第280話 年越しですが何か?
リューの年越しはランドマーク本領で過ごす事になった。
この日ばかりは、魔境の森に毎日通っている祖父カミーザもスードや若い衆、領兵達に休みを与えてランドマークの城館に祖母ケイと共にゆっくりと一家団らんで過ごす事にした。
父ファーザは、長男タウロと共に、書類整理にギリギリまで奮闘していたが、リューの指摘で作業を止めてみんなと過ごす事にした。
リューは、そんな家族にイバルとスードを改めて紹介する。
「二人とも僕の友人であり、ミナトミュラー家の屋台骨を支える将来有望な人材だよ」
リューの紹介にイバルもスードも畏まるのであったが、ランドマーク家の面々は大歓迎してくれた。
「イバル君は、うちの息子とは色々あったが、リューに学園復帰時の一部始終は聞いている。己を見つめ直し、謝罪した事は実に立派な行為だと思う。私は君の様な若者は嫌いじゃない。過ちは誰にでもある事だからな」
父ファーザは、イバルを褒めると頭をわしゃわしゃと撫でる。
「あなた、イバル君の髪型が滅茶苦茶になるから止めて上げて」
母セシルが、父ファーザを止める。
「スード君は自分で休みの間の修行を願い出たのだから偉いわね。夫も筋が良いとよく褒めているわよ」
今度は、祖母ケイがスード褒めた。
「こいつは見所がある。根性もあるし、早くもリューが連れてきた若い衆達をまとめる人間になりつつあるしな。ミゲルの仕事も楽になるというものだ」
祖父カミーザも祖母ケイと一緒にスードを褒める。
「二人とも僕の大切な友人だからね!」
リューも二人が褒められて鼻が高い。
「わはは!リュー坊ちゃんが自慢してどうするんですか!」
領兵隊長スーゴが、嬉しそうなリューに茶々を入れた。
「いいじゃない。ミナトミュラー家の家族なんだし、部下でもあるんだから」
今度はリーンが領兵隊長スーゴに言い返した。
「これは失礼。確かにうちの領兵達が褒められると俺も自慢してたな!わはは!」
領兵隊長スーゴはそう答えるとまた、大笑いするのであった。
「リューお兄ちゃん、こっちのお兄ちゃん、魔法の才能が凄そうね」
妹のハンナが、リューの袖を引いてイバルの事を指摘した。
「やっぱりハンナは鋭いなぁ。イバル君は全魔法適正を持つ天才だからね。ハンナほどではないけど、凄い人物なんだよ」
リューはイバルを評価しつつ、その上の才能を持つハンナも評価した。
「リューが自慢していた妹さんか。……確かに、まだ、十歳なのに雰囲気がある子だね」
イバルが、同じ魔法使い系の才能持ちという事で感じるものがあるのか、ハンナをまじまじと見る。
そして、
「それに、リューのお母さん似で美人さんだ。将来は魔法の才とその容姿で人を魅了するだろな」
と、イバルは歯に衣着せぬ美辞麗句で妹ハンナを褒め称えた。
「お嫁には上げないよ?」
リューが、冗談なのか本気なのか答える。
「それは、私もリューの意見に賛成だ」
今度は父ファーザが、地獄耳で聞きつけて再度やって来た。
「あなた。ハンナはまだ、十歳よ。本人の意志もあるんだから勝手な事を言わないの。それにリューもね?」
そう注意すると父ファーザの耳を掴み、軽く引っ張った。
「イタタ!──まぁ、娘が欲しければ、うちの家族を倒してからにしなさい」
父ファーザは、完全に無茶なハードルを用意してイバルに注意すると母セシルと共にその場を離れた。
「……リューのところの家族って、みんな凄過ぎるから、ハンナちゃんは結婚できないのでは……」
イバルが呆れてそう漏らす。
スードも、イバルの意見に賛成なのか横でうんうんと頷いている。
「うちの家族を珍獣みたいに言わないで!──まあ、確かにうちの家族が凄いのは認めるけどね」
リューは、嬉しそうに答えた。
いや、その中でも君(主)が一番、凄いんだけど?
イバルとスードは、リューに対してツッコミを入れたいのだが、それは心の中に留めるのであった。
「こちらが、長男のタウロお兄ちゃんで、こっちが次男のジーロお兄ちゃん。──お兄ちゃん達、イバル君とスード君。僕の友人だよ」
リューは談笑していた兄達にも友人達を引き合わせた。
「スード君は、魔境の森で一緒してるから知ってるよリュー。イバル君は、魔法の才能があるとか。羨ましいなぁ」
兄タウロが、イバルの才能を羨んだ。
「僕は、回復魔法に特化してるからなぁ。イバル君の様な全魔法適正持ちは確かに憧れるね」
ジーロも、イバルの才能を褒めた。
「いえ、リュー君から聞く限り、お二人の才能はかなり優れていると想像できます。俺なんかは足元にも及ばないかと……」
イバルは謙虚にそう答えた。
その脇でスードが、力強く頷いている。
スードは、魔境の森でタウロとジーロ二人の実力をまざまざと見せつけられているから、その頷きにも力が入っていた。
「お二人は主のお兄さんだけあって、凄い実力を持っています。ジーロ様と自分は歳が同じなので、その実力差に主との剣術大会での試合以来のショックを受けました」
スードは、どうやらぐうの音も出ない程に兄達に負けたのかもしれない。
リューは、
お兄ちゃん達も容赦ないなぁ。
と、自分の事はさておき、呆れるのであった。
そんな家族団らんでやり取りが沢山行われていると、夜も深まり年越しの瞬間が訪れた。
そのタイミングで、外で花火が上がる。
新年を迎えた合図の花火だ。
「「「「新年あけましておめでとう!」」」」
年越しまで起きていた家族と共に、新年の挨拶をする。
リューにとって、愛するランドマーク家で十三回目の新年を、今年も家族と共に迎えるのであった。
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