過ち

@hiroyadeee

一話完結

 過ち


ジョセフ・マーフィーは言った。「穏やかな心は、問題を解決します。怒りに震え、悲しみに打ちひしがれ、嫉妬に狂った心はますます問題を混乱させることになります。問題の解決は、穏やかな心になりなさい」


二〇二〇年 二月 五日 木曜日

「行ってきます」とエイダンが言った。

「待て、待て、今日何時に帰ってくるんだ?」と5つ上の兄が言った。

「今日は多分早い」

「え、何で。今日は何もしないのか」

「アレンが、今日は予定があるから、来れないみたいなんだよね」

「そうか、じゃあちょっと俺も今日は、助手と研究するから、多分遅い、だから適当に冷蔵庫の中からご飯済ましといて」、はーいという気が抜けたような返事をした。

「あ、あと部屋の道具やら資料やら、片付けておけよ。お前の研究は危ないんだからな。こっちが怖くなるんだよ。」

「兄貴はそんな考えだから、ダメなんだよ。化学には、時には犠牲が必要な時があるんだよ。」ノアはむすっとした顔で「お前は兄を犠牲にしろ、と言いたいのか」

「そこまでは言わないよ。でも俺みたいに大多数を救う研究をした方が効率がいいだろ。最近開発した、銃なんて、一度当たったら、必ず死ぬような、武器だ。兄貴の研究でも治せねぇよこの傷は。本当に俺、天才だは。掃除は多分やっておくは。」

