第7話「大腸内視鏡」・がん。

「こんにちは」

 前回、五十肩で来たワタノベ氏である。


「いらっしゃいませ。ワタノベさん、今日も魚?」

 ワタノベ氏はクーラーボックスを持って冬子とうこの店に来ている。


「山でキャンプしてたんだ。ついでに釣ったら、けっこう釣れてさ〜 冬子ちゃんにあげようと思って」


「わっ、ありがとう。あっ!このあいだの、美味しかったですよ。塩焼きにしてアズキちゃんと食べました」


「あっ、そう。ヤマメも美味しいんだよ。塩焼きでもいいし、唐揚げやバター焼きなんてのもたまらんね」

 冬子の持って来たボールにヤマメを入れるワタノベ氏。


「今日は、また肩の施術ですか?」


「うん、そうね肩でもいいけど……」

「どうかしたんですか?」


「会社の健康診断で便潜血検査ってあるんだ。検便だけど……あれに引っかかっちゃった」

「あれは、あれでしょ〜っ、内視鏡をやりなさいって言われるやつ」

「そう、そう。さすがに勉強しているね」


「へへへ……テレビの番組でよくやってるから……あたしは、まだやったことないけど」


「それでさ、内視鏡やったんだよ。大腸内視鏡。肛門からカメラ入れるやつ」

「ええっ、やったんですか!」

「やったよ。人に肛門見られたのは初めてだよ」


「肛門……あたし、絶対見せたくないな」


「そうしたらポリープがあって、医者が相談してるんだよ」

「医者が……がんとか?」


「いゃ、がんではなかったけど、ポリープがデカいらしくて内視鏡で取るかどうするか相談しているんだよ」

「そうなんですか……で、どうしたんです」


「1センチくらいだったらしくて、結局、内視鏡で取ったんだ」

「それは、よかったんじゃないですか?」


「よかったんだろうね……」

「なにか腑に落ちない?」


「そのうち“がん”です。なんて言われる日が来るのかと思うと不安でさ……」


「今は長寿になったから、二人に一人はがんになる時代ですもんね……」

「何かがんにならない食べ物とかある?」


「がんは消化器に多いんですよ。口から肛門までの間」

「そうだね、胃がんとか大腸がんとかよく聞くね」


「がんは低酸素・低体温の時に発生するって免疫学者が言ってましたよ」

「低酸素? 山の上とか?」


「山の上も低酸素ですが、コリなどで血液がうまく回ってない所で新鮮な酸素を含んだ血液が上手く運ばれてない所です。低体温は体温が36度以下かな? 特に腸が冷えるとまずいようです」


「温めるといいのかな、温泉とか?」

「温泉いいですね。わたしの同級生に温泉て苗字の人がいたんですよ。温泉のある所にご先祖様は住んでいたんでしょうね、うらやましい……そう、そう。消化器って空洞でしょ、だから体の中でも冷えやすいんですよ」


「空洞ってなに?」

「胃って袋状でしょ、腸も筒状で空間があるじゃないですか」

「あ〜〜っ、なるほどね」


「そういう所は筋肉が密集している所より体温が低くなるらしいんです」

「なるほどね」


「それで、消化器の細胞は入れ替わりが他の細胞に比べて、すごく早いの。がんになる前に細胞ごと入れ替えるんじゃないのかな」

「ふ~~ん。そうなの」


「それで消化器の細胞を入れ替えるのにAがいいんですって」

「ビタミンA?」


「ニンジンとかウナギ、卵や乳製品なんかかな」

「ニンジンか……」


「ビタミンって体に貯めることができないから、小まめに取るといいらしいですよ」

「ニンジンを小まめには難しいな」


「肝油とかサプリメントもありますよ」


「肝油? 小学生の時に学校でもらったな」


「消化器系のガンはビタミンAの不足で起こるって言っている学者もいるんですよ。本当かどうかはわからないですけどね」


「ワタノベさん『ブイ』は習いました?」

「ブイ? なにそれ」


「おじいさんが、よくやってたんですよ」

「仁蔵さんが……」

「おじいさんは、肺がんだったんです、それでがんを抑えるために開発したのがブイなんですって」


「えっ、肺がんだったの? タバコひどかったもんな〜」

「そうなんですよ、タバコ吸いながら施術するから、お客様の背中によくタバコの灰を落としてたんです」


「それ、俺もやられた。仁蔵さん、『しん○い』しか吸わなかったろ、あれはフィルターもついてない昔からあるタバコでキツいんだよ」


「そうですね、ずっと『しん○い』だった。肺がんになるのも当然よね、でも、死因は心不全なんですよ。昼寝するって奥で寝てたら、それっきり……」

「がんじゃなかったの?」

「がんからきたのかもしれないですけれど、それでもがんって言われてから10年くらいたつんです、90歳だから……」


「その、ブイってのが効いていたのかな?」

「どうかな? 他のがんの人に試したりしなかったし、おじいさんはブイは人に教えなかったみたい……」





☆冬子とおじいさん★

「おじいさん、ガンの予防法ってある?」

「あるよ、!」

「寝るだけでいいの?」

「寝ている間にリンパ球がガンを退治してくれるよ。よく、寝ないで頑張る人がいるけど、血液は寝ないと新しいのができないらしい。朝に納豆食べて、昼に首の導引をして、夜は味噌汁飲んで寝る前に足湯をしてから布団に入れば良く寝れる」


「それでいいの?」

「医学的には、まだ認められてないと思うけど、免疫学者で重力と血液について書いた人がいるんだよ。あと筋肉から出るホルモンがガンの予防になるらしいから筋トレもいいみたいだな」

「重力と血液が関係あるの?」


「ね〜〜っ、おじいちゃん……寝ちゃった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る