第14話「ストレートネック」・肘。
筋肉を使い過ぎると筋肉が腫れて血管を圧迫することがある。
血管が圧迫されると腫れるからすぐわかるがな……
祖父、仁蔵は、そう言っていました。
❃
「こんにちは、冬子ちゃん、このあいだの『舟をこぐ』効くね!」
先日、舟をこぐを習った川本氏である。
「俺さ〜っ、糖尿予備軍で最近はすごくのどが渇くようになってたんだ。ご飯の後やおかしなんか食べると水を1リットルくらい飲むんだよ。堅焼きの煎餅なんか食べるとてきめんだね。あっ、これよかったら食べて」
川本氏は冬子に紙袋を渡す。
「ありがとうございます。なんだろう」
紙袋の中には包装紙で綺麗にくるまれた堅焼き煎餅だった。
「でも、なんで舟をこぐで、のどの渇きがおさまるんだろう」
「それは、このあいだ母とも話ていたんですけど、脊髄神経か副交感神経の働きによると思うんです」
「なんか、難しいのが出てきたね」
「ちょっと難しいですよ」
「やさしく頼むよ」
「はい、なるべく分かるように説明します。簡単に言うと首の異常だと思うんです。例えばですね、ここを圧迫します」
冬子は川本氏の二の腕、肩の下の内側を圧迫した。
「ここは血管が体の表面にあるので圧迫すると、その先の腕や手に影響がでます。どうですか、そろそろ
「うん、痺れてきたよ」
「注射する時なんかここをゴムで縛って血管を浮き上がらせたりもしますよね」
「最近はあんまり見ないけど、昔はやっていたような」
「昔ですか……神経は血管と一緒に走っているので、もし、腕まくらで一晩女の子がここを圧迫し続けるとたいへんなことになりますよ」
「どうなるの?」
「朝起きたら腕が動かなくなっているんです」
「なんで?」
「神経を圧迫して麻痺してしまうんです」
「腕まくらで!?」
「神経の圧迫は怖いんですよ。正座してたら足が痺れて動かなくなるでしょう?」
「あー、なるね。俺なんか10分ももたないよ。あっ、でも、お婆ちゃんは平気な人がいるよ! パチンコ屋の固定されてるイスの上に正座して何時間も打っているお婆ちゃんがいるんだ」
「個人差はありますね……」
「それで首も最近はスマホやゲームやパチンコなんかで長時間画面を見ることで、ストレートネックと言って本来はカーブしている首が真っ直ぐになる人が増えているんですって」
「真っ直ぐのほうが通りがいいんじゃない?」
「そこは、はっきり分からないんですけどカーブするように作られているので真っ直ぐだとかえって血管や神経が圧迫されるんじゃないかと思うんです」
「そんなもんかね。でも俺は首のコリはわかったよ! 首のコリと頭の後ろ。脳ミソもこっていたな。首を
「たぶんパチンコのやり過ぎで首がこっていたんじゃないですか?」
「そうだね。そうだと思うよ、時間を忘れて打っているからね……」
「そんなに打つんですか……それでですね、首には副交感神経が走っているんです。リラックスさせる神経です。この神経は首から心臓・すい臓・腸につながっているので、すい臓がリラックスして喉の渇きがおさまったんじゃないかと思うんです」
「そうなの? じゃあ、糖尿病って首の病気なの?」
「そうとは言えないんですけど、予備軍の人なら、まず舟をこぐをやってみるといいと思いますね」
「あれやってから、喉の渇きも少なくなったし、腹がグルグルなりだして便通もいいよ」
「ところで、今日の施術は?」
「俺じゃなくて、この子をやってくれるかな? 知り合いの子なんだけど、右腕がダルいって言うんだ」
川本氏は20代の女性を連れて来ていた。
「腕がダルい」
「そう、病院で診てもらったら異常は無いって言われて、親が祈祷師にみてもらったら『戦争で右腕を失った親戚がいて供養されてないのが原因だ』って言われたんだって。でも、そんな親戚に心当たりもないっていうんで、それでどこかいい所はないかっていうので俺がここに連れてきたんだ」
「たたりですか? 怖いですね……どれどれ右腕がダルいんですか?」
「はい、
「肘から先……パソコンとか使いますか?」
「はい、仕事で一日中使っています」
冬子は肘から先の流れを見てみると、流れが詰まっている。肩から肘まではなんともないので肘の血管が圧迫されてるようだ。
肘から先が腫れている。
「たぶん、これじゃないかな?」
冬子は肘の付け根の腱を触っている。
「腕の筋肉を骨につないでいる腱が硬くなって血管を圧迫してるんだと思います。肘の上と下の腱をほぐしてみます」
「あっ、腕に血が流れる!」
冬子が肘の腱をほぐすと圧迫されていた血管の圧迫が取れ血液が流れ出した。
「たぶん、パソコンとイスや机の高さが合ってなくて腕に負担がかかったんじゃないでしょうか」
筋肉に圧迫されていた肘の血管の流れが良くなり、女性の腕は30分の施術で楽になった。
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