第18話「眠れない」・メラトニン。

 安心できる環境だとぐっすり眠れるだろう。

 仕事や人間関係など、何か不安があれば、寝付きが悪いのも当然だろうな。


 祖父、仁蔵は、そう言ってました。


 ❃


「最近、眠れない人が多いらしいわよ」

「コロナで外出しないから運動不足なんだろう。冬子、コーヒー入れてくれよ」

 冬子と父親が、冬子の店『じんぞう堂』で話しをしている。


「うん、インスタントでいい?」

「あぁ、俺はインスタントの方がいいんだ」


「お父さん、本当にインスタントコーヒー好きだよね。レギュラーの方が美味しいんじゃない?」

「レギュラーは一杯くらいならいいけど、何杯も飲むとキツいんだ。ブラジルの人は日本のコーヒーカップの半分くらいの小さなもので飲むって言ってたぞ」


「誰、ブラジルの人が言ってたの?」


「そうだよ。仕事でブラジルの人を案内した時に言ってた。本当だぞ」

「そう……」


「俺はインスタントコーヒーでも、お気に入りがあるんだ。インスタントコーヒーっていっても作るのはたいへんらしいぞ」


「そんなにたいへんなの?インスタントラーメンみたいなものじゃないの?」

「インスタントラーメンはわからないが、このあいだ、テレビでインスタントコーヒーの作り方をやっていてな~、ビル全体がインスタントコーヒーを作る工場で大きな設備のある会社でないと作れないんだって」

「へ~~っ、そうなの……」

「なんだ、興味がなさそうに」

「あたし、コーヒーはあんまり飲まないから、歯が黒くなりそう」


「コーヒーを飲む人の方が健康にいいというデーターもあるんだぞ。血糖や心臓にもいいらしい」


「コーヒーはいいから、睡眠について教えてよ!」

「睡眠か……コーヒー飲んだら眠れないぞ」

「良く寝れる方法!」

「切れてるのか?」

「切れてないわよ!」

「切れてるな……」


「もういいから、睡眠!」

「わかった。どうすれば寝れるかだな。それは脳下垂体が上手く働くかどうかだろう。自律神経の脳幹とか、目の奥と首の付け根だ」


「また、難しくなった」

「睡眠もホルモンだろう? メラトニン」


「メラトニンか、外国ではサプリメントで売ってるらしいけど」

「ものすごく眠たくなる時があるだろ。あれがメラトニンだよ」


「それは、どうすれば出るの」

「メラトニンをつくる材料を食べるのと脳下垂体に血流が流れることと体が暖まっていることだろうな」

「具体的には?」

「メラトニンの材料に大豆なら、味噌汁を飲むこと、そして夕方に風呂に入って体を暖めること、あとは肩と首のコリをとる」

「わりと普通じゃない?」

「それと、寝る前に脳の興奮を静めておくんだ」

「脳の興奮か……」

「そう、脳が興奮してると寝れない。自律神経が交感神経にかたよっていると寝付きが悪い」

「副交感神経を働かせるのね」

「そうだ。それには首のコリを取るんだ」


「首は月の姿勢と土の姿勢ね」

「”舟をこぐ“と”ボートをこぐ“と前屈と水の姿勢もやるといい」

「いっぱいあるわね。もっと減らせない?」


「それじゃー、体を暖める」

「それ、よく聞くけど体を暖めるとどういいの?」

「体験的に言われてるから間違いはないだろうが、科学的に言うならミトコンドリアがよく働くんだ、あと酵素とか……」


「ミトコンドリアか、見えないからな」


「俺も実際はわからないよ。電子顕微鏡で見る世界だから学者にしかわからない」

「まだ、医学的には認められてないんでしょう」


「たぶん、まだだろうが昔から言われている話と一致するんだ」

「それが暖めること」


「昔から寝る時は、頭寒足熱って言うだろう」


「湯たんぽ?」

「足湯でもいいし。とにかく足を暖めるんだ、それと腹。足を暖めると血流で腹もあたたまる」

「お腹の免疫力を強くするのね」

「それもあるが、動物性脂肪だな」


「動物性脂肪!?どういうこと」


「動物って人間より体温が高いんだ。豚とか牛ね。37度はあるはずだ」

「うん、それで」

「豚とか牛の肉を食べると腸の温度が36度以下だと脂肪が固まってしまうんじゃないかな。実験では固まるんだ」


「腸の中で脂肪が固まるの?」

「詳しくはわからないが、脂肪の多い便は水に浮くらしいぞ」

「お腹を暖めるのは基本ね」

「ミトコンドリアも暖かいと良く働くんだ。頭にもミトコンドリアがいっぱいいるらしいから脳下垂体とも関係するはずだ」


「それじゃー、足とお腹を暖めるといいのね」


「ボートを漕ぐもしたほうがいいな。首が柔らかいと良く寝れるんだ。あと、イビキのひどいのと一緒だと寝れないぞ。他にも性格の悪い奴だな、人が寝てるのにやたら物音をたてる奴、そんな奴がそばにいると寝れない」

「それは寝れないね……」

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