第353話 数日の滞在ですが何か?

 リューと王女一行は、セクナンの街に数日滞在する事になった。


 王女リズが新たにシーダタン元準男爵をセクナンの街長に推薦する事になり、国王の裁可を求めて数日待機する事になったからだ。


 それに捕らえたコーザカとその一党についての情報も集めた。


 と言ってもそれは、立て籠もりを行った有志達から聞いただけであったが、それでも地元の人間である。


 正確な情報が多かった為、それを基にリューとリーン、スードが街内のコーザカの事務所に踏み込み、制圧するという大立ち回りが日中繰り広げられ、それが王女リズの采配として領民達には評価される事になる。


 コーザカは金と力でセクナンの街を裏から牛耳っていたという事だろう。


 そのコーザカも捕まり、勢力も王女の命令で動いた部下?によって、成敗されたのだから勧善懲悪の大捕り物劇としてこの街の語り草になる。


「エリザベス王女の命令で、二人の少年と一人の美しいエルフがコーザカの部下達をちぎっては投げ!ちぎっては投げの大活躍だぜ!」


「くー!その現場で見てみたかったなぁ!奴らがコテンパンにやられるところは痛快だったろうな!」


「次から次に逮捕者が出てくれて、やっとこの街もコーザカの影に怯えなくて済む。これで安心さ!」


「王女殿下は、国王陛下にこの街の闇と戦っていた、シーダタン様をこの街の街長に再任出来るように、推薦してくれたらしい!」


「本当か!?王女殿下万歳!クレストリア王国万歳!」


 この地でも王女リズの裁きにより、王家への信頼は大いに高まるのであった。



「え?リュー、私達ってリズの命令で動いてたの?」


 リーンが民衆の噂話を聞いて、リューに確認した。


「それでいいんじゃない?僕がコーザカの一味を完全に叩いておいた方がいいと思っただけだけど、リズも反対はしないと思う」


「そうよね。この街の治安を良くする事は、リズの名声を高める事になるものね」


「それにリズには色々とお世話になっているから、このくらいはしておかないと……。──それでは後をよろしくお願いします!」


 リューは、コーザカの事務所の大きな穴を空けた壁の隙間から外に出ると、待機していた領兵に後の始末をお願いした。


 リーンとスードもあとに続いて大きな穴から出てくる。


 領兵達は驚き、一瞬立ち尽くすのであったが、これが噂の王女殿下直属の精鋭か!と理解すると、自分達の仕事をする為に事務所内に踏み込み、気絶しているコーザカの部下達を拘束していくのであった。


「……じゃあ、僕達は街長邸に戻ろうか、リズにも報告しないといけないし」


 リューは、服の埃を軽くはたくと用意された馬車に乗り込むのであった。



 街長邸に戻ったリュー達三人は、待っていたマカセリン伯爵に大いに感謝される事になった。


「ミナトミュラー準男爵。この数日で王家に対する評価は一段と上がったようだ。そして、コーザカの勢力の徹底した討伐によって、街の治安がよくなると領民達からの評価もかなり高い。感謝するぞ!」


「すみません。みなさん忙しそうでしたので、勝手に動かさせてもらいました」


「こちらも、コーザカを捕らえた時点で、他の連中の事は忘れていたからな。残党も叩いておくという事をすっかり忘れていたから、よくやってくれた」


 マカセリン伯爵はそう答えると、王女リズにこの事を伝えに行くのであった。


「そうだ。そろそろ王宮でシーダタンの任命手続きが出来て、使者が待機しているはずだから迎えに行ってくるね」


 リューは、リーンとスードにそう言うと、『次元回廊』で王宮に向かうのであった。



 リューが王宮の広場に『次元回廊』で現れると、


「おお!──ミナトミュラー準男爵が現れました!」


 と、近くにいた近衛騎士が、突然現れたリューに驚きながらも、誰かに報告する。


 その近衛騎士の報告に、


「ミナトミュラー準男爵、そこで少々お待ち下さい。今、使者を連れて参ります!」


 と、官吏らしい男性が伝えると走っていくのであった。


 どうやらこっちも忙しいのか慌ただしい。


 リューは思ったよりも待たされていると、先程の官吏が戻って来た。


「お待たせしました、ミナトミュラー準男爵!宰相閣下がもうすぐ訪れますので、もう少しお待ち下さい」


 官吏はそう伝えると、また、走っていく。


「はっ?」


 今、あの官吏の人、変な事言わなかった?宰相閣下って……、聞き間違えだよね?


 リューは、頭の上に「?」をいくつも浮かべながら、また、待つ事になった。


 それから、三十分程だろうか?結構な時間を待たされるリュー。


「……意外に待たされるなぁ」


 リューは、王宮の広場でポツンと近衛騎士と一緒に、佇んでいる。


「……まだですかね?こちらも王女殿下を待たせているので早く戻りたいのですが……」


 リューは試しに傍に一緒に立っている近衛騎士に聞いてみた。


「自分はこの場所の監視が仕事なのでわかりません」


 と、近衛騎士。


「……そうですか、すみません。──試しにあっちに一瞬だけ行ってみます?」


 リューは暇過ぎて、近衛騎士をいじる事にした。


「!?──すぐ戻って来られますか……?」


 近衛騎士はリューの『次元回廊』に興味がある様だ、興味を示してきた。


「ええ、パッと行って、パッと戻って来ますよ?」


「……いや。──自分は任務中なので駄目です」


 近衛騎士は少しの自分の中での葛藤後、断って来た。


 おお、仕事を忘れてなかった!


 リューは内心で感心する。


 そんなどうでもいいやり取りで、時間を潰していると、周囲がざわつき始めた。


 先程の官吏が今度は足早にやってくると、


「国王陛下と宰相閣下のお越しです」


 と、言って膝を突く。


「え!?」


 リューは官吏のとんでもない報告に驚くと慌てて自分も膝を突いて首を垂れるのであった。

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