第24話「鉄人ライダー」・自律神経。

「あずきちゃん、ほら、これ、美味しいやつ。食べる?」

「にゃ、にゃにゃにゃにゃ!」

 興奮して美味しいやつを食べるあずきちゃん。


「あずきちゃん、おじいさん居る? ちょっと出してほしいんだけど」


 黒猫のあずきにちゃんには、冬子とうこの祖父、仁蔵じんぞうが幽体となり入っている。


 あずきちゃんの耳から白けむりが出て、おじいさんの姿になった。


「なんかようか?」


「おじいさん、月の姿勢を聞きたいのよ。あれって三の型まであるって『はまこう』のおじさんが前に言ってたんだけど、ニの型までしかわからないのよ」

「なんだ、『はまこう』ったら蕎麦屋か? あそこの蕎麦はうまかったな。ダシのかつお節をちゃんと良いのを使っているからな〜、天気の良い日は店の前にかつお節を出して干すんだが、たまに猫がくわえていってな〜っ」


「かつお節はいいから、月の姿勢の三の型を教えてよ。お父さんが月の姿勢で耳鳴りが良くなるって言ってたのよ」

「三の型は鉄人ライダーの変身ポーズだ!よくやってたろ? お前の学校の先生から鉄人ライダーのカード付きスナックを買ってカードだけ欲しくてスナックを捨てる者が多いのでスナックを捨てないようにと言われて、家の中に鉄人ライダーのスナックだらけになったろ……」


「あたし、鉄人ライダー知らないから、たぶん、やってたのは、お父さんだよ」


「なんだ、冬子か……鉄人ライダーのことを知りたいのか? わしは、あのテレビはあんまり見てないんだがな……」

「おじいさん、今日は調子悪いわね。昼間に出るのは難しいのかな? 鉄人ライダーじゃなくて、月の姿勢を教えて」


「幽体は昼より夜の方が調子いいな。昼間は頭がボケている。月の姿勢は、こうやってこうするのと、これとこれだろ?」


「そうよ、それ。その後の方を教えて!」


「これか? 鉄人〜〜ライダー〜〜変身!ってやるんだ」

「こう?」

「そう、そこで手のひらをひっくり返すんだ」

「なるほどね。これが三の型?」

「そうだ。首も手のひらの方へ向けたりもするんだ」

「こうか、ああ、こうね。これって肩こりと自律神経の体操?」

「そう、肩と首の流れをよくして頭の血流をよくするから、耳鳴りや目にも効くだろう。自律神経やホルモンの調節にもなるな。わしは、ホルモンはあまり食わないんだ。まぁ、幽体では何も食えないが香りはわかるんだぞ、こんどカツオだしのはまこうの蕎麦でも御供えしてくれ。香りのあるものならいいんだが、インドカレーなんかも良いかもしれんな」


「うん、わかった、こんどお供えする。ありがとう」

 仁蔵は、あずきの中に消えてしまった。


「あずきちゃん、三の型がわかったよ! これでミドリさんに耳鳴りの音を小さくする方法を教えられるわ、良かった」

 喜ぶ冬子であった。



 ❃



・月の姿勢。【三の型】 

🌛腕を回す。

 足を肩幅に開き直立します。

①両腕を下から頭の上にあげます。(野球でボールを投げる時のように)

②頭の上にある手を横に広げながら、平泳ぎのように下におろします。

 ①→②を繰り返します。

 頭の上に腕がある時に首を軽く回すのもよいです。


 三の型を片腕づつ交互にやるやり方もあります。

 右手を左肩の上にあげ、そこで手のひらをひっくり返し水をかきわけるように円を描きゆっくりと下まで下ろすします。

 首は手と反対を向きますがコリを取るのが目的なので微妙に動かし、上に上げた手も途中で止めたり、ゆらしたりしてコリを取ります。

 左右交互にやりましょう。


 ❃


 後日、じんぞう堂に施術にやって来たミドリさんに、冬子は『月の姿勢』を教えた。


「どうです? お父さんは30分やればわかるって言ってましたけど?」

 月の姿勢が耳鳴りに効くのか心配の冬子。


「そうね、どうだろう? ごめんね。よくわからないわ」

「そうですか……」



 家に帰り、寝ようとするミドリさん。

「あらっ、耳鳴りがあんまりしないわね。やっぱり月の姿勢は効くのね。勘蔵さんも二の型をすれば大丈夫だって言ってたから、たぶん大丈夫ね。歳取ると導引は便利なものね」


 耳鳴りの音が小さくなり喜ぶミドリさん。



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