第275話 期末でしたが何か?

 今年一年の学園生徒の集大成とも言える期末テストの時期が訪れた。


 リューやリーンはもちろんの事、エリザベス王女も密かに上位二人の一角を崩す為、このテストには気合を入れて臨んだとか。


 一週間に及ぶテスト期間を経て、今日はついにその結果発表がされる事になった。


 結果は以下の通り。


 1位リュー・ミナトミュラー

 2位リーン

 3位エリザベス・クレストリア

 4位イバル・コートナイン

 5位ナジン・マーモルン

 6位シズ・ラソーエ

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 16位ランス・ボジーン

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 55位スード・バトラー


 前回の中間テスト同様、上位6位まで王女クラスが独占するという結果に終わった。


 こうなると上位4人が注目されがちであったが、今回のテスト結果は6位のシズまで注目の的であった。


 1位と2位のリューとリーンはもちろん圧勝という形であったが、点数は表示されていないので、生徒達にはそれはわからない事だったのだが、何となくこの二人は不動なのだという暗黙の了解が生徒達の間では出来つつあった。


 そういう意味では、3位のエリザベス王女にも言える事であったが。


 生徒達としては、この3位まではもう、卒業まで変わらないだろうという、感覚が麻痺した状態になっていた。


 そうなると、その下からの順位が気になるところで、4位に今回、そこを守り続けていたナジンを抜いて、イバルが滑り込んで来た。


 これには、張り出された結果を見た生徒達に注目される事になった。


「イバル君、本当に優秀なんだな」


「ナジン君は、剣術大会でも、魔術大会でも好成績だったし、イバル君も凄かったからな……。どちらが上になってもおかしくない順位だ」


「お前ら、6位にも注目しろ。あの魔術大会優勝のシズさんも凄いだろ!上位を脅かすのはシズさんかもしれないぞ?」


 生徒達は自分の成績の事をさておいて、この上位グループの熾烈な順位争いを解説し始めるのであった。


 確かに、シズの魔術大会における王女を破っての優勝は鮮烈で、観戦した者の度肝を抜くには十分であった。


 シズは前回の中間テストも6位だったのだが、注目はされていなかったので今回は一番目立っていた。


「僕はもう注目されなくなったか……」


 がっくりと肩を落とすリュー。


「リューの場合、若干12歳で準男爵の爵位持ちだからな。それだけでも驚く事なのに成績まで段違い、魔術大会は圧倒的過ぎて外されるレベルだからな。リーンもエルフの英雄の娘の肩書でも十分なのに美女で同じく桁外れの能力持ちだから、二人には他の生徒はみんな驚き疲れたんだよ。あははは」


 イバルが、落ち込むリューを指摘すると笑うのであった。


「そうなのかな……?」


 リューは残念そうにした。


「それより、イバルとナジン、シズの3人が今、普通クラスでは人気らしいぞ!」


 ランスはそう指摘すると羨ましがった。


「むむっ。それは羨ましい……」


 同意するリュー。


「主は別格です」


 と、背後で聞いていたスードがフォローする。


「どうでもいいよそういう人気とかは」


 と、達観するナジン。


「……そうなの!?ちょっと恥ずかしい……」


 と、照れるシズ。


「俺はリューのところでお世話になっているからな。成績もそれで上がってるし、そういう意味では人気とかは全てリューのおかげでしかないから、興味ないかな」


 イバルは、リューへの義理に拘っている様だ。


「私はこのままだと万年3位のままで卒業しそうだけどね」


 と、ここにエリザベス王女が話題に入って来た。


「なんだかすみません……」


 と、謝るリュー。


「それは、リズに対して失礼だから言わなくていいのよ」


 と、リーンが珍しくリューを強く注意した。


「ふふふ。ありがとうリーン。私は大丈夫よ」


 とエリザベス王女は笑顔で答えた。


「最近の王女殿下のこの隅っこグループでの馴染み方が凄いな」


 と、ランスが指摘した。


「リズは、私達の友達なんだからいいじゃない」


 リーンはそう指摘すると代弁した。


「……リズは、友達」


 それに強く頷くシズ。


 その言葉にエリザベス王女はまた、嬉しそうに「ありがとう」とお礼を言った。


「そうだね。それに平等というのがこの学校での校風だからね。良い事じゃない」


 リューはそう言って、さっきの失言を取り戻そうとするのであった。


 そして、何か思い出した様にリューは続けた。


「そうだ、王女殿下。最近うちで作った新酒の出来がとてもいいので、ランスのお父さん、ボジーン男爵を通して陛下にお届けしますって伝えてよ。等級が三級だから王家で飲んで貰えるのか心配ではあるけど……」


「そう言えば、ミナトミュラー君は、酒造ギルドに入会できたのだったわね」


 エリザベス王女は良く知っている。


「ギルドで許可を貰えたのが三等級までの酒造だから、新酒を作るしか道がなかったんだけど、どうにか形になったんだよ」


 リューは酒造ギルドの内部事情を何気にアピールする。


 だが、事実なので嘘は言っていない。


「……三等級。──わかったわ。父に伝えておくわね」


 エリザベス王女は、快く頷いてくれた。


「おいおい、リュー。王女殿下を伝言役に使うんじゃないよ」


 ナジンに当然のツッコミを入れられるリューであった。


 すると、隅っこグループの面々から笑いが起きて和やかな雰囲気に包まれるのであった。

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