1st battle:瀬宮雫vsコールサイン・プロローグ
第1幕 しんけいすいじゃく
「……ここは……?」
車のないアスファルトの駐車場。その東側で、
――と、背後に気配。反射的に飛び退り、腰のベルトから小型拳銃を引き抜く。怯えたように見開かれる瞳に映るのは、一人の少年。彼は褪せた金髪を揺らし、降伏するように両手を挙げた。
「ちょっと待って! 僕は敵じゃないって! このゲームのルール説明をしたいだけだからさ、お願いだからその拳銃、仕舞ってくれない?」
「……本当、ですか?」
「本当、本当だよ。信じてってば……」
「ご、ごめんなさい……」
「いいよ、わかってくれたなら。それじゃあこれからルール説明を始めるけど、いいかな?」
「……はい」
「オーケー。それじゃあ、まずゲーム会場の説明ね」
少年は茶色のジャケットに包まれた腕を広げた。その背後には、広大な鉄格子が広がっている。その向こうに目を凝らすと、青いテントの上部がかすかに見えた。
「この鉄格子の向こうには、無人のフリーマーケット会場がある。青いテントの下に机が並べられていて、その上に色んな物品が置かれているんだけど……その物品たちの九割が、会場内に何かしら全く同じものがある『ペア』になっているんだ。そのペアを同時に触れると消滅、合わせたことになる」
「……」
「そうやって九十九組、合計百九十八個のペアを先に合わせた方の勝ち。時間制限はないけど、ペアが破壊されてクリアに必要な数を下回ったら、その時点で失敗扱いになるから気をつけてね。……オーケー?」
「……はい」
ゆっくりと頷き、雫は改めて鉄格子の向こうに視線を向ける。この向こうに存在するペアを合わせてゆき、先に既定の数に達した方が勝ち。物品を破壊すると不利になるため、戦闘はできる限り避けた方が得策。
「『しんけいすいじゃく』……というところ、ですね」
「そうそう。……さて、僕の出番はここでおしまい。ちょっと動かないでね」
軽薄な笑顔のままで言い放ち、少年は雫に手を伸ばした。その肩に触れると同時に、彼は霧となって消滅する。雫は蒼い瞳を見開き、消えていく少年をじっと見つめた。……恐らく、彼もペアの一人だったのだろう。もう片方の少年は、対戦相手にルール説明をしていたのだろうか。雫はセーラー服の襟元をぎゅっと握りしめ、鉄格子に歩み寄る。
対戦相手はどんな人間だろうか。地道に事を進めるタイプか、あるいは最初に敵を潰してから悠々とことを進めるタイプか。どちらだとしても、あるいはどちらでもなかったとしても……雫がやることは、変わらない。
「ごめんなさい……まだ見ぬ対戦相手さん。勝たせて、もらいますね……」
消え入りそうな呟きと同時――重々しい音を立てて、鉄の門が開いた。
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