第198話 期末も無事終えましたが何か?
一年生の王立学園学期末テストは予定通り行われ、ほぼ想像通りと思われる順位が発表された。
1位 リュー・ミナトミュラー
2位 リーン
3位 エリザベス・クレストリア
4位 ナジン・マーモルン
5位 イバル・コートナイン
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7位 シズ・ラソーエ
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・
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29位 ランス・ボジーン
上位四人は変わらず。
これには、みんな納得した。
前回の中間テストで、その実力を理解しているからだ。
だがその後に続く五位イバル・コートナインの名は、他の一年生をざわつかせた。
「え?エラインダー公爵家を追放されたのに、何で五位なの?」
「おいおい……、エラインダー公爵家の力がまだ、順位に反映されてるじゃないか」
「今はコートナイン男爵家の養子だから、そんな力ないだろ?」
「じゃあ、実力……なのか?」
「実技のテストの時、やってるところ見たけど、全系統の魔法を操ってたぞ?それに、あのリュー・ミナトミュラー騎士爵のグループにいるんだから、実力があるのかもしれないぜ?」
「全系統!?それって滅多にいないとされる希少な才能じゃん!……確かにエラインダー公爵家時代にそんな謳い文句で入学してたみたいだけど、正直、嘘だと思ってた……」
「俺もそう思ってた……。そんな才能あるのに、廃嫡されて養子に出されるって……、親のエラインダー公爵って馬──」
「それ以上はやめとけ。それはきっと言動に問題があったからさ」
「その言動も、謹慎中に良くなったって聞くぜ?」
「馬鹿!人がそんな簡単に変わるかよ」
「でも、そうじゃないと、ミナトミュラー君のグループに入れないでしょ?」
「……そこだよなー。俺もリーン様と一緒のグループに入って仲良く話したい……」
「話が逸れてるよ!」
と、一部関係ない話も混ざっているが、イバル・コートナインの五位という順位は大半の生徒が驚きを持って受け止め、話題の中心になっていた。
「ふふふ。みんなびっくりしてるよ」
リューは自分の事の様に、喜び楽しんでいた。
期末テストまでの間、イバルが相当優秀なのは一緒に勉強していて実感していたのだ。
「くそー!俺もかなり頑張って順位上げたのに、イバルが話題を独り占めかよ!」
ランスは悔しがる。
ランスは中間テストで良い成績を取ってからというもの、勉強が楽しいのか普段からきちんと真面目に授業を受けていて、伸び率でいったら、断トツであった。
それはそうだ。
元は、補欠入学の身である。
それが、今や、上位である二十九番目の成績とあっては相当な自信になる。
「ランスはまだ、伸びしろがあるんだから今後も頑張れば良いじゃない」
リーンが珍しくリュー以外のメンバーを励ました。
「……ナジン君が今後はイバル君に順位を抜かれるかも……」
シズが幼馴染のナジンをからかうような事を言う。
「今回は勝てたけど、確かに2学期はどうなるかわからないな。イバルは相当優秀なのはわかったよ」
ナジンは冷静に今回の結果を受け止めている様だ。
シズの珍しい、からかうような言葉も幼馴染として慣れているのか、スルーしてナジンは答えた。
シズは、無反応のナジンに頬を膨らませたが、何も答えずへそを曲げるのであった。
「……リュー式魔法基礎を教えて貰えたから良かっただけだよ俺は。そうでなければもっと順位は下だったよ」
そう答えるとイバルは謙遜した。
こういうところも他の生徒が別人かと驚く態度であった。
イバルは実の親に廃嫡され、養子に出されるという経験をして、まだ十二歳の子供にはかなり大きな心の傷のはずだったが、謹慎期間中にそれを乗り越え、何枚も脱皮して成長を遂げた様だ。
リューや王女殿下に罪を許され、リューのグループに友達として迎えられた事も、その一助になっていただろう。
イバルは文字通り、生まれ変わったのかもしれなかった。
だが、このイバルの変貌ぶりを面白く思わない者はいた。
元エラインダークラスの一部の生徒である。
散々公爵家の力を背景に自分達をこき使っておいて、何事も無かったかのように舞い戻り、ちょっかいを出させた生徒、リューと仲直りしているのだ。
今は男爵という下級貴族の養子だから、戻った時点でいじめるつもりであったが、王女クラスに移動し、それどころかこの学年では王女の次に偉い騎士爵持ちであるリュー・ミナトミュラーの庇護下に入ったのでそれもできない。
それに、一番の被害者であるリューがその罪を赦したとあっては、表立ってイバルを批判するわけにもいかず、マキダールと一部の生徒はそういった鬱屈とした思いを抱いて、今回の期末テストの結果を受け止めるのであった。
生徒達の沢山の想いが錯綜する期末テストが終わると、次に来るのは夏休みである。
その夏休みはイベントが沢山あるから楽しみであった。
そしてその先の夏休み明けに来るランドマーク領の豊穣祭には今年、お客側としてリューは参加するつもりでいた。
もちろん、今年の豊穣祭の出し物については、家名を貰う前に計画していたので、準備は整っている。
その為に、謹慎中にランドマークの屋敷の地下に地下3階を作って準備していたのだ。
あとは、兄タウロと妹ハンナがその準備を引き継いでくれているはずである。
リューはランドマーク領の領民が、アレを食べて驚く様子を想像すると楽しみでいっぱいであった。
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