第127話 新たな人気店ですが何か?
木工職人に木工商品製作の合間に竹とんぼを大量に作って貰い、色付けして店内に置いて準備万端になった。
そして、竹とんぼを外で実演して飛ばして見せると、他の商品を買いにきたお客は驚きで一様に口をポカンと開けて竹とんぼが飛ぶ様子を眺めるのだった。
そして、実演した店員が、
「木工細工店におきまして、たったの銅貨二枚でお買い求め頂けます!数は沢山用意していますが、売り切れましたら申し訳ございません!」
と、宣伝した。
すると、集まった群衆はその安い価格にわっと二階の木工細工店に押し寄せた。
あっという間に、人気が無かった店内は人に溢れた。
そんな中、目的の竹とんぼを買うのを並んで待っていたお客が、「これはなんだ?」と、竹細工に、木工細工に興味を持ち、手に取って確認する。
「うん?中々良さそうな箱だな……。この材質は……、高級なチーク材じゃないか!こんな安い値段で売っているのか!?」
「このタンスは、丈夫そうな作りだし、継ぎ目の出来が見事だな……。それでいてこの価格!?安いな!」
「このかご軽いわね、竹細工?初めて聞くけど丈夫そう。安いから一つ買い物かごとして買おうかしら」
竹とんぼ効果で来店するお客は増え、親子連れの行列が木工細工店前に列を成すようになった。
そのおかげで他の商品がお客の目に止まり、徐々に売れる様になるのであった。
リューはついでに、店頭でけん玉も実演してみせ、けん玉の技『日本一周』や、飛行機→中皿→ダウンスパイクという派手に見える技を披露するとこれも子供達にウケて竹とんぼとセットで売れるのであった。
こうして木工細工店は瞬く間に行列を成す人気店のひとつになった。
そこでリューは、さらなる一手に出た。
それは、将棋の実演だ。
一応以前からランドマーク領内の木工細工店で作って売り出していたのだが、ルールの難しさからあまり人気が無かった。
だが、客層が上流、中流階級ならば少し難しいくらいでも、興味を持ってくれるかもしれない。
そこで、「頭脳派向け戦略ゲーム・ショウギ」と銘打って貴族や武官、知識人など、インテリ層の興味をくすぐる戦略に出たのだ。
もちろん、将棋盤と駒の他に、ルールが書かれた冊子を二つセットで入れて、初心者がそれを見ながら打てるようにした。
知識人を自認する人々は、ランドマークビルの正面に立てかけられた、頭脳派向け戦略ゲームという宣伝文句が書かれた看板に目を止め、店員が実演で将棋を指してるのを覗き込む。
そんな覗き込む人々に他の店員がルールが書かれた冊子を配る。
「……ほうほう。一つ一つの駒の動きが違うのか」
「これは興味深い……。確かにこれは難しいから頭を使うな」
「むむ!そこになぜ打つのだ?……あ、そういう事か!数手先を読んでの一手だったか…。これは奥が深いな!」
実演する店員を囲んで大の大人が、同伴していた子供そっちのけで頭を悩ませてああでもない、こうでもないと議論を始めた。
こうして少しずつ、だが確実に将棋は「ショウギ」としてインテリ層を中心にじわじわと売れ出し始めるのだった。
そんな活気溢れる放課後を連日送っていたリューであったが、学校では緊張感が増していた。
イバル・エラインダー特別クラスの嫌がらせを三度も撥ね退けたので、イバル当人がリューを近いうちに自分の手で懲らしめると息巻いていたのだ。
何でもその為に大金を叩いて隠し玉を準備しているので、それが整い次第リューは痛い目を見るだろうと宣言していた。
リューは公爵家の子息を完全に怒らせた事で、さすがに危機感を募らせた。
「エラインダー公爵自身はどんな人なの?まさか子供の喧嘩に口を出してきたりしないよね?」
「……どうだろう?公爵は前国王陛下の弟の息子で、もしかしたら国王になっていたかもしれない人物だからね。イバル・エラインダーの第三王女殿下に対する不敬はもしかしたら父親譲りの可能性もあるからなぁ。聞いた話では、可もなく不可もない人物らしいけど」
リューに聞かれたランスは父親からの聞きかじりと思われる情報を口にした。
「確かに、あんまり話を聞かないな。先代は野心家だったと言うのは有名な話だけど」
ナジンが不穏な情報をリューにもたらした。
「……パパは、エラインダー公爵は何を考えてるかわからないって言ってたわ」
とシズ。
みんなの話をまとめると、子供の喧嘩に口を出してくる可能性は無きにしも非ずということだろうか?
リューは、もしもの時の為に父ファーザにも報告しておいた方がいいかもしれないと思うのだった。
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