10話.[いたいのだから]

「この前は問題ありませんでしたか?」

「ん、大丈夫」


 遥はどこかほっとしたような感じで「良かったです」と言った。

 ぼくはこの子が紫乃に興味を抱く理由が全く分からない。

 瑠奈が言っていたように彼女は間接的にではあっても奪ったようなものだから。

 もっとも、いまのあのふたりを見ていれば寧ろ振られて正解だったのだろうけど。


「紫乃はいま幸せそう、それは遥のおかげ」

「そ、そんなことはっ」

「高橋に振られていなかったら瑠奈が想いを伝えることもできなかった、それに紫乃曰く紫乃から手を繋いだことしかないって言ってたから」


 瑠奈はともかく紫乃は責めるつもりはなさそうだからこれだけでいい。

 紫乃は昔尊敬しているって言ってくれたけど、ぼくからすれば紫乃の方が尊敬できる存在で。

 だからこそ幸せそうにしてくれていたらこちらも嬉しくなるのだ、だから遥がいてくれて良かった、高橋といたら絶対にそうはなっていなかったことだろうということだけは分かるから。


「頑張って、応援してる」

「ありがとうございます」

「あ、高橋を悪く言うつもりじゃないから、紫乃だって納得して付き合っていたんだろうし」

「はい、それは分かりますよ、大丈夫です」

「それなら聞いてくれてありがと、もう帰るね」


 早くふたりがいるあの家に帰りたい。

 ぼくだってもっとあのふたりといたいのだから。

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20作品目 Rinora @rianora_

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