第40話 容赦ないですが何か?
その監視者達、もとい、襲撃者達は統一された黒装束に身を包み、組織だった動きからただ者ではなかった。
実際、リューの得意な土魔法も、ほとんどが防いでみせた。
「じゃあ、もう一発」
壁に肉薄してきた襲撃者を引き付けると、寸前のタイミングで初歩だが、瞬時に出せる土魔法『石礫』を大量に放った。
近距離でのこれには、敵も防御魔法で反応する時間は無く、剣や盾で防ぐのが精いっぱいで、クリーンヒットした二人を戦闘不能に追い込んだ。
そのタイミングに合わせる様に、母セシルが、広範囲攻撃の大技、雷魔法の『雷撃驟雨』を放った。
敵は土魔法を防いでる直後である、隙が生じた。
降り注ぐ雷の槍に貫かれ4人がその場に倒れた。
それでも敵は怯まず、壁を飛び越えてきた。
リューは慌てて飛び退る。
襲撃犯達が地面に着地した瞬間だった。
リューが仕掛けた罠が発動した。
壁は罠を仕掛ける為の目隠しだったのだ。
地面が消失し、穴に落ちてそこから生える杭に貫かれる者、土の中から槍が飛び出し、それに刺され負傷する者、足に罠が絡まり逆さに吊り上げられる者。
合計三人が戦闘不能に陥った。
そこに動揺する敵の隙を見逃さず、セバスチャンが一人を斬り捨てた。
残り五人。
それでも、まだ、リュー、セシル、セバスチャンの三人対五人ではまだ分が悪い。
睨み合いながらリュー達は屋敷内に退いて行く。
外でこれ以上戦えば組織だった動きをする相手が有利と見たのだ。
狭い屋敷に引き込めばまだ戦えるはずだ。
リューは背後を、セバスチャンは前を、セシルはその間で魔法によるサポートをする体制になった。
屋敷の廊下は広くない。
相手は一人ずつセバスチャンと戦う事になる。
と、思ったのも一瞬で、リューの方が狙い目とみた敵がすぐ外から窓ガラスを割って侵入して背後に回りリュー側に二人来た。
挟み撃ちだ。
「これは、子供に容赦ない大人だね」
と、リューはつぶやく。
セシルが咄嗟に庇ってリューの前に出ようしたが、
「お母さん大丈夫。ボクもお父さんの子だよ」
と、母セシルを押しとどめた。
「やれ!」
敵のリーダーらしき男が後方から指示を出す。
その瞬間、前ではセバスチャンに後方ではリューに敵が斬りかかる。
「力強化、俊敏強化」
セシルがそれに合わせる様にセバスチャンとリューの二人に魔法をかける。
二人は敵と切り結び跳ね返す。
セバスチャンはともかく、リューの剣技に敵は驚いた。
「このガキ、できるぞ!魔法だけじゃなかったのか!?」
監視の間は一日中、土魔法で道の整備と城壁作りしかしてなかったので勘違いしてくれてたようだ。
それからは膠着状態だった。
狭い廊下での攻防は実力が伯仲していて、たまにリューが負傷するがすぐ、母セシルが治療する。
その厄介さに敵はセシルを先に倒したいがセバスチャンとリューが邪魔というジレンマに陥った。
「ならば!」
リーダーと思しき男は火魔法で屋敷に火を点けようとした。
「それは、いかんじゃろ」
敵リーダーの背後から声がした。
「な!?」
振り返ろうとする敵の胸から剣が生えてみえた。
突然現れた祖父カミーザが背後から剣で貫いたのだ。
「うちの家族に手を出した時点で悪手だったのう」
リーダーをやられた後の襲撃犯達は脆かった。
セバスチャン側の残り二人はカミーザとの挟み撃ちで直ぐ倒され、リュー側の二人は逃走しようと外に出たが、追いすがったセシルが背後から風魔法で切り裂いた。
「息子に手を出した報いよ」
容赦がなかったが、自分も親だったら子供を狙った相手に容赦はしないだろう。
同情の余地はなかった。
「長い事留守にしてすまんかった。スゴエラ侯爵暗殺計画を防ぐのに忙しくてな。無事防いでみたら、うちも狙われてると知って、慌てて戻ったんだが間にあって良かったわい」
「おばあちゃんは大丈夫?」
「ああ、あっちは狙われてなかったわい」
あっ、おばあちゃんのところに最初駆けつけたのね。
と、祖父のラブラブっぷりを指摘しようかとも思ったが今は止めておこう。
みんな助かったのが何よりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます