第94話 指輪しかないじゃん?

 日曜日の行程を、ひと通り話し終え、クラスメイトの目には、『なんだ、それだけ?』感が浮かび始めていた。

 しかし、莉緒りおちゃん(仮名)からの、『ひなちゃん? その指輪、渡瀬わたらせくん(仮名)からのプレゼント?』というひとことが、今度は男子陣にも火をつけた。



 一斉に取り囲まれる渡瀬くん。男子たちのその行動は早かった。

 そして、質問攻め。浴びせられる質問の中には、エッチぃ単語も聴こえてきたけど、男子の対応は、全部、彼に任せてある。指輪を贈るって、それだけの覚悟が必要なんだ。

 まぁ、前もってシミュレーションは済ませてあるからね。彼もあわあわすることはない。表情も、まだまだ余裕そうだ。


「半年遅れの誕生日のプレゼントだけど、なにか?」

「半年前は、まだつきあってなかったんだよ!」

「ネックレスはダメだし、ピアスもしてねぇだろ? そしたら、指輪しかないじゃん?」

「たまたま、指のサイズを知ったんだっ!」


 これで、押し通すって……、ふたりで決めてたんだ。

 そんな思惑があったから、わたしが贈った、お揃いの彼の指輪には、シルバーのチェーンを合わせておいた。彼は、そのチェーンに指輪を通して首から下げている。ワイシャツの下だから、そうそう見つかることはないだろう。

 お揃いの指輪をして、幸せに浸るのは、わたしたちふたりだけでいいのだ。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 これで、引き下がらない男子には、最終手段としての答えも、彼には託してある。


「俺が自分の彼女に、何を贈っても、問題ないだろ?」

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