第36話 助っ人?

 日曜日の夜は、目が覚めた後は寝ることができなかった。そのまま夜が明けるまでが永かった。未だに、恐い『夢』を見て寝れなくなるわたしって、まだまだ子どもだ。

 月曜日の朝のわたしは、超がつくほど恐い顔をしていたに違いない。



 そして、その日のお昼、いつもの女子4人でお弁当の時間。美亜みあちゃん(仮名)に、『ひな(仮名)は、ひとりで寝れないんだぜ』と揶揄からかわれてる最中だった。

 教室の前のほうに人だかりができている。


 その人だかりの中から、長身で短髪の男子と、その彼よりちょっと小さい女子が、わたしたちの前までやってきた。どちらも知らない顔だ。自分の記憶を探るわたしを見下ろすふたり、それを見て、頬を引き攣らせながら後退あとずさるわたし。

 そんなわたしの様子を感じ取ってくれた美亜ちゃんが立ち上がる。そのすぐ後、なぜか、渡瀬わたらせくん(仮名)までもが出てきて、わたしの前に立ちはだかってくれた。

 一触即発の雰囲気が漂う教室。


 険悪な雰囲気の中で、来訪者のふたりが、突然、頭を下げてきた。混乱するわたしたち。

 女子のほうが、謝罪した後、理由を説明してくれた。かわいい笑顔だった。1年生だそうだ。


浅葱あさぎ先輩に、私たちの部の助っ人をお願いにきました」

「助っ人?」

「はいっ!」


 元気よく返事をする後輩ちゃん、もう、満面の笑顔である。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 一年生たちの間には、先日行われた、生徒会主催の歓迎会、そのプロデュースをしたのがわたしだと知れ渡っているんだそうだ。意外なところから火がついた。

 でも、なぜ、わたしが、野球部の助っ人?

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