第21話「アイス」・水虫。
「暑いな〜、
「あるよ。冷蔵庫に入っている」
「そうか!」
父、
冷蔵庫からアイスを出している。
「冬子も食うか!?」
「うん、食べる」
「缶詰のアズキがあったな、開けるか」
勘蔵は小豆の缶詰を開けてカップに入ったアイスの上に乗せている。
「夏が来ると思い出すな〜」
「何を?」
「俺の勤めている広告代理店が火事で焼けたこと……」
「あ〜っ、あったね。あたし、まだ子供だったけど覚えている」
「あれは、ライバル会社の放火じゃないかと噂されていたんだ。あの頃、うちの会社は絶好調だったからな〜」
「あの後、お父さん居なくなったよね!?」
「そうだよ、会社を建て直す間、仕事がないから、俺は自動車の部品工場に行って働いていたんだ」
「そうだったの? お母さんは、お父さんは女の人を作って家を出て行ったって言うから、あたし泣いていたのよ」
「ひどい事を言う奴だな。家庭のために真面目に働いていたんだぞ」
「それが夏だったの?」
「そう、夏だよ。馴れない工場の仕事で大変だった。アルミの部品を機械で削るんだけど部品にお湯をかけながら削るから、周りは40度くらいになってなー、スポットクーラーっていう少し冷たい風がくるやつがあって、あれがなかったら倒れてしまうよ」
「ふ〜〜ん、ちゃんと働いていたんだ」
「働いていたさ、しかも夜勤もやってたんだぞ」
「そうなの、大きな工場だったの?」
「デッカイよ、端から端まで歩くと30分くらいかかったな」
「凄いね」
勘蔵はアズキの缶詰めからアズキをすくって食べかけのアイスに乗せている。
「そんなに食べたら糖尿病になるよ」
「大丈夫、大丈夫。戦前の日本では糖尿病は贅沢病って言って金持ちしかならなかったらしい。しかし、当時の寿命は50〜60歳くらいだったんじゃないかな? 栄養を取ったほうが長生きするんじゃないか?」
「長生きでも、寝たきりなんてならないでよ」
「ボケて寝たきりになって娘に介護されるのも悪くないがな……」
「やめてよ、介護は大変だってみんな言ってるわよ」
「そうか……俺は工場で働いていて気づいた事があるんだ」
「何? ボケない方法?」
冬子も缶詰めに残っているアズキをかき集めてアイスに乗せている。
「ボケるっていうのは脳に血液がうまくまわらなくなるのじゃないだろうか? 首が硬くなるとか、血管が狭くなるとか、または心臓が血液を送る力が弱くなるとか」
「まぁ、そうかもね」
「俺、工場で水虫になって市販の薬を塗ったけど良くならなくて指の股が切れて困ったんだ」
「やだな〜 うつさないでよ……」
「今は治っているよ。当時は暑いし安全靴って通気性の悪い靴を履いていたからな〜 それで指の間を開けるために包帯で足の指を巻いて足首でしばっていたんだ」
「水虫は足の指の間を開けてやるといいっていうわね」
「そうなんだ、それで水虫は治ったんだが、これを見てくれ」
勘蔵は靴下を脱いで冬子に足を見せている。
「足がどうかしたの?」
「ほら、この爪」
勘蔵は足の人差し指と中指、第2指と第3指の足の指の爪を指差している。
「爪が変形してるね。この2本の爪だけ」
「そうなんだ、この2本の指の間が皮膚が割れて治らなかったんだ」
「水虫でこうなったの、爪水虫?」
「いゃ、そうじゃないんだ。ここを包帯で包んで足首で結んでいたから、包帯が引っ張られたのか強く結びすぎたのか、指の根本の血管がつぶされて爪に行く血液が減ったんだと思う。爪は血液が減ってまともに伸ばせず変形してしまったんだと思う」
「あ〜っ、なるほどね〜 爪が変形するってことは脳もってこと?首の不調からくるのね。目や耳もそうかな?!」
「そうだね、しのぶちゃんも手が疲れるって言ってたけど、一生懸命に手をもんでも治らなかったのは、ずっと肘を曲げてパソコンを打っていたから肘の血管がつぶされて手に行く血液が減ったんだと思う」
「そうだね、肘をもんだら良くなったもんね」
「足なんかでも、ずっと椅子に座っていると股関節の血管は曲げたままになるから、足の流れやアソコの流れも悪くなる事もあるだろうな。股関節ももんでやらないと……」
「下ネタおやじだね」
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