第98話 歓喜の渦ですが何か?
説明してくれたランス・ボジーンの言う通りなら、自分は実質一位らしい。
ゆっくりと振り向きリーンと視線が合った瞬間、二人はハイタッチすると喜んだ。
基準がわからず、合格さえ危ういと思っていたのだからこの結果はあまりに意外だった。
どうやら、怒られはしたが、別段間違った事はしていなかった様だ。
そして、ランドマーク家のタウロ、シーマ、ジーロと続いた連続一位記録に泥を塗らずに済んだ様だ。
それも、リーンもリューに続く順位だからランドマーク家が優秀な事を示せたと言っていいだろう。
そこで、教えてくれたランスにお礼を言うと、ランスもそこで正気に戻った。
「……あ、俺も合格か確認しないと!」
ランスはリューのお礼も聞き流し、自分の番号を探しに行った。
「あれ?リュー、今気づいたのだけど……。五位のライバ・トーリッターって王都に来る途中、馬車が故障した時の、トーリッター伯爵家の子息の事じゃない?」
「え?そう言えば……。やっぱり、あの子も受験生だったのか。五位って事は優秀なんだね。あ、今の自分が言うと嫌味になるか……」
リューがそう答えていると、リーンは自分達に向けられる悪意ある視線に気づいて振り返った。
リューも続いてそれに気づく。
そこには、まさに今、話題にしていたライバ・トーリッターが、リューとリーンを睨みつけていたのだった。
なまじ金髪ロングヘアーの青い瞳の美少年なので、睨みつけるその顔は鬼気迫るものがある。
あの時は、完全無視を決め込む淡泊な少年かと思っていたが、そうでもない様だ。
きっと一番になる自信があったのに、選りにも選って、ぽっと出のランドマーク男爵風情のそれも三男とその従者に負けたから屈辱だ!と、言うところだろうか?
リーンが、そのライバ・トーリッターを睨み返そうとしたので、リューは慌てて止めた。
「駄目だよ、リーン。相手は伯爵子息。それに、学校に入学する前から波風立てるのは良くないよ」
リーンをリューが宥めていると、ランス・ボジーンが、ジャンプしながら走って戻ってきた。
「リュー・ランドマーク!俺も多分合格みたいだぜ!」
「多分?ってどういう事?」
「補欠合格というやつらしいぜ!」
え?それは欠員が出ないと駄目なやつでは……。
と、思ったリューであったが、本人が喜んでいるので黙っておいた。
複雑な気分で合格を分かち合う二人に、
「私もいるんだからね?」
と蚊帳の外のリーンが二人の間に入ると、三人は笑い合うのだった。
リューとリーンは、ひとしきり会場で合格の喜びを満喫するとランドマークビルに戻った。
そして、すぐに『次元回廊』で館に戻ってみんなに合格を報告した。
「二人ともよくやった!!!」
と、大音量で祝福する父ファーザ。
「二人とも頑張ったものね、おめでとう!」
と、涙を拭いながら祝ってくれる母セシル。
「やったね!リューお兄ちゃんとリーン、おめでとう!」
と、手放しで喜ぶハンナ。
「おめでとうございます、リュー坊ちゃん、リーン!」
と、いつも冷静なセバスチャンのちょっと興奮気味な祝意。
「リュー坊ちゃんとリーンなら、合格すると思ってましたよ!がはは!」
と、いつもテンションが同じの領兵隊長スーゴ。
そこに、祖父カミーザと祖母ケイがやってきた。
「どうやら、合格したみたいじゃの。おめでとう二人とも」
と、祖父カミーザがいつもの落ち着いた感じで祝福してくれた。
「あらあら。今日はお祝いね。準備しないと」
と、祖母ケイが同じく落ち着いて、料理人達に声を掛け始めた。
「それにしても王立学園に三位と四位で合格とは、誇らしいな。一位の王女殿下と二位の公爵の子息は、やはり上に立つ者の貫禄だな」
父ファーザは上位の二人の事情を知らないので、素直に感心していた。
リューも敢えてその辺りは説明しない事にした。
リーンもそう思ったらしくリューに視線を向けると頷く。
それに本当に優秀なのかもしれない。
その辺りは実際に目にしてないのだから、ここでいう事ではないだろう。
今は祝福してくれる家族と一緒に合格を喜ぼうと思うリューであった。
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