第41話「カキハラ氏 2」・鼻を洗う。

「それでは、目を洗います」

 冬子とうこは流し台の縁にタオルを置き、そこに体を置いて顔を洗面器につけた。


 洗面器の中で目を開けたり閉じたりしながら目玉も右・左・上・下と動かしている。

 苦しくなる前に顔を上げて息継ぎをして、2~3回、洗面器に顔をつけて目を洗った。


「こういう感じで目を洗います。この時、目を洗った後に鼻も洗うといいですよ」


「鼻も洗うんですか……ヨガで“鼻うがい”っていうのをテレビで見ましたけど……」

 カキハラ氏が興味深く冬子のやることを見ている。


「ヨガでもありますね。うちの店では洗面器から手で水をすくい鼻の中に流して口から出すやり方を教えています」

「それでいいんですか、なんかジョウロのような物はいらないんですか?」

「あれはヨガですね。うちは導引ですから……」


 洗面器の水を流し、お湯で殺菌して水を入れ常温の水を作るカキハラ氏。

 ゆっくりと顔を洗面器につける。


「もう少し水を入れた方がいいかな?」

 顔を上げて蛇口をひねり水をそそぐ。

 ふたたび洗面器に顔をつける。

「あぁ~~っ、このくらいの温度が目に気持ちいい」

 まばたきをして目玉も動かす。 

「目についた汚れが取れていくよう、花粉もホコリも黄砂も全部取れて綺麗な目玉になるのね……」


 目を洗い、鼻の中も洗おうとするが、説明を聞いただけではわからない。


「鼻はどうやって洗えばいいのでしょう?」


「あっ、鼻ですか、そうですね……やってみましょうか……」

 あまり、乗り気ではない冬子。


 鼻の中を洗うのは簡単だけど、鼻くそがでちゃうのよね。お父さんが、よく言ってるけど、男性の前でやったら100年の恋もさめるって……


「では、やってみますが、最初は鼻の中の汚れがでるので、ちょっと後を向いてもらえますか?」

 カキハラ氏を後ろ向きにして、冬子は鼻の中を洗った。そこには男性には見せられない物が……

 水道の水でさっと流した。


「はい、ありがとうございます。こっちを向いて良いですよ」

 冬子は鼻の中の洗い方を自分がやりながら教えた。

 以下、鼻の中を洗う方法。


①両手の人差し指で鼻の脇をこする。

②左の人差し指で左の鼻を押さえる。

③右の手の平で水をすくい右の鼻の下に持ってくる。

④頭を前傾にして鼻の先に水を貯め、頭を上げながら鼻の中に水を流し込む。

※この時、鼻で水を吸うのではなく、頭を上手に傾けて鼻の中に流し込みます。

⑤鼻から流した水を口から出します。

 鼻の中に残った水を鼻から勢いよく出します。この時、まだ左の鼻のアナは押さえています。


 ②~⑤を2~3回繰り返します。

 右が終わったら、同じように左をやります。


「鼻が痛い!」

 カキハラ氏は、上手く鼻の中に水を入れられません。

「最初は上手くできない人が多いんです、お風呂に入っている時に練習するとできるようになりますよ。あたしは、お風呂の時に目と鼻を洗っているんです」


「そうですか、これをやれば目の痒みは治りますか?」


「いやいや、これは目の基本的な行なので、花粉症には免疫を強める行も必要です」


「あ〜〜っ、そうですか、やっぱりそう簡単じゃないんですね」

「そうですねタマルさんも何度も来ていただいてますから」


 免疫については、明日やることになり、今日は肩と首の施術をすることになった。

 施術台にうつ伏せになるカキハラ氏。


 この人、肩も首もカチカチ、これは目への血流も悪いだろうな……

 自分で体を動かさないと治らないかな?

 タマルさんも講習会に何度も来て、けっこう導引を使えるようになっているはず……


「あ〜〜っ、そこ効きます。あたし肩も首も凄いこるんです」

「そうですね、うちでは講習会もやってるんですよ。肩や首の講習会もやりますから参加してはいかがですか?」

「私も参加していいんですか?」

「どうぞ、どうぞ!」



 翌日、カキハラ氏はじんぞう堂にやってきて免疫の行(足湯・足のもみ方・お腹のもみ方)を習った。

 その後、講習会にも参加して、花粉症は、だいぶ落ち着いたようである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る