第22話 兄が凄いんですが何か?
リューは八歳になった。
タウロは今年十二歳、ジーロは十歳、ハンナは六歳である。
今年から長男のタウロは、スゴエラ辺境伯の街にある学校に通う事になる。
王国南東部では一番の学校だ。
騎士爵領からも近いし、後継ぎとして頑張ってきて欲しい。
と言っても、タウロは文武両道で風魔法も優秀なので心配はいらないだろう。
次男のジーロも勉強は普通だが武芸と治癒魔法に秀でている。
頭はキレるのでこちらも心配なし、兄を支える最高の補佐になるだろう。
問題は自分だった。
騎士爵領の三男ともなるとさすがにこのまま居座るわけにはいかない。
成人したら家を出ないといけないだろう。
やはり、以前父が言っていた王都の学校に通い、箔をつけてどこかに就職するというのが一番無難なところだろうか?
となると、王都の学校に行く為にはお金がいる。
今のうちにランドマーク家の財政をもっと良くし、自分でもお金を貯めないといけないだろう。
これまでの特許は全て、名義は当主であるファーザにしている。
全てはランドマーク家の家族の為だ、自分には一銅貨も入ってきてない。
そこで、また、ひとつ思いついた事があった。
それは、ハンナと遊んでいて考えたのだが子供のおもちゃに「けん玉」はどうかと思ったのだ。
早速、商業ギルドに行き、特許申請して認められると、数日後にはいつも通り、商人がきて、契約してくれた。
これは、じわじわと広がって来れればいい。
何でも、ヒットするとは限らない、色々試して行こう。
タウロが学校に通う為、スゴエラ辺境伯の街の学校の寮に引っ越しする日が来た。
これからしばらくは会えなくなる。
珍しくハンナが泣いたがタウロは夏休みには帰ってくるからと励まして泣き止ませた。
ジーロには自分が留守の間、お父さんを助けるんだぞと叱咤激励し、リューにはこれまで通りみんなをサポートして上げてと、お願いされた。
「タウロお兄ちゃんがいない間、ボク頑張るよ」
とても無難な言葉だったが、タウロは頷くと行ってくるね、と馬車に乗り込んでいった。
「寂しくなるわね」
母のセシルが、つぶやく。
二年後にはジーロ、4年後には自分が続く事になる。
親としては子供が巣立つ嬉しさの反面、寂しさもあるのであった。
ひと月半後、タウロから何度目かの手紙が届いた。
学校では成績優秀で、中間試験では学問、武術、魔法共に学年で一番になったらしい。
これは稀な事でスキルで左右される部分も多いが、相当な努力の賜物と言えるだろう。
この報告にはファーザもセシルもとても喜んでいた。
リューもタウロは絶対良い成績を残すと思っていたのだが一番とは……。
なら、ジーロも良い線行くのではないだろうか?
二年後が楽しみだ。
これで、ランドマーク家の将来が安泰なのは確実だ。
タウロの通う学校は、辺境伯領以外のところからも沢山集まってる学校なので、身分を超えて友達も沢山できたらしい、南部のブナーン子爵の子息と良いライバル関係で友情が芽生えたと綴ってあった。
その報告を聞いて、タウロは確実に成長していると、リューは感じるのだった。
だからこそ、ちょっと後悔がある。
それは、もう少し自分が頑張ってればタウロを王都の学校に行かせられたのにという思いだ。
今の学校で一番なら王都の学校でも良い成績が取れるはずだ。
やはり先立つものはお金だった。
ゴメンよ、お兄ちゃん、ボクが不甲斐無いばかりに……!
ジーロとリューはタウロの手紙に刺激を受けた。
それで二人ともより一層、自分のスキルを上げる事に励んだ。
その中で、ジーロは最近、治癒の中位魔法である領域回復を覚えた。
この歳で覚えるのはまさに天才と思われる速度なのでファーザとセシルもとても驚いていた。
ますます、ランドマーク家は安泰だ。
その陰で実はリューも、ゴクドーの能力の一部が解放され[経験値増大]を取得していた。
どのくらい増大するのかはわからないが、『器用貧乏』でほとんどのスキルが使えて、ゴクドーの[限界突破]で限界が無いリューにとってとても助かる能力のはずだ。
あとは努力を重ねていこう。
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