無闇

 少女は少年を見た。街灯がじんわり照らす道の水溜り。彼はそこに立っていた。

 少女は無闇に走り出した。少年から逃げるように必死に足を回して走り去った。

 暗がりに消えていった少女を少年はじっと見送った。

 街灯がパチパチと街を弾く。

 だがそれもまた水溜りや少年のようになるだろう。今この瞬間、激しく身勝手に燃えているのだ。

 終電はここには来ない。

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六感 こあ @Giliew-Gnal

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