第24話 インフラ整備ですが何か?

 緻密な魔力操作が出来るようになったリューはある事に着手した。


 それは屋敷のトイレ事情の改善だ。

 一応、外にトイレはあったが、粗末で衛生的とは言えない。


 そこで土魔法で粘土の便器を作り、それを火魔法で絶妙な加減で焼いてみた。

 何度も失敗したが、ついに一つ完成した。


 それを新たに土魔法で作ったレンガ風の小屋に設置した。


 さらに井戸から汲んだ水を溜めるタンクを上部に設置し、紐を引っ張ると流れる仕組みを作った。


 ちなみに流した排泄物は、下に作ったスペースにいる捕獲したスライムが処理するシステムにしてある。

 スライムは基本、綺麗好きな魔物なので、進んで消化してくれる。

 これで少なくとも屋敷の衛生面は断然に良くなるはずだ。


 残念ながら便器を大量生産するのは難しそうだ。

 焼き加減が難しい、それは実際やってみて痛感した。

 これを生産ラインに乗せるのは難しすぎる、これは商売にはできないだろうと思うリューだった。


 早速家族に使い方を教えたら、好評だった。

 特に女性陣には喜ばれた。安心して座ってできるからだ。

 これまでは、取っ手を握って中腰姿勢を取らねばならず汚さと相まって大変だったのだ。水で流すから衛生的でもある。


 スライムを使った処理システムには驚かれたが、ほぼ無害な魔物である、大丈夫だろうという事になった。



 さらにリューは道の整備を始めた。

 魔力回復ポーションを片手に土魔法で街道風道路をどんどん作っていく。

 それで、ランドマーク家の屋敷からランドマークの街までの道を整備した。


 これには、父ファーザも大喜びで、


「うちの前から街道が続いてるみたいだ!リューよくやってくれたな」


 と、褒めてくれた。


 なので、その日から毎日、リューは領地内の主要な道路の整備を始めた。

 雨で水たまりが出来る道も、馬車が通る事で出来た轍も、リューの土魔法で平らになり、石畳が敷かれ一気に交通の便が良くなっていく。


 もう、道の整備はリューの日課になっていった。

 領民達はこのリューの姿に感謝し、拝む老人も現れる程だった。

 わずか8歳の子が領民の為に、道を毎日少しずつ整備して回っているのだ、心を打たれる者が現れるのも当然だった。


「リュー坊ちゃんのあの姿。何と健気な事か!」


「毎日、私達の生活向上の為に、ああやって道を整備してくれるなんてね……」


「あれは、ランドマーク領の現人神じゃよ……!」


 本人には、褒められた事が嬉しかった、喜ばれた、整備が楽しくなったなど色々と理由があったが、ここまで反響があるとは思っていなかった。


 その噂はこのところの景気の良さや、領主が善良な人だという話と共に領外にまで広がり、ランドマーク領という田舎に足を運ぶ人もぽつぽつと現れ始めた。


 その者達は領地内に入ると、本当に片田舎の道が街道の様に整備されているので、噂が本当である事に驚き、街も小さいが景気がよく、活気に溢れているので移住を決断する者も増え始めた。



「隣領からの移住の申請が増えたな?」


 ファーザが今月の移住者が二桁になったのでセバスチャンに確認した。


「はい、隣領も豊作続きのはずですが、ランドマーク領より税が高いようです。その為、こちらに移住したい者が増えたのかと」


 セバスチャンの指摘は間違ってはいなかったが、それに加えてリューの噂、ファーザ本人の善政によるランドマーク家への好感度がアップしてた事は想像していなかった。

 ファーザもセバスチャンも善政を敷く事は、施政者として当然の事と思っている善人なので、その辺の想像が出来ていなかった。



 そんな中、数か月間、毎日、道路整備をしていたリューであったが、


「道路の整備が結構できたから、便器も少しずつ作ってみんなに配ろうかな?」


 と、考え始めた。


 便器作りは大変だから、設置するところは限られるだろうけど、無いよりは有った方が良いよね?


 と、ランドマーク領のインフラ整備を1人でやろうとしているリューであった。

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