「そんなもん絶対に使うなよ。後もし掃除しなかったら、全部燃やすからね。分かったか?」

「わかりました。お兄様」心の中で、ウザっと思った。お前は俺のお袋か。

本当に何様なんだよ、お前は。心の中で俺は暴言を吐いた。

「俺はお前の兄貴だ」

「うげっ、心の中を読むんじゃないよ、また変なのを開発したな」

「お前よりはマシだよ」と兄は笑った。

この兄貴、やっぱり変だな、と思いながら家を出た。


 やっと授業が終わった。疲れたな、と隣にいる親友のアレンに話しかけた。うん、とだけアレンは返した。

「そういえば、これから何があんの?」

「僕?」

「アレン、以外誰がいるんだよ」ちょっと強めに言った。

「今日? ちょっとね、用事があるんだ」何か隠しているみたいな言い方だったが、まぁ特に気にするようなことでもないと思い、うんとだけ返事した。


そこは暗い部屋だった。カーテンは閉め切っていて日の光が一切入ってこなかった。

「よく来たね、歓迎するよ。飲み物何にする?」と仮面の人が言った。

「紅茶がいいです」

「紅茶ね、分かった。美味しいのを作ってあげるよ」

「そんなことより、このメールに書いてあることって本当ですか?」

「本当だとも、まぁ、とりあえず座りな」はい、と返事をし、病室のベットのようなものに座った。

「友達にはここのことは言ってないよね。」

「はい、言ってないですし、言えないです」

「そうか。それでもここのことは言っちゃダメだからね。はい、紅茶」

「分かってます」と言いながら、紅茶を啜る。

「紅茶はそこの机に置いてね」と机を指さした。

あれ、何だか眠くなってきたな。バタン、アレンはなすがまま倒れ込んだ。最後に仮面の男が「おやすみ」と言った気がした。

「寝たか、まぁ起きていても辛いだけだしね。さぁ実験だ。」と言いながら仮面の男はアレンに注射をさした。


「キーン、コーン、カーン、コーン」授業の終わりを告げる鐘の音が学校中に響いた。

「よ、昨日どうだった」と肩を組みながら喋りかけた。

「うん」と元気のない声でアレンは返した。

「ん? 元気ないな。熱でもあるんじゃねぇのか」と言いながらおでこを触ると、信じられないほどの熱さだった。

「熱いぞ、これ熱あるよ」

ないよ、と言って彼の手を払おうとしたが、逆にエイダンに手を掴まれた。掴んだアレンの手の指は変色し、肌の至る所に蕁麻疹が出ていました。

「何だよ、これ」 まさか、昨日の用事でこうなったのか。

「昨日、何をしてたんだよ」 アレンは無言を続けながら帰ろうとする。

「待て、教えてくれ、昨日何があったのかを」とすかさずアレンを止めた。

アレンは、疲れ果てた表情で、ベンチに座り,話し始めた。

「昨日、用事が終わって家に帰ろうとしてたら電話がかかってきたんだ。その内容は指定された場所まで来てくれないかっていうものだったんだ。」

「まさか、行ったのか?」

「うん。怖くなったけど、行ってみたら、その暗い部屋には仮面の男がいて、気が付いたら家のベットに寝ていたんだ。」

 黙って聞いていたエイダンだったが、

 「つまり、その仮面野郎がお前にこんなことしたのか?」くそ、大事な大会前だっていうのに。彼らはサッカーの試合を一週間後に控えていたのである。

「分からない」

「そいつの特徴は?」と聞いてみるも、仮面以外の特徴はない、と言われた。

 「そうか、家に帰ってゆっくり休めよ」と言い、家に送った。アレンは絶対にその犯人を許さないと誓った。


「兄ちゃん」 家に帰ってきたエイダンは兄のノアに聞いた。この兄弟は互いに、科学者という、とても優れた兄弟なのであった。

「何だ?」

「兄ちゃんの知り合いにさ、仮面、被ってる変な科学者知らない?」

「仮面?何のことだ。ハロウィンならもうとっくに終わってるぞ」と笑いながら、返す兄に向かって、笑い事じゃねぇ、とエイダンは言った。

「何だよ、急に怖い声出して」

「ごめん、いや、俺の友達が、その仮面の科学者に、毒を盛られて、体を弄られたんだ」と悲しい声で、兄に訴える。

「それは、大変だな。その子は大丈夫なのか?」

「一応、大丈夫だ。それでその、兄貴の知り合いに、仮面の科学者っているか、聞いてみてくれない?」

「もちろんだ。エイダンの友達なら心配だからな。探しておくよ」

「ありがとう」


三日後

「ピーンポーン」と、アレンの家のベルを鳴らした。

「はーい」と言い、出て来たのは、アレンの母親だった。

「あ、エイダン君ね。どうしたの?」

「アレンのお見舞いに来ました。部屋にいますか?」

「あれ、学校にいなかった?」

「いや、見てないですけど」おかしいな、今日は見てないんだけどな。

「会ったら、早く帰って来いって言っておいてくれない」

「わかりました」とドアを閉める。アレンのやつ一体どこにいったんだよ。そういえば兄貴に仮面のやつのこと聞いてなかったな、と思い早歩きで家に向かった。


「兄貴、仮面の男について、何か分かった?」と扉をノックもせずに開けた。そこに広がっていた光景は、予想外だった。そこにいたのは仮面の男と、アレンだった。

「アレン、大丈夫か」

「何をしに来た」と仮面の男が言った。

「お前こそ、ここは、兄貴の部屋だ。それにアレンに何にしてんだ」そこには寝ているアレンの姿があった。仮面の男は、舌打ちをした。

「アレンから離れろ」

「まぁ、怒るな。俺は彼を治療しているだけなんだから」

「嘘つけ。いいから離れろ」

「はぁ、頭が堅いやつだな。これでもまだ、言えるか」といい、彼は銃らしきものを、アレンの頭に突きつけた。

「部屋から出ろ。これは命令だ」ちっ、このサイコ野郎が。どうしよう、強行するか。いやアレンの身が危ない。アレンをあんな目に合わせたやつだ。本当に殺しかねない。

「分かった。出るから、アレンには手を出さないでくれ」

「もちろんだ、元々、治療してるんだからな」

このやろうと思いながら、俺は部屋を出た。

程なくして、ドン、という音がして、慌てて部屋に入ると、もう二人の姿はなかった。

「くそ」と言いながら、壁を叩いた。



それにしても、あいつは誰なんだ。仮面の男は、何故、兄貴の部屋にいたんだろう。

まさか、俺の兄貴じゃないよな。そういうことを考えながら、いつものように研究をしていた。ちなみに彼の研究は、殺傷能力が高く、危険な物を作っている。彼は、兄とは対照的な研究を行っている。兄は人を治す研究をし、弟は人を傷つける研究をしている。

