第182話 新体制ですが何か?

 リュー・ミナトミュラー騎士爵家の新体制での船出がなされることになった。


 もちろん、表と裏のトップはリューが務める。


 ナンバー二はリーン。


 この時点で、事情を知らない者には女子供がてっぺんで良いのか!?と、心配になるところだが、そこに付き従うのは、誰もが納得の顔ぶれである。


 表の組織であるミナトミュラー商会の実務を担当するのはランスキー。


 裏の竜星組の母体となるイル・カモネとルッチの元手下達をまとめるのはマルコになる。


 最初、ルッチの元手下達の一部は、マルコとその手下を最弱と馬鹿にしていたマイスタの住民ではない連中だったので、従う事を良しとしなかったが、ルッチの元手下にはマイスタの住民も多く、そこが中心となって鉄拳制裁を行うとその雰囲気は一変した。


 元々、マイスタの街の住民である手下達の強さは確かであったが、ルッチの無理難題に難色を示して素直に従わないから敬遠され、ルッチのグループでは隅っこに追いやれていただけだったのだ。


 だから、そこを中心に戻すと他の連中も強いものに従うのがこの裏社会のルールである、まとまるのも早かった。


 マルコはこうして、『闇組織』解体後、突然現れた裏社会の新たな最大勢力『竜星組』の中心幹部として組織を任される事になったのであった。



 裏社会でも、新たな組織『竜星組』の名はすぐに広まった。


 ただの小さなチンピラグループならすぐに大きなグループが潰して縄張りごと吸収してそれまでなのだが、『闇組織』程ではないにしろ、その『闇組織』で最大勢力だったルッチと同じ幹部であったマルコのグループが合わさった組織である。


 抗争を繰り広げていた三連合と同等かそれより少し大きいくらいだ。


 現在、そういう事で、最大勢力の『竜星組』を筆頭に、王都にはノストラが結成した『闇商会』、ルチーナが立ち上げた『闇夜会』と続き、三連合を形成した筆頭の『黒炎の羊』、抗争での痛手が大きく規模がかなり縮小された『月下狼』、『上弦の闇』と続く。


 三連合はこのまま一つのグループになって他の組織に対抗すれば良さそうなものだが、被害が大きかった『月下狼』と、『上弦の闇』はこのままだと『黒炎の羊』に吸収されかねないと危惧すると、抗争終結を理由に連合はすぐ解体されたのだった。


 そんなわけで、突然現れたリューが密かにトップを務める謎の組織『竜星組』は王都の裏社会にも幅を利かせる事になるのである。




 マイスタの街の裏事情が解消されたリューは表の顔であるミナトミュラー商会の仕事を請け負う為にランスキーが東奔西走していた。


 まだ、ミナトミュラー商会は知名度ゼロである。


 なので、先ずは地元であるマイスタの街の家の建築を安く請け負う事から始めた。


 その辺りは、マイスタの街で顔が広いランスキーであったので、営業は実を結び、次々に建築依頼が舞い込む様になってきた。


 今は、こうした地道な実績作りが大事だろう。


 リューは、ランスキーにその辺りは任せる事にするのであった。




 裏の顔である竜星組の中心であるルッチの元手下達は農家が多い。


 その者達を中心に違法薬物の原料になる『葉っぱ』を育てていたのだ。


 そこで、リューはその『葉っぱ』を育てる技術を活かす事にした。


 ルッチが運営していた畑の施設をそのまま、コヒン豆畑にする計画だ。


 南東部のランドマーク領と違って環境が違うので普通に育てるのは難しいが、『葉っぱ』を育てる為に室温管理された平屋の大きな建物郡の施設と技術があるのでコヒン豆を育てるのも不可能ではないと判断したのだ。


 平屋の天井は開閉式になっていて日中日差しを取り込むのも可能であり、十分な施設と言えた。


 この施設はマイスタの街の北側の森にあるので、そことの出入りを出来る様にする為に北側の壁に穴を開け、門を作る事になった。


 この作業は、表の顔であるミナトミュラー商会に任せた。


 ついでに、その城門から北の森内の畑施設までの道も整備し、商会の実績づくりにするのであった。


 マイスタの街は、こうして街の稼ぎ手であった『闇組織』の解体で今後を心配されたが、すぐにその後の代わりとなる仕事が行われて住人達も一安心するのであった。


「ふー。ルッチが貯め込んでいた財産を投入して需要が生まれているから、街が活気づいてきたなぁ」


「王都でも仕事が取れる様に、ランスキーが王都支店を作りたいって言ってたわよ」


 リーンがランスキーの提案を相談してきた。


「うん、王都にはランドマークビルの様な建物を作りたい商人やお金持ちは多いだろうからね。まずは実績作りで、王都に適当な土地を買ってビルを建て、そこからうちの技術を発信していこう」


 リューはランスキーの案を採用すると、土建屋としての地位を築く為に頭を巡らせるのであった。

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