第21話 妹と遊びますが何か?

 年が明けてランドマーク家も新年を迎えた。


 年明けで家族はみんなゆっくりしている。

 なので、リューは妹のハンナと手を繋ぎ、ランドマークの街に遊びに来ていた。

 シーマも同行している。


「リューお兄ちゃんと街に来るの初めてだよね」


「そうだね」


 リューは笑顔でこのかわいい妹に答えた。


 ハンナは母セシルに似て金髪に青い瞳をした美人さんだ。

 まだ二つ下の五歳だがしっかりしていて、普段リューが仕事を手伝って忙しい時は、それを察してか遊ぼうと誘ってこない。

 なので普段はタウロとジーロが相手をしている事が多かった。


 前世では子供の頃、児童養護施設にいたので、妹の様な子はいたが、実際の妹は初めてだった。

 なので、どう接していいかわからない部分もあったのだが、もしかしたらハンナは、それをどこかで感じていたのだろうか?


 とにかく今日はそんなハンナの為に、一緒に遊ぶと決めて街に来ていた。


「リュー坊ちゃん、ハンナお嬢ちゃん、こんにちは」


 この兄妹を見かけた街の人達が挨拶をしてきてくれる。


 屋台の親父さんは、


「ハンナお嬢ちゃん、これ食べるかい?」


 と、串焼きをくれた。


「ありがとう♪」


 ハンナが笑顔でお礼を言うと


「しっかりお礼が言える良い子ですね」


 と、褒められた、兄としてはまんざらでもない。


 木工屋に行くと新年間もないのに手押し車の荷台部分の製造が行われていて、熱気に溢れていた。


「凄いね!」


 その雰囲気を感じたのかハンナは目を輝かしている。


 意外にモノ作りに興味があるらしい。


 なので端っこのスペースを借りて、ハンナの為に木のおもちゃを一緒に作って上げた。

 木馬である。

 乗って前後に揺れる仕組みの単純なものだが、ハンナは喜んだ。


「お兄ちゃん凄いね!」


 出来栄えに感心し、乗って遊ぶハンナ。


 それを見て、和むリューとシーマ。

 そして、現場のおじさん達も手を休めて和んでいた。


 ひと時の癒しを職人達に提供したところで、木工所を後にした。

 もちろん、木馬はマジック収納に入れてお持ち帰りだ。


 散歩を続けていると、リューとシーマくらいの数人の子供達が駆け寄ってきた。

 シーマが、念の為、間に入る。


「リュー様、子分にして下さい!」


 ビックリの申し込みだった。

 それをシーマが追い返す。


「リュー様の、一の子分は俺だぞ!あっちいけ」


 いや、そうじゃないから。


 内心シーマにツッコミを入れた。


「子分はいらないよ。でも、友達として妹のハンナも大事にしてくれるなら一緒に遊んでも良いよ」


 リューがいうと、子供達は目を輝かせて喜ぶ。


「「「はい、お願いします、リューの兄貴!」」」


 だから、そうじゃない!


 この子達からはシーマと同じ匂いがする……!


 そう思うリューだったが、ハンナが喜んでいるのでよしとしよう。


 この後みんなでかくれんぼや、高鬼、影踏みを教えて遊び、盛り上がった。


「俺達、こんな遊びがあるなんて知らなかったです、リュー様凄いです!」


 と、子供達がリューを褒めて喜んだ。

 聞けば普段はかけっこや、騎士ごっこ、冒険者ごっこをしてるらしい。

 男の子らしい遊びだが、ハンナにはやらせられないなと思うリューだった。


 そんな中、リューが褒められた事が嬉しかったのかハンナも喜んでいた。


 ハンナの為にもこの子達には、女の子は大事に扱うものという事を教えなくてはならないと使命感に燃えた。


 が、子供ウケはすこぶる悪かった。


「うちの姉ちゃん口が悪いから苦手だなぁ」


 とか


「うちの母ちゃんすげぇ怖い」


 など、愚痴がこぼれだす。


 なのでハンナの事はボクの妹だから何があっても守れ、それが男として騎士として当然の義務だ、と教えると騎士という言葉に男の子達は強く反応した。


「騎士!──わかりました。リューの兄貴!」


 それ自体はわかってくれたようだ。


 でも、兄貴は本当に止めて!


 リューは自分の呼び方だけは注意させる事にした。


 自分がいない時は、この子達がハンナを大事にしてくれると信じよう。




 帰り道。


 嫌な噂を耳にした。


 隣領のエランザは昨年も豊作だったらしい。

 という事は、エランザ準男爵が不作を理由にお金を借りてきたのは、嘘だったようだ。


 嘘をついて貧乏な隣領にお金を借りてくるとは質が悪い。

 時期が来たら容赦なく取り立てる事にしよう。

 リューはハンナの手を引きながら、あのランドマーク家の天敵をよく調べてみる必要がありそうだと思うのだった。

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