それにしても、兄貴は帰ってくるのが遅いな。いつもなら帰ってきてもいい時間なんだけど、やっぱり兄貴は。

「ただいま」と兄貴がノックをして入ってきた。

「おかえり。遅かったじゃん。何してたの?」エイダンは兄に探りを入れようと質問した。

「ん、あぁ、助手と研究してたら、長くなってな」

「そう」と小さく返事をした。

「じゃあ、俺、疲れてるから寝るは」

「おやすみ」と元気のない声でエイダンは言った。そして俺もベットに入って眠りについた。

次の日の朝、目が覚めると、変な手紙が俺の枕元に置いてあった。

「何だ、これ」そこに書いてあったのは「夜8時、指定された場所まで来い」だった。

俺は地図を持ち、行こうと決意した。

夜7時45分

「行くか」と言い、俺は、護身用の銃とレーザーの剣を隠し持ち、家を出た。


ここかと思い、俺はドアを開けるとそこには、疲れ果てベットに横になったアレンの姿と、白衣を着た、仮面の男がいた。

「やぁ、こんにちは」

「お前、アレンに何をした。手を出すなって言っただろ。早くアレンを返せ」

「嫌だ、と言ったらどうするの」

「力ずくで、取り返す」と言い、仮面の男に向かって、走り出した。エイダンは、持っていた、レーザーの剣で、攻撃をした。仮面の男も、負けずに同じような剣で返した。

「何で、アレンに人体実験なんてしたんだ。しかもこんな部屋に隔離までして」彼らは剣を交えながら喋ってた。

「僕は彼の為を思って、行動しているんだよ、本当に君は想像力が豊だねぇ」

「うるせぇ。お前がアレンをこんな目にあわせたんだ。絶対に許さないからな」だが、彼の剣技は、仮面の男には勝てるレベルではなく、負けるのは目に見えていた。

カキン、「君の負けだね」とエイダンは首に剣を突きつけられていた。仮面の男は後ろを向いて歩き出した。「彼は、」と喋り始めた瞬間、俺は銃型の武器を、仮面の男に向かって打った。「うっ」と言い仮面の男は血を流して倒れた。k

「油断をしたな」と言い、仮面の男の仮面を外した。

「やはり、兄さんだったか。兄さんも暴走するのか」 仮面を取ると、辛そうな顔をしている兄の姿があった。

彼は腹から血が流れていた。瀕死の状態であった。

「気づいていたのか」と苦しい表情で言った

「簡単なことだ。兄貴は何かを、はぐらかす時は、必ず下を向く。しかも兄貴はなぜか、自分の部屋があんなにも汚くなっていたのに、俺に何も聞かなかった。かなりの潔癖症なのに。これらが理由だ」

「は、それだけでか、すごいな」と言い兄は笑みを浮かべた。

「当たり前でしょ。俺天才だから。」と言いながらアレンについていた謎の点滴を、取った。

「違うよ、たったそれだけのことで、兄の僕に剣を突きつけ、瀕死の重症を追わせたこと、についてだよ」

「何、言ってるんだよ。俺は兄でも、友人を傷つけるやつを許さない。」

その時、「ゲホ、ゲホ」とアレンの容態が変わり始めた。「何?」と俺は焦りながらアレンに応急処置をしようとしましたが、何をしても容態は悪化していく一方なので、仕方なく、俺は兄貴に「アレンに何をしたんだよ。どうやったら戻るの」と聞きましたが、兄は「天才なんだからわかるんだろ」と言い相手にしてくれない。

「本当にどうすんだよ」

「点滴を戻せ」と、兄は、大きな声で言った

エイダンは焦りながら、点滴を戻したら、徐々に容態が戻った。

兄は立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。

「待て、兄貴これどういう事だよ、まさか本当に病気なのか」

「付いてこい」と枯れかけた声で、ノアは言った。兄がドアを開けて見せた。

「え、何これ」そこには、まるで病院の一室のような部屋があり、多くの人が寝ていた。

 「ゲホ、ゲホ、ここにいるのは、周りの目を機にする人が秘密裏に治療する場所だ。これが彼らの症状と治す方法の説明書だ。俺はもう無理だ。お前の武器はすごいな。これは俺でも治せない。彼らを責任持って直してくれ。頭がいいから大丈夫だろ」と言って兄は倒れた。

「兄貴、兄貴、ごめん、俺が間違えた、どうしよう、早く治さなきゃ」と焦りながら、言ったが、治すことは、できないのである。なぜなら彼が使った銃は自ら作った最新の銃であり、絶対に直すことができないと、自分でも言えるほどに殺傷能力が高かった。エイダンは泣きながら言った

「わかんないよ、治せない。俺は今まで何をしてきたんだ。何かないのか、助ける方法は?」彼は藁にもすがる思いで兄貴がくれた説明書をみた。

俺は説明書の一覧に書いてあったコールドスリープを使って、何とか兄の一命を取り戻すことができた。だが、これから兄は一生起きることがない眠りについた。


その後、容態が安定したアレンに、兄が重症をおったことを説明するとひどく非難された。

俺は研究内容を大きく変え、兄貴の用に人を助ける研究をしていた。

そんな今の目標は「兄貴を取り戻すこと」である。彼は今日も、患者に精一杯、尽くしている。兄がしてきた以上に。

兄から託された説明書には、兄の半生が書いてあった。そしてもう一つ、エイダンが9歳の頃の穏やかな家族写真が出てきた。


ジョセフ・マーフィーはこうも言った。

「失敗とは、周りの人々の有難さや感謝の念を知る時間である」


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