第714話 試験結果ですが何か?
期末試験の結果発表は、またしても意外な結果に二年生達はざわつくことになる。
それは、まず、リューとリーンが定位置に返り咲いたことだ。
前回のダークホースであるイエラ・フォレスは、三位に落ちた。
「うむ。これで我が目立つことも避けられよう」
イエラ・フォレスは内心そう考えていつも通り、認識阻害能力を発揮して教室に向かったので、誰にも気づかれないのであった。
ちなみに四位にはリズ王女である。
ここはイエラ・フォレスの登場で新たな定位置になりそうな予感がするリズ王女であったが、彼女の目標は、リューとリーンの二人であったから、くじける様子はない。
「イエラ・フォレスさんには来年こそ、あの場所を変わってもらいます」
リズ王女はリュー達の前でそう宣言すると普段見せない負けん気を見せた。
「……確かあの者はこの国の王女であったか……。その者より上でも我は目立ってしまうか。来年のテストはあの者の下になるようにするか……」
イエラ・フォレスは、リズ王女の玄関内にある掲示板前での発言を、教室から『地獄耳』で聞き分けると、そう漏らす。
どうやら、自分の名前に反応して聞き耳を立てていたようだ。
そうとは知らないリュー達は、テスト結果が張り出された掲示板前で、ワイワイとその内容に盛り上がっていた。
何しろ前回は一位のイエラ・フォレスが注目の的の一人であったが、他にも五位に入ったノーエランド王国から留学生サイムス・サイエンも注目されていた。
しかし、それが、今回、イバル・コートナインが五位に返り咲いていたのだ。
さらには、同じくノーエランド王国からの留学生であるノーマンが六位と続いていた。
そして、七位にラーシュが入っていたことで、サイムス・サイエンは五位から八位に順位を落とすことになったのである。
これには、当人のサイムス・サイエンはおろか、他の留学生達であるアリス・サイジョー、シン・ガーシップも驚く。
「サイムス様が順位を落とすなんて何かの間違いですわ!」
と最年少の十一歳のアリス・サイジョーが驚きを口にすれば、
「マジかよ。この学校のレベル高すぎるぜ?」
とシン・ガーシップが呆れる。
「その分、ノーマンが頑張っていますよ?」
エマ王女はサイムス・サイエンの順位が下がったことに驚く様子もなく、そう指摘する。
「ノーマンは今やリュー・ミナトミュラー男爵の部下に納まっていますから、すでにあちら側の人間です。きっと、点数を取る為のコツでも聞いたのでしょう」
サイムス・サイエンが悔しそうに答える。
「ノーマンは元々このくらいは頑張れる人材だったと思いますよ」
エマ王女は悔しそうなサイムス・サイエンに向かってそう答えた。
そして続ける。
「彼は、平民であることで周囲に気を使い、私達の間で一番になることを避けていただけのように感じていました。──これが彼の本当の実力ではないかしら?」
エマ王女は普段、温厚でのほほんとした雰囲気の持ち主だが、人を見る目に関してとても鋭いところがあった。
彼女が留学の時に同行する人員を選んだのが現在のメンバーでであり、他にも優秀な学生はいたのに、このメンツを選んだのも不思議に思われていた。
だが、実際問題、こちらに来てからこのメンバーはとても仲が良く問題らしい問題は起きていない。
それは、相性の問題もあるだろうし、お互いが尊重し、周囲に気を使うことが出来る者達であったからだ。
それらをどこまでエマ王女が見抜いたうえで選出したのかわからないが、ノーマンもその一人であり、その優秀さについても見抜いていたことになる。
リューもそれに気づいて、引き抜きをしたわけであるが、サイムス・サイエンはそういう意味ではノーマンの実力を量れていなかったようだ。
「姫様の指摘通りだな。──サイムス、ノーマンはその実力を発揮し、俺達は努力が足りなかっただけの話さ。実際、みんなの順位は、前回より下がっているからな」
シン・ガーシップが負けを認めたようにそう告げる。
「あら、私の順位は前回の十八位から十七位に上がっていますよ」
エマ王女が大事なところとばかりに指摘した。
「そうですわ。姫様だけがアリス達の中で一人、成績を伸ばしているのですわ」
アリス・サイジョーが、エマ王女の世話役としてそのことに気づかなかったことに驚く。
「姫様、こっちに来てからも、勉強頑張っていたものな」
シン・ガーシップが何気にその努力を知っていたのか事実を漏らす。
「ふふふっ。みんなもこれまで以上に頑張りましょうね」
エマ王女がそうみんなを励ます。
「「「はい!」」」
一同は、声を揃えてエマ王女の発破に答えるべく元気よく返事をするのであった。
そんな、期末試験の順位はこちら。
一位リュー・ミナトミュラー
二位リーン
三位イエラ・フォレス
四位エリザベス・クレストリア
五位イバル・コートナイン
六位ノーマン(ノーエランド留学組・リューの部下)
七位ラーシュ
八位サイムス・サイエン(ノーエランド留学組)
九位ナジン・マーモルン
十位シズ・ラソーエ
十一位ランス・ボジーン
十二位アリス・サイジョー(ノーエランド留学組)
十三位スード・バトラー
十四位シン・ガーシップ(ノーエランド留学組)
・
・
十七位エマ・ノーエランド(ノーエランド留学組)
「……みんな頑張ってるね。私も頑張ったのにナジン君には勝てないけど……」
シズは、悔しそうに幼馴染で背の高いナジンを見上げて愚痴を漏らす。
「シズ、悔しいのはわかるが、背後からランスとスードが迫っていることに危機感を抱いた方がいいぞ? あとは明らかにリューのところで勉強会していたみんなが成績伸ばしているしな」
ナジンが順位を確認して危機感を見せた。
「……本当だ。私も次からは入れてほしい……」
シズはふくれっ面をすると、そう漏らす。
「はははっ! 一応、イバル君達はうちの部下でもあるからね。文武両道で頑張ればお給金にも影響があるからみんな必死さ」
リューは笑って種明かしとばかりにみんなのやる気の源を明かす。
「……部下じゃないけど、ランドマークブランドとミナトミュラーブランドにお金をつぎ込んでいる私も特別友人価格で交ぜてほしい!」
シズが挙手して次からの勉強会に入れてくれるようにお願いした。
「それは自分もお願いしたいかな。試験内容がかなり難しくなってきているから、家庭教師の質によっては点数が下がりそうだし」
ナジンがシズとセットで頭を下げる。
「もちろん、大歓迎だよ。その前に来学期は塾をやる予定だし、参加する?」
リューはこの友人達を仲間外しするつもりはないから、確認した。
「俺もな! もう少しで、一桁順位だからさ。シズ達を抜く為には、がむしゃらにやるだけではダメなのがわかった気がするんだよ」
ランスも当然ばかりに挙手する。
「了解。それじゃあ、先日話した塾の予定を教室で詰めようか」
リューがそう言うと、みんなは全員で教室へと移動するのであった。
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