第19話「雑談」冬子とお母さん。

冬子とうこ、駅前で、ようかん買ってきたの一緒に食べましょう」

 あら、いないの?

「冬子、いないの?」


 冬子の店『じんぞう堂』に母親が遊びに来た。


「冬子、また寝てるの?」

 店の奥で冬子は長イスに横になって寝ていた。

「お母さん? えっ、何? 何時、朝?」


「寝ぼけてるわね。前に来た時も寝てたし。いまは昼の2時よ」

「おっかしいなーー、何で寝てたのかな?」


「店の中にあさを燃やしたにおいがかすかにあったわよ」

「いゃいゃ、何も燃やしてないわよ」

「馬鹿ね、あなた、天狗党てんぐとうの者に監視されてるのよ。怪しいお客さんが来たでしょう」

「天狗党? さっきは、綺麗な女性のお客さんが来た……あれ、途中から記憶がないや」


「天狗党の者は麻を燃やして幻覚を見せたり、眠らせるのが得意なのよ。あなたが仙女か確かめに来てるのよ。たぶんだけど……」


「え〜っ、仙女!? 何それ、そんなのいるわけないじゃない」

「馬鹿ね、いっぱいいるわよ! 仙女も仙人も天狗も……」

「そうなの?」


「今みたいに法律も警官もいない時代は、潜在的な仙人や天狗が多かったみたい。現代にもいるわよ」

「わたし、見たことないよ……」

「人を助けたいと思う人に潜在的な仙人が多いわね、バスで席をゆずる人とか、警察官や医療関係の人とかね。仙縁があって修行を始める人は少ないけど、あんたは仙縁があるんだから修行しなさいよ!」


「わたし!? 仙女になるの?」

「修行していたら、そのうちお迎えが来て仙女になれるはずよ」


「天狗もいるの?」

「赤い顔で鼻の長いのは少ないけど、潜在的な天狗はけっこういるわね」

「このへんにもいるの?」

「潜在的なのはね。戦いが好きな人とか不正行為を許さないなんて人。戦後すぐの話しだけど、当時、日本の警官は銃を持てなくて警棒を持ってたんですって、それをアメリカの進駐軍が警官をからかい、警官のお尻に警棒を入れてたんですって」


「お尻の穴? 警棒って太くない?」


「聞いた話しだからどこまで本当かはわからないけどね。それで、それを見ていた有名な空手家が進駐軍の人を空手で叩きのめしたんですって」

「一歩間違えたら進駐軍に撃たれて殺されても文句も言えない時代でしょ?」

「そうい自分の命もかえりみない人がいるのよ。それが潜在的な天狗」

「あの人かな? 牛殺しの……お母さん、天狗に会ったの? 前に雷の落とし方を習ったって」


「会ったような? 戦ったような? 天狗は土地を護っているのよ。天狗党は卑弥呼の時代からあって、今でも怪しい人間はいないかパトロールをしているとか……たしか、そんなことを言っていたような……」


「何、それ。あいまいね、やっぱり気のせいじゃないの?」

「そうかな? でもね、最近、中国系の仙術使いの人達が居なくなっているのよ」

「あれじゃないの、コロナウイルスで日本にこれないとか?」

「それもあると思うけど、インド系の仙術使いは増えているのよ」

「インドにも仙術があるの?」


「あるわよ。インド・中国・韓国あたりは、いっぱいいるわよ。少しづつ形を変えてるのが多いけどね、インドカレーの料理人やヨガ講師をしている人の中にまぎれているわよ」

「仙術の普及の為に来てるの?」


「たぶん、政治的なものだと思うわ、最近、政治家の人で失言をして辞職する人がやたら多いでしょう。わたしは、あれは脳かホルモンをコントロールされたんじゃないかと思っているのよ」

「そんなことができるの?」

「副腎のホルモンをコントロールして興奮状態にしたり、免疫を使って脳に炎症を起こしたりするのよ」

「お母さんもできるの?」


「上級の仙術使いならできるわ。やってみようか?」

「あたしにかけるの?」

「うん、あんたも覚えなさいよ」

「じゃぁ、ちょっとだけにしてね」


「そうね、リューマチと痛風、どっちがいい?」


「う~~ん、じゃぁ、痛風!」

「わかった。T細胞、集まって。冬子の左足を攻撃しなさい!」

「これで免疫が攻撃するの?」

「そうよ、簡単でしょ。わたしは政治家が免疫の異常で病気になるのは、半分くらいは仙術の呪術使いがやってると思っているわ」


「そう言われれば、体調不良や失言で辞職する政治家って多いわね。大きな会社や病院でもあったわ」

「たぶん、調べれば呪術使いが側にいたはずよ」

「新型コロナウイルスってのはどうなの?お母さんは、自然現象だと思う?」

「わからないけど、コロナウイルスの前って政治的に緊張状態だったのよ。携帯の緊急警報とか何度も鳴ったでしょ。それがコロナウイルスで国どうしの緊張状態はゆるくなったの、経済的なダメージで戦争をする力もなくなったみたい」


「政治的な事でコロナウイルスがばらまかれたとか?」

「ないとはいえないけど、人為的なものなら、非常に高度なやりかたね。中国とインドが関係しているのも怪しいわね。そろそろ足に効いてこない?」


「足? 少しチリチリしている」


「痛風は足に釘が刺さったような痛みらしいわよ」

「それは痛そう。小学生の時、一緒にあそんでいた男の子が、釘の刺さった板を踏んで家に帰ったら、お母さんが傷口を金づちで叩いていたけど、あれはどうなの?」

「殺菌しないとダメだと思うけど、お母さんの時代も釘を踏んだら叩いていたわね」


「だんだん痛くなってきた。お母さんもういい、術を解いて! 早く早く!!」

「わかった。T細胞、攻撃を止めなさい!」


「あーー、すごい痛い! 免疫ってこんなに攻撃するの?」


「面白いでしょ。あんたも覚えなさい」

「こんなのどうやってやるのよ!」

「どうやるって……免疫を動かすだけよ。羊飼いが羊を誘導するようなもんじゃない?」


「あたしなはサッパリわからないわ」

「できるわよ。お父さんもできるんだから」

「お父さんもできるの? まさか!?」


「三日月家の男は代々、ぞうの名前がついてるでしょう。なんでか聞いてる?」

「いや、知らない。意味があるの? おじいさん仁蔵じんぞうで、お父さん勘蔵かんぞうだもんね」


「お地蔵じぞうさまの役目があるらしいの、地域を守るのよ」

「何から守るの?」

「目には見えないものが多いけど、悪霊のたぐいはいっぱいいるわよ。理由もないのに、急に車に飛び込みたくなったり、カッターで手首を切りたくなったり、悪霊に憑かれると思うのよ。普通の人はすぐ治るけど、心が弱っていると……」


「お父さんも悪霊と戦っているの?」


「いちおうね、悪霊と言ってもそれほどたいしたもんじゃなのよ、お父さんは蚊を叩くくらいの気持ちで、みつけたらやっつけてるわよ。でも、今、夢中になってるのは、念力を使ってパチンコで大当たりを引くことね」


「やっぱり、そんなことしてるんだ……」

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