平和な朝

朝。


「ふあぁ〜」


俺は絶えず出てくる欠伸を噛み殺しながらいつもの分かれ道で御本を待っていた。


「水瀬ー!!!」


「やっと来たか……!!??」


御本の声が聞こえ首だけ声のする方に向けた。刹那、背中全体に広がる衝撃、遅れてやって来た痛みは俺の腰を破壊するには十分な威力だった


咄嗟のことで反応できなかった俺は威力そのままに石の塀に顔面からダイブした。


「おはよう水瀬!!!」


御本は元気に挨拶をする。が、水瀬に取ってそんな事今はどうだっていい。


「っ……!っ……!!」


ああ。やばい。


痛い。


痛すぎて声が出ない。


「っ……!」


「打ち上げられた魚の真似でもしているのか?」


人の気も知らず呑気にそんな事を聞いてくる御本。


反論したいけど声が出ない。


「あ……」


鼻血出てきた。


そこから数分間俺は惨めに痛みに悶えた。


「おまえ……」


「ん?お!起きたか水瀬!早く学校に行くぞ!遅刻してしまう!」


文句の一つでも言ってやろうと口を開いたが、声を出すよりも早く御本に引き摺られる。


「ちょ、ま……」




学校に近付くにつれ自ずと生徒の数は多くなる。

御本に引き摺られている俺は必然的に注目の的になるわけで、痛みと羞恥のサンドイッチ状態の出来上がりだ。


昇降口に着き上履きに履き替え、教室には向かわず保健室方面に足を向けた。


「?教室はそっちでは無いぞ?」


「保健室行くんだよ。先に教室に行っててくれ……」


俺は腰の曲がった老人のように腰に手を置き千鳥足で保健室に向かった。


「そうか?なら私も行くぞ!」


保健室の扉を開けると保険医の先生が温かく?迎えてくれた。


事情を説明し、湿布を貼ってもらう為に上半身裸になりベッドにうつ伏せになる。


保健室は暖房が効いているため寒いなんてことはなかった。


湿布を四等分に切りいざ貼ると言う時に御本が口を開いた。


「私が貼るぞ!」


正直任せたくは無い。しかし、少しでも痛みを和らげたかった俺は何も考えずに御本に一任した。


「では、行くぞ!」


思えばこの判断は間違いだったんだ。


俺はのちのち後悔することになる。


パァンッ!!


「!?!?!?!?!?」


およそ湿布を貼る時に出ないであろう音が保健室中に響く。

直後俺の腰には湿布の冷たい感触とそれを超える痛みが広がる。


御本は張り手の勢いで俺の腰に湿布を貼ったのだ。


「どうだ水瀬!気持ちいいだろう!」


にぱーと笑う御本に信じられないものを見るような顔をしている保険医の先生。


先生御本はこういう奴です。


素直に保険医の先生に任せればよかった。と後悔した。

朝の校舎に俺の叫び声が木霊した。

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