第125話 噂話ですが何か?
イバル・エラインダー特別クラスの生徒に絡まれてから、数日がたった。
イバルの取り巻きを返り討ちにしたのだから、イバルがすぐに出てくると思ってリューは警戒していたのだが、そんな事はなかった。
その代わり、移動教室の間にリューの教科書が紛失したり、いつもの席に落書きがされていたりと陰湿な嫌がらせが始まった。
だがこれは、リーンの固有スキル『追跡者』の能力で足跡や魔力残滓などを調べ、すぐに犯人が特定された。
リューとリーンは担任教師にこれを報告、すぐに隣のクラスのイバル・エラインダーの取り巻きの一人が、前回の普通クラスの生徒をけしかけた問題にも関わっていた事が判明して、三日の停学処分を受けた。
たった三日の処分だが、前回のトラブルも含めてこの情報はすぐに広まり、いよいよイバル・エラインダーとその特別クラスの評判はどん底の一路であった。
たった一人の男爵家の三男に嫌がらせをしながら、全て失敗しているのだ。
やり方も陰湿で貴族らしくないのだから当然だろう。
それと同時に、大貴族の息子を返り討ちにしているリューの株が上がった。
「特別クラスにいるリューって子。あのランドマークのところの三男らしいよ?」
「ランドマークって?」
「え、知らないの?巷で有名になってるお菓子の『チョコ』を販売してるところだよ!?」
「食堂でじゃんけん大会してたやつか!俺、残り十二人まで残ったのに、次で負けて食べられなかったんだよな」
「ともかくそのランドマークと言えば、今、王都の上流階級では有名になってるらしいよ」
「でも、三男なら家名を継げないから、ランドマークって言っても関係なくないか?」
「あ、確かに。でも、おかしくないか?三男なのに特別クラスにいるって」
「……本当だ!俺達と同じ普通クラスには侯爵の五男や、伯爵の三男だっているのにな」
「噂では、そのリューって子。王家の推薦状で入ったらしいよ」
生徒達の会話に、他の生徒が割り込んできた。
「「「そうなのか!?」」」」
話をしていた生徒達は驚く。
「俺と同じ歳で受験して落ちた子が、面接の時にリューって子と一緒だったらしいんだけど、その時に面接官が言ってたって」
「まじか!?」
生徒達はさらにざわつく。
「意外に知られてないけどリューって子、王女殿下、イバル・エラインダーに続いて合格順位三位だったらしいよ?」
「本当かよ、その話!?」
「俺、当日合格発表見たけど、一位と二位が王女殿下とエラインダーの印象が強くて三位は覚えてないなぁ」
「あ、俺もそう」
「私も聞かない名前だったから記憶に残ってないわ」
「でも、それらが事実なら特別クラスにいるのも理解できるし、何よりイバル・エラインダークラスの嫌がらせを撥ね退けたのも実力って事じゃない?それはそれで痛快だよね!」
「ホントそれな!」
「わかりみが深い……」
「それに一緒にいつもいるリーンちゃんが可愛い」
「ちなみに彼女はリューって子に続いて四位で合格したらしい」
「それは知ってる」
「それは常識」
「ネタが古いぞお前」
「リーン様の情報は普通クラスでは共有されつつあるからな」
「で、リューって子の顔知ってる奴いる?」
「覚えてない」
「見た記憶ないな」
「結構イケメンらしいよ」
「そうなの!?私、狙おうかしら……」
「本当に成績優秀なら、官吏や宮廷魔法士団、騎士団、研究所とかいけそうだから、狙い目ではあるかもね。でも、男爵の三男はネックだよな」
「商人の三男の方がまだ、希望あるよな」
「だな。商人なら実家を手伝う事も、支店を任せて貰ったり暖簾分けとかも可能性あるもんな。男爵程度の三男じゃ、家を追い出されるだけだから、本当に実力ないと生きていくのも一苦労だろ」
普通クラスの生徒達の噂話で持ち上がり、一旦は株が上昇したリューであったが、すぐにその評価は落とされるのであった。
「ハックション!」
教室で班のみんなと話していたリューはくしゃみをした。
「風邪か?」
ランスがリューに聞く。
「いや、寒気はしないから、もしかしたら僕の噂話かな。ははは」
リューは冗談でそう答えると笑ったが、的中してるとは夢にも思わないのであった。
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