放課後は遊戯の時間

「水瀬水瀬!」


「どうした御本」


放課後になり、バックを持ち立ち上がった俺に御本が興奮気味に声を掛けてきた。


「これから暇か?暇ならば付き合って欲しいところがあるのだが」


「別に良いぞ」


頭の中で予定を探しても思い当たる物が無い。


「そうか!では早速行くぞ!」


もう待ちきれないと言わんばかりの勢いで俺の手首を掴み引きずる御本。

その勢いは欲しいものをねだる子供のようだ。


「着いた!」


何故か御本と手を繋いだままやって来たのは隣町のゲームセンター。

電車で一本。十分程の旅だった。


「てか離せよ」


「水瀬が逃げるかも知れないだろう!」


俺が住んでいる地域に比べ比較的都会に近い隣町は多くの人で賑わっており他校の学生やカップルが多く見受けられる。

そして、そんな人達の中に恋人繋ぎで立っている俺と御本。

自分本位な御本が周りの目を気にするとは思えない。

しかし、御本が気にせずとも俺が気にする。


こんな性格でも御本は美少女の部類に入る。残念美人と言う奴だ。


そんな見てくれ美少女とメガネを掛けていても目つきの悪さが浮き彫りになる俺が一緒に居て周りが見ない筈が無い。


付き合っている訳では無いのに恋人繋ぎをしている俺たちを訝しげな目で見てくる人のなんと多いことか、おい、「どうせ金」って言った奴だれだ。


「逃げねえから離せ」


「おっ!水瀬あれで勝負しよう!」


「人の話を聞け」


恥ずかしさを我慢している俺とは裏腹にずんずんと店内を進んでいく御本。

そうして連れてこられたのはバスケットボールをネットに入れるゲームの前、正式名称知らん。


「これで勝負しよう!負けたら明日の昼食奢りで!」


一プレイ数百円のゲームの代償が数十倍に膨れ上がる。


「良いぞ」


「決まりだ!先行は私が貰う!」


かくして俺と御本の勝負が始まった。


「どうだ!これが私の実力だ!」


ゲームを終え御本は得意げに鼻を鳴らす。


五分間投げ続け入った数×一ポイントのゲー厶だったのだが、御本の得点は五十三点。

このゲームの平均点が分からない俺はこれが凄いのか分からない。

まあ多分凄いのだろう。


「次は水瀬の番だな!」


「おう」


正直言って勝ち目なんて無い。いや、最初から負け戦だったのだ。

運動神経だけが取り柄の御本と運動神経を子宮に忘れた俺。

どちらが勝つかなんて火を見るよりも明らかである。

それでも、例え無様に負けるとしても、参加することに意味があるの精神でボールを投げる。


「私の勝ちだな!」


負けたよ。分かってたけどねぇ!


御本、五十三点


水瀬、二十一点


御本の半分も取れませんでした。


「明日の昼食は頼んだぞ!」


御本は大層な喜びを顔に作り笑う。


「負けは負けだからな。わかったよ」


「うむ!いい心掛けだ!次はあれで勝負しよう!」


御本が指さしたのは……だった。

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