第186話 同い年だって聞いてたけど……?

 日曜日の『母の日』の顛末を語ろう……。



 今年も、彼の実家にお邪魔することになった。

 現在の我が家である都内某所を、午前中遅めに出発。高校の最寄駅までは4人で。ここで、美琴みことちゃん(仮名)と別れ、そこから別路線に乗り換え、わたしたちは一駅で降りるので、ここで美亜みあちゃん(仮名)とも別れた。


 駅前のロータリーでは、いつものように彼のお母さまが待っていてくれた。

『今日の主役に迎えにきてもらうってどうなの?』と、彼の耳元で囁いたら、『本人が一番楽しみにしてたっぽい』……とか?

 そりゃ、期待はされちゃうか? 彼が素直に『母の日』に感謝の気持ちを伝えるようになったのは、わたしと付き合い始めた後からだからなぁ……。今年は、彼が恥ずかしがることもなく、ここに至ってるのはいい兆候だと思うんだ。


 後部座席にふたりで乗り込んで、10分弱。彼の生家に到着。玄関の外では、彼のお父さまにも迎えてもらった。お父さまに連れられて家に入る。玄関で、脱いだ靴を揃えてると、ちょっとした違和感を感じた。

 わたしたちが、彼の生家のリビングに到着した途端に、その違和感の正体が、向こうから飛び込んできたのだ。


つかさ(仮名)、久しぶりっ!」

「ね、姉ちゃん?」


 その、『姉ちゃん?』という言葉に、首を傾げるわたし。彼に姉がいるなんて聞いた記憶がない。そんな戸惑うわたしに、その『姉ちゃん?』が近づいてきた。思わず、彼の背後に隠れてしまった。


「あなたが、ひなちゃん(仮名)? 司の彼女? 確か、同い年だって聞いてたけど……?」


 いきなり近づいて来られて、さらに初対面の相手に、微妙に怯えるわたしが、普通に対応などできるわけもなく。

 でも、彼とお母さまとお祖母ちゃまが三人揃って、『いきなり失礼でしょうッ!』って、その『姉ちゃん?』を叱りつけている。


 彼女の正体は、司くんから見たら叔母さま、お母さまの妹さんだという。お祖母ちゃまの近所にお住まいで、お祖母ちゃまが、この家に行くというので送ってきてくれたらしい。

 ついでだから、甥っ子の彼女を見ていこう……と思ったのだとか?


 司くんがっちゃい頃、よく遊んでくれたのだそうだ。

 この叔母さまも、司くんが『叔母ちゃん』と呼ぶのをヨシとしていない。その頃から『姉ちゃん』呼びをさせられてるそうだ。

 まぁ、仕方ないと思うよ。まだ、20代らしいし……。でも、その叔母さまの腕の中には、っちゃいあかちゃん。



 騒々しい初対面の後、漸く本来の予定に……。

 彼がお母さまに、『母の日の贈り物』を感謝の言葉と共に手渡す。そして、お父さまがお祖母ちゃまに同じように……。お父さまにしたら、義理のお母さんになるんだけど、わたしたちに触発されたらしい。あ、お祖母ちゃまにとっては、それこそサプライズッ! 驚いてた。


 わたしからも、いつものお礼も込めて……。お母さまと、お祖母ちゃまにも……。ふたりともに喜んでくれたから良かったよ。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 お父さまが、『仕方ないから連れてってやろう!』ということで、叔母さまの運転で、全員で夕飯を食べに行った。

 なぜ、叔母さまが運転手なのかというと……、車がワンボックスタイプだったのもある。あかちゃんも含めて7人がいっぺんに乗れたから。

 でも、本当は、お祖母ちゃまからのダメ出しによるお仕置きだったりする……。


「ひなちゃんは、わたしにまで気を遣ってくれてるっていうのに、実の娘がこれだもの〜」


 わたしがお祖母ちゃまに贈ったのは、小さめのプリザーブドフラワーだったのにね。こういうイベントごとって……大事、だよね?

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