第4話


「大丈夫ですか?」

 少女が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「急に倒れて、そのまま意識を失ってしまったみたいだったから、とても心配していたんですよ」

 私の体はひどく汗ばんでいた。

「夢を見ていたんだ」私は小さく笑った。

「私はひどく平凡な男で、ごく普通の会社に勤めていて、胃を痛めながら、私を蔑む妻と娘のために日々働いている。怒りを溜め込みながら、それでもそんな家族のために日々働き続けるんだ。唯一の楽しみは、暖かい布団にくるまって眠ること、それだけだった。どんなに孤独で物悲しい生活でも、眠ることが出来れば幸せだった」

 徐々に後悔の波が込み上げて、心を押しつぶす。

「……そうだ。私は眠ることに満足していれば、それでよかったんだ! 妻も、娘も、もう、二度と戻ってはこない! だって、私が、私が二人の命を奪ってしまった! そして、すべてから逃げたんだ! この国に来たのも、警察から逃げるためだ……」

 両手をじっと見つめ、呆然と呟く。

「私は、私はなんということを……」


 夢から醒めたくない。まだ日常のままの、あの頃のままの平穏な夢から。



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夢から醒めたくない たけ @take-greentea

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