休日

 休日朝八時。


『水瀬遊ぼう!』


 ぐっすりと寝ていた俺を容赦なく起こすスマホからの着信音に寝ボケ眼を擦り出ると電話の相手は一言そう言い残し電話を切った。

 俺はしばらく部屋のある一点を見つめ続けた後、スマホを枕元に放り投げ再び眠りに着いた。

 眠り前にちらりと時間を確認すると朝の八時を差していた。


「…ん?」


 二度寝を始めてから約一時間が経ち、俺は再びかかってきた電話の音で起きた。


「もしもし……」


 目を閉じたまま枕元辺りに置いたであろうスマホを手探りで探し、ゆっくりと耳元に持って行く。


『水瀬か?早く開けてくれ!』


「っ……」


 耳元に響く声に顔をしかめながら「待ってろ」と返し、電話を切る。


「ふあぁ~」


 あくびをしながらベットから這い出て玄関に向かう。


「おはよう水瀬!」


 扉を開けるとやけに大きなリュックを抱えた御本が立っていた。


「何の用だ……」


「遊びに来たぞ水瀬!」


「今何時だと思ってんだ……」


「今か?今は九時前だな!そんなことより邪魔するぞ!」


「……」


 俺の返答を待たずにずかずかと家に入っていく御本。


「水瀬~!飲み物くれ~!」


 リビングの床にリュックを置きソファーに横になる御本にため息をつきながら麦茶入りのグラスを渡す。


「で何しに来た」


 麦茶を一心不乱に飲んでいる御本にそんな質問をする。


「さっきも言っただろう遊びに来たのだ!……もしかして用事とかあったか?」


「別にないけどさ。来る時間を考えろよ。てかそのリュックなんだよ」


 御本の足元に置いてある視線が向く。


「やはり気になるか?」


「まあ」


「中には色んなゲームとお泊りセットが入っているぞ!」


「え、何お前泊まる気なの?」


「うむ!」


「ダメって言ったら?」


「水瀬がそんなこと言うわけない!」


 断定したよこいつ。


「なあに心配するな。泊まらせてもらう身としてご飯の準備くらいはするぞ!」


「いや何もするな」


「遠慮する事は無い!水瀬だけを働かせるのは私としても嫌だからな!」


 人の話聞こうか。


「ところで水瀬朝食はまだだな?私が作っておくから顔でも洗ってきていいぞ!」


 腕まくりをしてやる気満々の御本を止められない俺がいた。


「あ、ああ。任せた……」


「ああ!任せておけ!」


「胃薬あったかな」


 顔を洗うついでに胃薬を探した。


 △


「出来たぞ!」


 そう言って俺の前に出されたのは見かけは普通なオムライス。


「美味しいそうだな」


「そうだろう!卵があったから簡単なものを作ってみた!」


「早速食べていいか?」


「もちろんだ!」


「じゃ、いただきます」


 手を合わせスプーンを手にオムライスをすくう。匂いは悪くない。覚悟も決めた。


「……うまい……」


 若干の苦味とかはあるものの吐き出したり気を失うほどでもない。普通に食える。


「そ、そうか!うまいか!良かった……」


「本当にお前が作ったのか?冷凍とかじゃないよな?」


「正真正銘私が作ったものだ!」


「お前……やればできるんだな……」


 感動したよ。


「また水瀬を気絶させるわけにはいかないからな!ここ数週間香織さんに付きっきりで指導してもらっていたんだ!」


 ナイス香織さん!


「そうか。頑張ったんだな」


「うむ!」


 順調に食べ進め米粒一つ残さず綺麗に完食した。


「ごちそうさまでした」


「お粗末さまだ!食器は私が洗っておくから置いておいてくれ!」


「これくらい自分でやるよ。その間お前は準備でもしとけ遊びに来たんだろう?」


「そうか?なら任せるのだ!」


 キッチンがとんでもない位汚くなっていたが、オムライスに免じて見ないふりをしておこう。


「どうしたらこんなに汚くできるんだ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る