第4話
「大丈夫ですか?」
少女が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「急に倒れて、そのまま意識を失ってしまったみたいだったから、とても心配していたんですよ」
私の体はひどく汗ばんでいた。
「夢を見ていたんだ」私は小さく笑った。
「私はひどく平凡な男で、ごく普通の会社に勤めていて、胃を痛めながら、私を蔑む妻と娘のために日々働いている。怒りを溜め込みながら、それでもそんな家族のために日々働き続けるんだ。唯一の楽しみは、暖かい布団にくるまって眠ること、それだけだった。どんなに孤独で物悲しい生活でも、眠ることが出来れば幸せだった」
徐々に後悔の波が込み上げて、心を押しつぶす。
「……そうだ。私は眠ることに満足していれば、それでよかったんだ! 妻も、娘も、もう、二度と戻ってはこない! だって、私が、私が二人の命を奪ってしまった! そして、すべてから逃げたんだ! この国に来たのも、警察から逃げるためだ……」
両手をじっと見つめ、呆然と呟く。
「私は、私はなんということを……」
夢から醒めたくない。まだ日常のままの、あの頃のままの平穏な夢から。
夢から醒めたくない たけ @take-greentea
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます