第191話 強すぎなんじゃない?

 今回は、今年の『父の日(10日も前のことだけど……)』のお話。


 日曜日の午後、地元に戻ってきたわたしたち、四人。

 わたしとつかさくん(仮名)は、去年に引き続いて、両家による『父の日』のイベントを開催するために、親友の美亜みあちゃん(仮名)、我らが妹の美琴みことちゃん(仮名)を伴って、一緒に凱旋したのだった。

 美琴ちゃんにとっては、お泊まりからの少し早い帰宅である。残念そうな美琴ちゃんからは、次の日曜日のデートの約束が取りつけられた。また、別の話になるのだろうか?



 今年のイベント会場は、昨年もお世話になった大将(本人がそう呼べとうるさい!)夫妻が切り盛りする居酒屋さん。今回は、全員が現地集合と相成りました。


 今年のわたしに課せられたミッションは、お父さんと彼のお父さまと、一緒に呑む……こと。

 もう、去年の『父の日』から楽しみにしていたのだそうだ。

 そう、今年、ついに、わたしは二十歳はたちになった。彼はもうちょっと先だけど。大手を振って飲酒ができる歳になったのだ。


 当然ながら、わたしは自分の限界がわかってないから、飲酒は、最初はお父さんと……という約束はしていた。

 そこに乗っかってきたのが、彼のお父さまだった。


「いやぁ、娘とお酒が呑める日が来るなんて……。息子はたぶん、二十歳はたちになってもつきあってくれないだろうし。『けっ! 親父と酒なんか呑めるかよっ!』とか言われちゃうんだろうなぁ……」


 刹那げに、そして大げさに呟きながら、司くんのことをチラチラ見ているお父さま。


「親父、なんて呼んだことないんだけど? 俺」


 呑む前から絡まれてる彼は苦笑を浮かべていた。『ほら、見ろ!』と、お母さまからも一括される始末。まぁ、仲良きことはいいことだ。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 結果、泥酔して酩酊するまでには至らなかった。お父さんたちふたりに、結構つきあったつもりでいたんだけど、醜態を晒さずに済んだのは良かったかもしれない。

 彼には、保険をかけるつもりで、前もって頼んでたんだけど。


「酔っ払っちゃったら、部屋まで運んでね。優しく……だよ」


 そんな大役を任された司くん、出番がなくて、ちょっとがっかりしてた。


「ひな(仮名)? 酒、強すぎなんじゃない? 男の俺のほうが弱かったらどうしよう……」

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