第93話 会場が大騒ぎですが何か?
王立学園初日の筆記試験が行われ、リューとリーンも日頃の勉強の成果を発揮して無事終える事が出来た。
「リーンどうだった?僕はちゃんと解けたと思うんだけど……、何か不安で……」
夕方まで及んだ筆記試験終了後、待ち合わせていた場所にリーンを見つけると、開口一番、リューは手応えを聞いた。
「私も出来たと思う。でも、ちょっと不安よね……」
リーンも上手く行き過ぎて逆に不安な気持ちになり、リューと同じ気持ちだった様だ。
「答え合わせもしたいけど……、まだ、実技が明日残ってるし、気持ちを切り替えて明日も頑張ろう!」
リューは自分に言い聞かせる様にリーンを励ました。
リーンもその言葉に頷くと、
「そうね。明日もあるんだもの。全ては明日の実技が終わってからよね!」
そういうと本当に切り替えられるのがリーンの凄いところだ。
リューは、自分で言っておいて、まだ、筆記の結果が気になっているのであった。
実技試験は、受験者の得意分野での魔法の実技、得意分野による武芸の実技、それ以外でのスキルによる実技があり、1つだけ受ける者もいれば、多才さをアピールする為に全て受ける者もいる。
それは、個々のスキル次第で、沢山受ければ良いというものでもなく、いかに得意分野の能力でアピールできるかが重要なようだ。
リューは魔法と武芸、その他のスキル三つとも受ける予定で、リーンも同じく、三つとも受ける。
まずは魔法の実技試験だ。
二人は会場に早速入ると、他の受験者の魔法を見学する事にした。
「……あれ?威力より、魔力操作や、的へ当てる正確性が大切なのかな?」
と、リュー。
「……でも、的に当ててない受験者もいるわよ?違うんじゃない?」
とリーン。
「だよね?……あ、もしかしたら会場を壊さない範囲でする配慮が必要なのかもしれないよ?」
「そうか……!だからみんな、加減してるのね?」
二人が不思議に思うのも仕方がなかった。
受験者のほとんどが、二人にとって凄いと思える魔法を使用していなかったのだ。
リューに関しては不得意な魔法がほとんどなく、その中で突出した土魔法を使う事にしてたのだが、他の受験者と比べると、会場の地形を変えてしまう大規模魔法だったので、疑問に思ったのだった。
「一応、試験官に前もって聞いておいた方がいいかな?」
「そうね。リューの魔法は地形を変えちゃうからやり過ぎると減点されちゃうかもしれないわ。私も、加減しないと的を全て吹き飛ばしちゃうから使用する魔法変更しようかな?」
二人は真剣に悩んだ結果、申告の際に試験官に聞く事にした。
「じゃあ、次、受験番号1111番!使用する魔法の申告後、攻撃魔法なら的に。回復魔法、補助系魔法なら、この試験用魔法人形に使用して下さい。」
「あの……!地形を変える土魔法を使用するのですが、会場が壊れる可能性があるので、加減した方がいいですか?」
「……ほほう。自信満々だな。この会場は特殊な結界魔法で覆われていて、安全性は確保されている。地形変化(土ボコ程度)も試験官がすぐ直すので気にしなくていい。思いっきりやらないと後々、後悔するぞ」
「ほっ……。そうなんですね!じゃあ、会場範囲に収まる程度で本気でいきます!」
「大ぼらもそこまで行くと清々し──」
試験官が何か言おうとした次の瞬間だった。
ゴゴゴゴゴ…
地響きが会場全体に伝わり、誰もが地震だと思った。
そして、
ドゴ──ン
大轟音と同時に、会場全体が隆起し剣山の様に大規模な無数の岩の槍が天を突いた。
その天に向かって伸びる大きい岩の槍の先には地面に設置してあったいくつもの的が全て突き刺さっている。
「……よし、全ての的にも刺さってるし、これなら──」
リューは、試験官の反応を見ようと振り返ると、試験官は腰を抜かしていた。
「……あれ?」
リューはどうやら自分が何かやってしまった事に気づくのだった。
会場は一時、騒然となった。
当初、学園に対するテロが起きたと勘違いした学園側が厳戒態勢で乗り出したくらいだ。
受験生はみな避難を呼びかけられ、リューも一番現場近くにいたので、警備兵がリューを助けようと歩み寄ってきた。
「あ、いや、違いますよ?」
リューもなんと説明していいかわからなかった為、警備兵に事件に巻き込まれ動揺してると思われてしまった。
「もう、大丈夫だ、安心して。さあ、君も避難するんだ!」
「こっちの試験官が腰を抜かしてるぞ、誰か担架を持って来てくれ!」
「負傷者がいないか確認するぞ!」
こうして中断されたのだが、試験官が、受験生がやったことだ、とすぐ証言した事で、違う意味でまた騒然となった。
最初誰も信じなかったが、リューが地形を元に戻す為に再度土魔法を使用した為、誰もが愕然とした。
その後、試験は再開されたのだが、次の受験番号1112番のリーンが、今度は風魔法で会場に大きな風の渦を作り、全ての的を切り刻みながら空に巻き上げる大規模魔法を使った為、また、試験会場が騒然となるのだった。
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