第2話 学校での世界一位の俺①

俺の名はサイトウ。

世界一位に10年ほど君臨している、正真正銘世界一位の男だ。

今日は世界一位の俺がどのように学校生活を送っているのか話していこう。

ん?なんだって?世界一位でも学校には通うのかだって?

フッ、これだから圏外の人間は、おっと、別にバカにするつもりはなかったのだが、あまりにも的外れな疑問だったもので鼻で笑ってしまったよ。

いいかい坊や、世界一位なのに学校に通ってるのかということがそもそも間違っているのだよ。

世界一位だからではなく、世界一位なのに敢えて学校に通っている、と認識を改めてくれ。

こうやって日常の全てが世界一位へとつながっているという事をわかってくれるかな?


さて、学校での俺はいたって普通だという事を先に言っておこう。

そこには世界一位のサイトウではなく、高校生としてのサイトウがいる、と言った方が伝わるのかな?君たちには?

早朝に家を出て普通に通学し、授業を受け、帰宅する。一般的な高校生と同じ姿だ。

だが忘れないでほしい、一般的な高校生の姿で一般的な高校生に見える世界一位のサイトウだという事を。これはとても重要な事なんだ。


授業も普通に受けてはいるが、授業中であれ、お昼休みであれ、常に自分が世界一位であるという自覚を持ちながらの高校生活なのだ。

一瞬たりとも自分は世界一位であるという事を忘れもしない生活なのだよ。


ただ、まぁ君たちには今回取材という形でこうやって話してはいるが、基本的にはランキグ圏外のものにランキングについて話しをすることは例外を除いて許されてはいない。

今回君たちは正規の手続きを踏んだから俺のインタビューが許可されたわけだが、高校の同級生、クラスメート、教師にも、自分が世界一位という事は明かしてはならない。これだけは明確な決まりなんだ。

ただ、やはり俺は世界一位に君臨してもう長い。

自然と、なんというかオーラ?世界一位の貫禄からくる周囲へのプレッシャーは出てしまっていると思う。


例えば席替えの時、担任が作ったくじ引きをその日の日直に渡し、担任は職員室に戻ってしまう、後は勝手にやれよ、と。

その時決まって日直がこういうんだ。

「サイトウ、またお前から引け」と。

一瞬焦るさ。意識してないうちに俺が世界一位という事が伝わってしまったのか?って。世界一位の俺が一番初めにくじを引かないといけない、と思わせてしまったのか?と。

ただ、それは杞憂で、抑えきれない世界一位の圧が俺から伝わってしまった結果、俺にくじを引かせてしまっているんだ。今年は16番を引いた。当然1番を引くと思っていたから狼狽えたが、なんてことはない、くじの紙を中央で折ってしまえば1しか映らないだろう?だから実質1だ!

俺は余裕をもって16番の席、ちょうどクラスの真ん中あたりの席に座った。

1番も魅力的だが、教室の中央もある意味1番と同意だと思わないか?実に気持ちがいい。

しかしここからが大変なんだ。俺がクラスの中央に座ってしまう、それは、俺の世界一位としてのプレッシャーを教室内に満遍なく放出してしまう。

それをなんとなく肌で感じたのか、俺以降はくじを引かずに各々が好きな席についた。

俺を中心にドーナツ状に席は埋まっていくんだ。これがどういうことかわかるか?

みんな目に見えない世界一位の圧によって俺の近くになかなか近づけない結果だ。なぜか?俺が世界一位だからだ!

ん?それって嫌われているからだって?

お前もつくづく阿呆だな。だが世界一位の俺に免じて今の非礼は不問にしてやろう。


話を戻すぞ。まぁそんな感じで席替え一つとっても、やはり世界一位というオーラ的なものは、圏外の人間にもうっすらとだが感じ取れてしまうということだ。


昨年八位の奴がこんな弱音を吐いていたんだ。

「なんだか俺を見るみんなの目がまるで蔑んでいるようなんだ」と。

八位とはそこそこいい距離感を保った良い関係だったこともあり、助言をしてやった。

「そんな風に考えてるからお前は八位なんだ」と。

八位は泣いていたよ。世界一位の俺に励まされて感動したんだろう。


まぁそうやって、物事一つ決めるだけでも、意図していなくてもやはり世界一位であるという事は揺るぎようのない事実であるわけだから、少なからず周囲に影響を与えてしまっているのかもしれないが、私に言わせれば「世界一位の雰囲気を体感できたかも?という事に感謝をしろ!」と心の中で思っているよ。


あ、そうそう、これは偶然だとは思うが、まぁ毎回席替えは俺がくじを引く→俺が座る→各々が好きな席に座る(俺の周囲以外から)というのが一般的なんだが、あいつ、えぇっと、名前は何だったか・・・確かコマツという女がいつも俺のそばに来て「サイトウ君、隣いい?」と聞いて、ノーを言う前に勝手に隣に座る女がいたな。

あぁ、圏外の中でもさらに阿呆な女がいるのだなと常々思うよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る