第185話 負けた気がするっ

「……で? 裸に彼のワイシャツ1枚羽織って迫った結果は?」

「裸じゃないってぇ……」


 わたしの返答に、どうして、そんな残念そうな顔をするんだ?



 昨日の土曜日、大学での授業が終わって、我が家を襲撃してきたのは、親友の美亜みあちゃん(仮名)である。現在、リビングには、わたしと彼と美亜ちゃんの三人。

 今週初頭の夜の顛末を、無理やり聞き出した彼女が、わたしに、その裏づけを取るかのように話題を放り込んできた。

 お察しのとおり、無理やり口を割らされたのは彼……である。なにやってんだよぉ……。


 ゴールデンウィーク中、賑やかだった都内某所の我が家。そこから、暴風の元が去ってみたら、急に寂しくなっちゃったりして……。お風呂上がりにそういう催しをしてみたわけだ……。前話参照。


「あのひな(仮名)がなぁ……」

「どういう意味だ?」

渡瀬わたらせ(仮名)とえっち三昧って……どうなのよ?」

「えっち三昧って。いつもしてるわけじゃないよ。たまにだよ、た、ま、に」

「かぁ〜、この余裕が悔しいっ。わたしのほうがっきいのに、負けた気がするっ」

「おいっ、どこ見て言ってんだ?」

「渡瀬っ、おまえ、たまには鷲掴んでみたいとか思わねぇのかよ? やっぱり幼女趣味ロリコン?」

「小さくて悪かったなっ!」


 自分の胸を自分で鷲掴んで悶える美亜ちゃんと、久しぶりに一触即発である。


「最近は、小さい胸もいいなって思えるぞ。ひなは小さいからかわいいんだよ!」


 彼のひざの上に座る、わたしの頭を撫でながら、彼がそんなことを呟いた。

 もぉ、嬉しい! 思わず振り返って、彼の首に両手を回して、ちゅっ♡ って。


 わたしたちの正面に座ってる美亜ちゃんが……、固まってた。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 このお話が投稿されてる頃には、地元に凱旋。

 彼の生家へと、出かけていることだろう……。なんと言っても『母の日』だし。

 お祖母ちゃま(彼は祖母ちゃんとは呼ばせてもらえず。わたしは、その言い方がかわいかったかららしくて寧ろ推奨されている。とにかくお若く見えるのだ)が、今年もやって来る……というので、彼のお父さま主催で、外での夕飯をご一緒させていただくことになっている。


 嫌われてないのは嬉しいことだけど、う〜、緊張する。

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