢してるんです。店が忙しいから、水も飲まないようにしてトイレにも行かないようにしてるんです」
「そういえば、ピー子、お店でトイレ行かないね」
「お客様がいるし、忙しいから、なんだかトイレに行けなくて……」
「膀胱炎は、たしか、水をいっぱい飲んで膀胱の中の悪い菌を洗い流すといいはず……病院に行けば良い薬もあると思いますよ」
「本当ですか? 病院に行ったら治るんですか? 手術とかされないですよね……」
ピー子が泣きながら冬子を見る。
「手術とかは、わかりませんが、たぶん、お薬で良くなると思いますよ」
「私、病院に行ったら手術で膀胱取られると思って、怖くて誰にも言えなかったんです。整体受けて、この人ならわかるかなと思って……」
❃
ピー子はパー子に付き添ってもらい病院に行くと膀胱炎だった。
薬をもらい良くなった。
冬子もそけい部をなでる導引を教え。ピー子は素直にやると気持ちよくオシッコが出るようになった。
❃
ピー子とパー子の働く居酒屋の店長は、パンチパーマでヒゲを生やし、黒の薄いサングラスをかけている。
よく、ピー子とパー子を怒っているが、面倒見は良く可愛がっている。
宴会グセがあって店が終わってから、しょっちゅう店の中で従業員と宴会をして朝までやることがあるので、早く帰りたい従業員は困っている。
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