第197話 先輩面ですが何か?
王女クラスを騒然とさせたギレール・アタマンの土下座姿から数日。
リューとリーンは何事も無かったかのように学園生活を過ごしていた。
いつもの隅っこグループと新たな友人、イバル・コートナインの6人で話に花を咲かせていた。
「……イバル君は今回の期末が最初のテストだけど勉強大丈夫?」
シズが、意外にも自分からイバルを気にかけてか話を振った。
「うーん。どうだろう……。一応、エラインダー家に居た間は家庭教師が付いてて学校の授業よりは先の方まで勉強していたのだけど、中間テストの内容を教えて貰ったら難しかったんだよね。みんなあんな内容を授業で勉強してたのかい?」
イバルは、勉強に自信があった様だが、前回の問題内容を知って驚いている様子だった。
「あの内容は気にしなくていいみたいだよ?他のクラスメイトにも聞いたけど、あの難しい内容の問題を解けたのはここに居るリューとリーンだけみたいだったようだからさ。王女殿下も頑張ったみたいだけど二人ほどではなかったらしいよ」
ナジンが前回のテスト問題がレベルが高いものだった事を指摘した。
「そうそう。平均点も低かったみたいだし、心配の必要はないぜ?それより、今回のテストはイバルが良い線いきそうだから楽しみだな」
イバルが七光りで入学した口だと思っていたのが、実技の授業で高いレベルの結果を残したので、ランスは面白がっていた。
「そうね。正直イバルは親の七光りで入学試験2位だと思っていたから、意外に出来て驚きだったもの」
リーンは歯に衣着せぬ物言いでイバルを評価した。
「あはは……。そう思われても仕方ない。でも、俺も親や家名のプレッシャーと戦いながら努力はしていたんだよ。それでも、魔法や剣の実技では、ランスやナジン、シズが凄いのには驚かされたよ。リューとリーンが凄いのは散々聞かされてわかってはいたけど」
「……私達はリュー君とリーンちゃんに教えて貰ってるからね。……勉強もテスト対策で教わったから好成績残せたの、おかげで私は八位だったよ……!」
シズが前回の順位八位を誇って見せた。
「ははは!今回はイバルが入るからシズや自分、ランスは順位が下がる可能性があるから頑張らないとな。人の心配している場合じゃないぞ?」
ナジンがシズに指摘する。
「……イバル君。今回は無理しないでいいよ?」
シズが珍しく冗談を言う。
「ははは!さっきは心配して上げてたのに」
そんなシズの冗談にリューが笑う。
「おいおい。リューも下手をしたらリーンに抜かれる可能性があるんじゃないか?それに王女殿下もすぐ下に居るわけだし、油断してるとナジンも迫って来るぜ」
ランスが楽観的なリューに危機感を持たせようと指摘した。
「それはないわ。リューの実力はみんなわかってるでしょ?私だってリューには実技の方では敵わないもの。勉強の方はセシルちゃんが毎回宿題出すし、努力しているリューが負ける事はないわよ」
リーンが自分の事の様にリューを自慢する光景はいつも通りであった。
「ははは。じゃあ、俺はみんなに追い付けるように頑張るよ」
イバルは、楽しいやり取りの中に自分も入れている事に喜びを感じつつ、努力を誓うのであった。
「……そこでイバル君の魔法の使い方についてなんだけど──」
リューがランス、ナジン、シズに教えた魔力の基本の練り方について、提案する。
来た!
ランス達も基本からやり直した経緯があるので、イバルも指摘されるだろうと思っていたのだ。
「ふふふ。イバル君よ。君も俺達同様に基本から学び直すがいい」
ランスが、イバルの肩に手を回し、勿体ぶって言う。
「?」
イバルは、どういう事なのかわからずに困惑する。
「リューのやり方を習得すれば、魔力の無駄が省けて効率がよくなり、練習も捗るのさ。ただし、慣れるまで時間がかかるんだ」
ナジンがこれから苦労するであろうイバルに軽く説明する。
「……イバル君も慣れれば、中級魔法を早い段階で使える様になるよ」
シズが一足先に中級魔法を使える様になった先輩としてイバルに教える。
「え?みんな中級魔法が使えるの!?」
イバルは驚く。
自分も家庭教師から教わっていたが、使える様になる前に養子に出されていたのだ。
「俺は最近やっと使える様になったばかりだけどな!でも、だからこそ期末テストが楽しみなんだ」
ランスも優秀そうなイバルに先輩面出来て嬉しそうだ。
「……どんなやり方か教えてくれる?」
イバルはリューの手を掴むと目を輝かせ、嘆願するのであった。
数日後。
「まだ、基本だけど出来る様になったよ。みんなありがとう!」
イバルがみんなの前で火の下級魔法を手の平の上に出して成功を見せて感謝した。
「飲み込みが早いよイバル君!これなら中級魔法もすぐに使える様になるかもね」
リューは感心して頷く。
そんな中、複雑な思いで見る者がひとり……。
は、早すぎる……、俺が先輩面出来たの数日だけかよ!
ランスはイバルの習得の早さにがっくりと膝を着くのであった。
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