第20話 面倒も見てないよ

 今回は、高校一年編ちょっとまえのおはなし

 そういえば、渡瀬わたらせくん(仮名)の友人ふたりの紹介をしていなかった……ことに、今更気づいたわたし。



 まずはひとりめ。わたしの席とは対角線上に位置している(教室の入り口に一番近い)ところが指定席じぶんのせきの、会津あいづ僚太郎りょうたろうくん、もちろん(仮名)。渡瀬くんとは中学からのつきあい……だとか? ふたり共に内部生だ。

 この、会津くん、色白で長身で、三人の中では一番カッコいい! でも、すごい毒舌!


 そして、もうひとり。最前線(先生に一番近い)が指定席じぶんのせきの、烏丸からすま彼方かなたくん、当然(仮名)。彼は、わたしと同じ外部生。でも、渡瀬くんとは幼馴染みらしい。家も近くだとか聞いた。

 烏丸くん本人が言うには、渡瀬くんとは『スッゴイ腐れ縁』なんだとか? わたしから見たら、スッゴイ『世話焼き』。わたしにも気を使ってくれるし……。



 時は、三月の中旬。男子たちにとっての一大イベントが明けた、次の日。

 いつもの女子三人が、わたしの机を取り囲んでいる。渡瀬くんとの、昨日の顛末を聞きだす気満々だ。

 美亜ちゃん(仮名)が、腕を組んだまま、わたしを見下ろし……。


「渡瀬とで映画を見た後は?」


 その質問に対するわたしの返答に、納得のいってない表情の、女子三人。隣に座ってる渡瀬くんに、その矛先を向けていく。でも、朝から『こころここにあらず』の渡瀬くんの要領を得ない返答に、次第にイライラを募らせ始めたところに、ふたりが登場。


「渡瀬くんも、それが真実だ……って言ってよぉ」


 わたしが、渡瀬くんの左腕をとって揺さぶってみても、顔を赤くするだけの渡瀬くんに向かって……。


「こういう時に、役に立たない男って……。浅葱あさぎも、別れちまえよ!」

「イヤイヤ、まだつきあってるわけじゃないから」

「ひなもたいへんだよね。渡瀬こいつの面倒見るのって」

「面倒も見てないよ」


 五人による包囲網が、少しずつに狭められていく……。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 次回は、この続き。我慢の限界にきたわたしが、渡瀬くんに見舞った攻撃……とは?

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