第10話 言わなかったんだよ!

 もう1話だけ、我慢して読んでもらえると嬉しい。



「トラウマなんて言葉、よく知ってたね?」

「ごまかすな、バカ!」


 ごまかすつもりなんて、わたしにはなかったんだ。当然、茶化すつもりもなくて……。

 ただ、気を紛らわそうと思っただけのわたしの頭に、美亜みあちゃんの拳骨が降ってきた。

 美亜ちゃん、かわいい顔してるのに、意外と手が出るのが早い。

 おかげで、一発で、気が紛れたよ!


 美亜ちゃんに抗議の意味を込めて、頬を膨らませて見せる。今度は、わたしの膨らませた頬を摘んで、……ひっぱられた。むぎゅって聞こえたよ。


「なんで、そんなたいせつなこと言わなかったんだよ!」

「言えないでしょ! こんな、身内の恥。それに、今まで、言う必要もなかったし」

「そのへんのところ、詳しく聞こうか? うちで」

うちで?」


 学校が終わると同時に、美亜ちゃんに引きずられて、教室から連れだされた。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 次回も、中学過去編まえのおはなし。美亜ちゃんが初めてわたしの家に、お泊まりにきた時のお話。

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