第39話 襲撃ですが何か?

 リューは日々、悶々としながら道の整備や、城壁作りをしていた。


 祖父カミーザがスゴエラ侯爵の元に向かってから半月が経っていた。

 連絡は一切なく、消息は不明。


 父とジーロ、それにスーゴは片道三週間の王都に行ってるのであとひと月近くは帰ってこない。

 長男のタウロは丸一日あれば帰ってこれる距離だが、連絡していない。

 勉強に集中して欲しいからだ。


 それは母セシルの意向でもあった。


 祖母ケイは心配してると思っていたが、いつも通りゆっくりしている。

 普段、祖父カミーザが、魔境の森に出かけて行く人なので連絡がなくても慣れっこの様だ。



「……なんか最近、よく見られてる気がする……」


 領民からは未だに拝まれたりする事はあるのだが、その視線とはまた違うものを感じていた。


 だが、視線は感じても見てる人をみつける事はできなかった。


 これは、監視されている?


 領兵隊長スーゴの能力『鷹の目』の様なもので遠距離から見られているのかもしれないとリューは感じた。


 前世でも、組(ヤクザの組事務所)がポリ(警察)の監視対象になってた時は、向かいのビルからよく見られてたなぁ。


 リューは前世の思い出を振り返りながら、監視している相手を想像したが、身に覚えがない。

 強いて言えば、エランザ準男爵関連だが、一党は捕らえれ、裁かれる為王都に送られているはずだ……。


 屋敷に戻ったリューは母セシルに監視の件を一応報告した。


「あら、よく気づいたわね。セバスチャンからも報告が来てるわよ」


「知ってたの!?」


「ええ、もちろんお母さんだって気づくわよ、最初に気づいたの私なんだから。そうだ、リューは、一応、人気のないところで一人にならないようにね」


 母セシルはドヤ顔をすると、息子の行動を注意喚起した。


「……はい、わかりました」


 さすが、父と冒険者をしていただけある。

 監視への対応は専門じゃないはずだが、スキルや能力とは関係ないレベルの経験の差だろうか。


 とりあえず、母セシルの言う通り、当分は森などに1人で行かないようにしておこう。

 相手の目的がわからない内は下手な行動は出来ない。

 妹のハンナも、母に注意されたのか、ここ最近は母に付きっきりだった。


 黙って相手の出方を待っているのも嫌だなと思ったリューは屋敷の周囲に土魔法で大人の背丈くらいある壁を建てた。監視してる相手の視線を切りたかったのだ。


 これには母セシルも反対しなかった。

 人の良い、母セシルでも、ただで私生活を見られるつもりはなかったようだ。


 そんなちょっとした相手への嫌がらせをした数日後、スゴエラ侯爵の領都である街の学校に通うタウロから緊急の手紙が来た。


 母セシルが声に出して読んでくれたのだが、その内容がなんとスゴエラ侯爵を狙った暗殺未遂事件が起きたそうだ。

 タウロも詳しい事はわからないらしいが、かなり大掛かりな事件だった様で、タウロの通う学校もそれに連動して襲撃されたらしい。

 タウロ自身も敵に遭遇して一戦交え撃退したようだ。

 怪我はないので安心してと綴ってあった。


「……無事なのね、良かったわ」


 母セシルは手紙を読み終わるとほっと溜息を洩らした。


 そこにセバスチャンが足早に部屋に入ってきた。


「監視していた者達が動き出したようです、こちらに向かってきています」


 このタイミングという事は、どうやら、スゴエラ侯爵暗殺未遂事件と関係があるのかもしれない。


 セバスチャンから報告を受けた母セシルが、使用人やメイドにすぐに末娘ハンナと一緒に地下室に隠れる様に言うと


「リュー、ランドマーク家の男子として、意地をみせなさい」


「はい!」


 リューは返事をすると壁に向かう。

 壁に小さい穴を掘っていたのでそこから覗いて確認する。

 数は……十七人。

 先制の範囲攻撃で数を減らす!

 引き付けるとリューお得意の土魔法を唱えた。


「岩槍!」


 ギャッ!


 突然地面から伸びる岩の槍に反応できなかった二人がその場に倒れた。

 他の者は咄嗟に魔法の気配を感じて反応し、防御魔法で防いだ。


「ヤバい、魔物と違って反応が早い!」


 相手がただ者ではない事がそれでわかったのであった。

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