第123話 狙われましたが何か?
放課後。
その日は、ランス、ナジン、シズはランドマークビルに立ち寄る事なくまっすぐ帰るというので学園の玄関前で魔法の練習後、馬車が各自来ると帰っていった。
リューとリーンはそれを見送ると、通りに向かって歩いていく。
すると後ろから駆けてくる生徒達がいた。
リューは気にはしてなかったが、リーンは気配が自分達に向いてる事を察知してリューに、
「リュー……!あの子達、私達に用があるみたい気を付けて」
と警戒を呼びかけた。
「え?」
リーンの発言にふり返ると六人の生徒がこちらに猛然と走って突っ込んでくる。
リーンの言う通り、五人の生徒がリューを取り囲んだ。
一人は一緒のリーンの手首を掴んで動きを封じようとした。
だが、リーンは掴まれた手首を返して相手の手首に添え、関節を極めると生徒をそのまま地面に引き倒して抑えつけた。
「私に触れようなんて五百年早いわよ?」
リーンが啖呵を切った。
残されて五人は計画が最初からとん挫したので動揺したが、目的であるリューをそのまま狙う事にした。
「お前が、食堂で王女の自作自演で行われた人気取りの片棒を担いだ事はわかってるんだ!おとなしく俺達の袋叩きになっときな!」
この集団のリーダーらしき生徒がそう言うとリューに殴りかかってきた。
「殴る前に警告するのは頂けないよ?」
リューはそう答えると眼前で拳を手で裁いて逸らす。
勢い余ってリーダーは体勢を崩す。
姿勢を立て直そうとしたところにリューが足を出して転ばせた。
転ばされたリーダーは地面に顔面から突っ込んで顔が血だらけになる。
「何の事を言ってるのかよく理解出来ないけど、喧嘩は先手必勝。奇襲で相手をまずは戦闘不能にしないと駄目だよ?その前に余計な事をしゃべっちゃ、奇襲の意味がないじゃない。まあ、
リューは前世では喧嘩の場数は沢山踏んでいる。
こちらでも魔物相手で経験は積んでいるが、対人の喧嘩はまた別の感覚があるのだ。
そしてリューは軽く説教を始めた。
「ちょっと、みんなそこに正座しな。こんな周囲の視線がある表で仕掛けるのも頂けないし、それにもう少し人を集めないと。僕とリーン相手に6人は数の有利とは言えないよ。それに君達、喧嘩の経験無いでしょ?この子がやられるのを見て、引いてたら駄目だよ。みんなで同時にかかってこないと!それともタイマン勝負のつもりなの?それじゃ人数有利がいかせないでしょ?」
リューは説教しながら顔面血だらけのリーダーをポーションで治療して上げる。
「君も、さっき言ったけど、殴る前に余計な事しゃべっちゃ駄目だよ?喧嘩に勝ってから言うべき事は言わないと。プロ相手に素人丸出しの喧嘩は命取りだからね?本当ならここで僕が君達に二度とそんな気を起こさせない様にきっちり落とし前つけさせるところだけど今回は見逃して上げる」
リーダーの顔の血をリューはハンカチで拭き取ると、
「次も仕掛けてきたらその時はわかるよね。……どう?言いたい事は勝った後に伝える事で相手にちゃんと伝わるでしょ。じゃあ、もう二度とこれに懲りてこんな事しちゃ駄目だよ」
リューの言葉に、リーダーはリューの笑顔の下に潜む言い知れぬ雰囲気に怖さを感じて気圧され、何度も頷くのだった。
「じゃあ、さっき言ってた事を聞かせて貰っていいかな?誰が誰の片棒を担いでるのかな?何でそんな話になってるのかも聞かせて貰えると助かるんだけど?」
リーンが押さえ込んでいた生徒を解放して上げると、六人は二人の前で正座して答える。
「イバル様が言うには、食堂での王女殿下の出来事は自分の人気取りの為のものだって……」
「同じクラスの生徒をあんな面前で呼ぶ必要はないから、名前の出たランドマークもその自作自演の共犯者、もしかしたら知名度を上げたいランドマークも主犯の一人かもしれないって、ライバ君が言ってました……」
「それで、まずは下っ端のランドマークから血祭りに上げようという事で俺達普通クラスの生徒が集められて……」
正座させられた生徒達は洗いざらい話した。
「……何だか酷い言いがかりね」
話を聞いて呆れたリーンが感想を漏らした。
「僕達に
リューは涙ぐみながら不本意な形でランドマーク家の名が出た事を悲しんでいた。
「まあまあ……」
リーンがリューを慰める。
先生達が気づいて駆け付けるまでの少しの間、生徒達はリューの愚痴を正座して聞かされるのであった。
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