第192話 抱っこしてぇ〜

 今回は、前話第191話の後刻談である。



 彼とふたりで、『父の日』のイベント会場から、都内のわたしたちの部屋までの帰りの電車の中でのことである。


「結構、電車に乗るけど、だいじょうぶか?」

「うふぅ、だいじょうぶぅ〜。酔ってないからぁ〜」

「なんか、おもいっきり口調が怪しいんだけど……」

「だいじょうぶぅ〜って言ってるでしょぉ〜」


 呂律が回らない……というわけではなくて、普段より喋りかたが幼くなったわたしを心配してくれてるらしい。まぁ、絡んでるからな。『酔っ払いは嫌いっ!』って言われないようにしないと。


うちまでは帰れるからだいじょうぶぅ〜。酔ってるけど酔っ払ってはないからぁ〜」

「そうかぁ?」

「あぁ、でもでもぉ、うちについたら抱っこしてぇ〜、ベッドまで連れてってぇ〜」


 こんな喋りかたしてる自分が、とんでもなく恥ずかしいんだけど、酔うとこんなんなるって、初めて知った。



 帰りの電車は、乗り換えが少なくなるような路線で帰ってきた。そんな提案をして乗り換えで手を引いて歩くわたしを見て、彼が……。


「なんか、いつもみたいにしっかりしてるのに、その喋りかたとのギャップがすごい」

「そぉ〜? 酔っ払ったわたしなんてかわいくないよねぇ〜?」

「その喋りかたされてるだけでかわいすぎる。いつもその声でお願いしたい!」

「バカに見えるから、ぁでぇす〜」



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 無事に帰宅することはできた。最後は、足取りも危なかったけど。だって、電車に揺られてるうちに、酔いが回ってきたみたいで……。


 取り敢えず、玄関からは彼に横抱きにされて、彼の部屋に連れ込まれた。『酔っ払っちゃうと心配だから……』って言い訳してたけどさ。

 ひとつのベッドで寝てるんだから仕方ないけどね。


 結局、酔った女の子(わたし)と、一緒にお風呂入って、えっちしちゃうってどうなのよ! 『なんか、いつもと雰囲気違ってて、我慢できなかった』って、その言い訳もどうかと思うよ!

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