第23話 母が凄いんですが何か?

 リューとジーロの武術の腕はめきめき上がっていった。

 シーマも頑張っているのだが、この二人には及ばない。


「お二人とも最近凄いっす!俺、ますます差がつけられて悔しいっす!」


「でも、リューの方が、腕上げてる気がするよ。最近、危うい場面が増えたし。このままだと、どこかで追い抜かれそうだよ」


 ジーロは弟の成長速度が嬉しそうだった。


「そうだな。リューは最近伸びてきてる、だが、ジーロも急激に伸びているのは確かだぞ。シーマ、安心しろ、お前の成長も十分、びっくりするくらいだから」


 ファーザが3人を褒めた。

 その後ろで領兵隊長のスーゴが賛同する様に頷いている。


「旦那様、本当ですか!ジーロ様とリュー様が凄すぎて自分では全く分からないっす」


「ははは!親の目から見てもジーロとリューの成長は目を見張るものがあるからな。シーマ、お前も来年は学校だ、その為にも今は勉強も頑張っておけよ」


 ランドマーク家がお金を出す事でシーマも学校に行かせる事が決まっていた。

 来年はタウロと同じ学校に入学する予定だ。


「でもいいんでしょうか、俺の様な平民が学校に行っても……」


「大丈夫だ。スゴエラ辺境伯の街の学校は、平民出身の者も沢山いる。タウロの手紙にも書いていたから安心しろ」


 ファーザがシーマの不安を拭いとってやった。


「……ありがとうございます!いっぱい勉強してランドマーク家の為に頑張ります!」




 リューは8歳になって魔法の訓練も本格的に行っていた。

 魔法は母セシルが教えてくれている。


 母セシルは凄い人で、魔法使い(風・雷・水)スキルに治癒士スキルを持つ稀な人なのだそうだ。

 その上をいくとすれば、それは賢者などの上位特殊スキルになってくるだろう。

 さらにセシルの凄いところは、平民出身だったのでそれらを独学で覚えた事だ。

 学校に行く事なく、子供時代や、冒険者をやって腕を磨いたらしい。


 そこで気になったのが父との馴れ初めだ。

 聞くと母は普通に話してくれた。


 父ファーザとの出会いは祖父カミーザがまだ、騎士爵ではない平民時代に冒険者をしていて、その時、魔物に襲われていたある冒険者を助けたのだが、それがセシルの父親だったらしい。

 そして、親しくなり子供同士を引き合わせたのが最初の二人の出会いだったとか。

 のちに、家族ぐるみの付き合いをするようになり、その子供時代は冒険者も一緒にやっていた。


 そこで二人は急接近、そのまま結婚したそうだ。


 二人の馴れ初めだけで物語ができそうだと思いながら母ののろけ話を聞くリューであった。




 リューは今のところは土魔法が抜きん出ていた。


 森の開拓を何度も魔力切れでぶっ倒れそうになりながらやってた結果で、今では無茶な繰り返しのおかげで魔力量が増大し、広大な森の開拓が容易に可能になってきた。

 おかげでコヒン畑も広げられ、来年頃からは安定してコヒン豆を加工した商品「コーヒー」が出荷できそうだ。


 話を戻すと、今は母セシルの指導の元、魔法での緻密な操作を学んでいる。


 その実践としてひたすら母セシルの石像を作らされていた。

 これが、色々と難しい。

 鼻が大きくなったり、胴体が太くなったり、足が太くなったりとバランスが取れない。

 もちろん、自分の魔力操作が問題なのであって、母の体形が問題なわけではない事は、名誉の為にも言っておく。

 言っておかないと怒られそうだし……。


 連日、不出来な像を作っては壊す、を繰り返していたが、やっと納得がいくものが作れた。


 思わずガッツポーズが出る出来だったが母セシルからは、


「胸の部分が小さいわね」


 という何故か本能的に圧を感じる指摘を受け、作り直させられた。


 自分的には忠実に作ったつもりだったのだけど……。


 それを言うと母の違う一面を見そうな気がしたので口にせず、心の中に留めるのだった。

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