第200話 続・一家の報告ですが何か?
竜星組の報告も多岐に及んだ。
債権取り立て代行や、賭博場の運営、管理もある。
マイスタの街内だけでも、『闇商会』、『闇夜会』との間でいざこざになり易いし、王都の方で運営している賭博場ともなると、顧客には庶民から豪商、貴族までおり、中々これが大変なのだ。
他にもチンピラグループとのトラブルも跡を絶たない。
下っ端同士は、血の気ばかりが多い若者が多く、組織の大小に関係なく喧嘩になる事がある。
その辺りの小競り合いは流石にマルコも部下に任せている様だが、時には騒動が大きくなる事もあるから、時折報告は受けていた。
さらには、露天商の取りまとめ、それら関係店からのみかじめ料の回収もあり、これも縄張りの境界線上では、小さい争いが絶えない。
もちろん、竜星組は王都とその近辺では一番の勢力なので、まだトラブルとしては解決が容易な方ではあった。
現在、王都の主な勢力は、『竜星組』、『闇商会』、『闇夜会』、『黒炎の羊』、『月下狼』だが、先の大抗争でどこも大小の傷を負っており、他の中小の勢力がここぞとばかりに力を伸ばしつつある。
そこに王都でも武闘派勢力であった『上弦の闇』の壊滅だ。
このグループの縄張りはまさに今、数多のグループの取り合いの場になっていた。
『上弦の闇』を潰した当の本人である『竜星組』は、その縄張りを取らずに放置したのでさらに争いに拍車をかける事になっている。
リューは縄張り争いではなく、うちにちょっかいを出した事への落とし前という理由で潰したので、敢えて縄張りは取らなかったのだ。
その為、竜星組は新参の勢力だが、王都中の裏社会のグループから前身の『闇組織』以上に一目置かれる存在になりつつあるのであった。
こうした背景もありつつ、竜星組の報告はまだ進む。
「現在、『上弦の闇』の縄張りは地元の中小のグループが取り合いをしていますが、抗争で被害が大きかった『月下狼』が『上弦の闇』の後釜に座って勢力を回復し『黒炎の羊』に並ぼうと躍起の様です。後釜争いは当分続きそうですが、そこで敗れて行き場の無い悪党どもの取り纏めも若の命令通り順調に進んでいます」
「うん、それなら良かった。負けを知ってる連中は勝って猿山の大将気取りの血の気の多いのよりは言う事聞きやすいからね、うまく仕事を割り振ってあげて」
「はい、用心棒や、人材派遣など仕事を与えてますが、素直なものです」
負け組は地元に残れず、人知れず地下に潜るか、勝ち組の傘下に入りこき使われるしか道が無いのだ。
争いに負けた直後では勝ち組の傘下に入りたくないのがチンピラの心情である。
そこに、竜星組という一大組織から下っ端で良いならうちが面倒を見てやるぞ?と、声を掛けられたらどうだろう?
どん底から一気に天国の気持ちになるに決まっている。
どん底から引き上げて貰って、恩を感じないチンピラはほとんどいないのだ。
リューは前世の経験を上手く生かして悪党、もしくは元悪党を上手く手下に組み込んでいっている。
竜星組を任されているマルコも、リューの命令通りにしているのだが、短期間で急成長しつつある竜星組にやりがいを感じているのであった。
「じゃあ、どちらとも報告は終わったみたいだね。今後の方針だけども、僕の寄り親であるランドマーク家が大きくなる事が第一目標である事は変わらない、それはいいね?」
「「「「へい!」」」」
リューの言葉に部屋に居る全員が同意の返事をする。
「その上で、ミナトミュラー家も大きくする。これもいいね?」
「「「「へい!」」」」
「ミナトミュラー商会は、ランドマーク商会とは別の路線で大きくします。竜星組はこれまでの裏社会での組織、グループとはまた違う路線を進む予定です。カタギの方への迷惑はご法度、あくまでも裏社会での正義に則った組を目指します。その為にも、みんなの力が必要です。僕に力を貸して下さい」
リューがその場で頭を下げる。
「わ、若!頭を上げて下さい!俺たち全員、若の為なら何でもしますぜ。若の目指す道は俺達の目標です。このマイスタの街の希望と言っても良い。そうだなみんな?」
ランスキーがマルコ以下、全員に賛同を求める。
「もちろんですぜ若!」
「当然です」
「どこまでも付いて行きますぜ!」
場が1つにまとまった。
「ランドマーク家とミナトミュラー家の発展と安泰を願って乾杯しましょうリュー!」
リーンも場の雰囲気に呑まれたのか賛同するとリューに音頭を促す。
「……そんなつもりはなかったのだけど、そうだね。コーヒーだけどみんなカップを持って」
全員が、カップを手にする。
「主家であるランドマーク家と与力であるミナトミュラー家の発展と安泰を願って乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
乾杯をすると全員その場でカップに残っていた少量のコーヒーを飲み干した。
この乾杯が、毎回、会合をする度に行われる一つの儀式になっていく。
そして、面白半分でリューは盃を作らせてそれで乾杯を行う事にするのだが、部下達はこの盃を直接リューから受け取るのが最大の名誉と思うようになるのであった。
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